電子契約とは
電子契約とは、インターネットや専用回線などの通信回線を利用した電子文書で締結する契約のこと。
合意成立の証拠として電子署名やタイムスタンプなどが用いられることも特徴です。
電子契約は法律上有効と認められた契約である
紙に比べて電子文書は改ざんが容易なため、電子文書での契約では契約が有効であることを示す力が弱いとされてきました。
しかし、2000年に成立した電子署名法により、今では紙の契約書と同様に電子契約の法的効力が認められるようになっています。
例えば、契約上のトラブルなど民事訴訟時に証拠とするためには、電子署名法第3条の要件を満たしている必要があります。
この場合、電子証明書の付与された電子署名による電子契約であることが望ましいとされます。
また、確定申告や決算書類など、国税関係書類を紙で保存しないのであれば、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
この場合、締結した契約書が改ざんされていないことを証明する仕組みを作り、保存された電子契約が検索システムで直ちに提示できる状態にすることが必要。
このように、電子契約を導入する場合には、法的効力の強さはどの程度必要かを明らかにしておくことが大事です。
なお一般に、電子契約の仕組みによる法的効力の強さは、手続きの複雑さと料金に比例する傾向があります。
電子契約の3つの要素
電子契約には本人証明、非改ざん性の証明、存在証明の3要素があります。
- 誰が:送信者が契約者であること(契約の当事者が本人であること)の証明
- 何を:電子契約の内容が作成された後で改ざんされていないこと(非改ざん性)の証明
- いつ:電子契約が作成された日時の証明
電子署名と電子証明書を組み合わせることで、本人性と非改ざん性を証明することができます。
タイムスタンプは非改ざん性と存在証明が可能。
電子署名、電子証明書、タイムスタンプの3つがそろえば最も完全性の高い電子契約となります。
そこまでの厳密さが求められない契約であれば、公的な認証局による電子証明書の代わりに改ざん防止策を講じた仕組みによる電子契約や、タイムスタンプのない電子契約という選択肢もあります。
必要に応じてセキュリティ度を選びましょう。
電子契約の仕組みを提供するサービス導入のチェックポイント
ところで、電子契約の仕組みを導入せずに電子契約を行うことはできるのでしょうか?
文書作成ソフトを利用する
Microsoft Wordや、Adobe Acrobatを用いて電子契約を行うことは可能です。その場合、電子署名、電子証明書、タイムスタンプの付与や検索機能を自前で用意することになり、大変な労力がかかります。
電子契約の仕組みを提供するサービスを導入する
電子契約の仕組みを提供するサービスを使えば、システムにしたがって入力するだけで電子契約書の作成が可能になります。提供する会社によってサービスの法的効力は様々なため、自社のニーズに合わせて比較検討することが必要です。
電子契約の仕組みを提供するサービス比較の前に確認するべきチェックリスト
電子契約の仕組みを導入する目的としてよく挙げられるものは以下のとおりです。
- 業務効率化
- 経費削減
- 法対応目的:
- 法令への対応
- 自社コンプライアンスへの対応
その際に注意すべき点は以下のとおりです。
- 業務フローの変更にかかるコスト
- 電子化が認められていない契約など、紙の契約書が混在することによってかえって非効率とならないか
- 取引先の同意が得られるか(取引先の業務フローにも影響する可能性がある)
電子契約の仕組みを選ぶ際の比較ポイント
上記を踏まえ、次の4つの観点から自社の必要性に合ったサービスを選ぶことをお勧めします。
- 電子帳簿保存法への対応は必要か
- 電子署名法第3条への対応は必要か
- 取引先への導入支援をサポートする仕組みや、料金体系
- 書面契約と合わせた業務全体での効率化が図れる仕組みになっているか
電子契約の種類
法的効力の強さにより、電子契約には大きく分けて2種類あります。電子サインを用いた「立会人型」電子契約と、電子署名を用いた「当事者型(署名型)」電子契約です。
電子サインとは
電子サインとは、電子契約において電子文書が改ざんされていないことと、本人が確かに署名をしたこと、の2つを証明する本人確認方法の技術的な仕組み一般を指し、広い意味での電子サインには電子署名が含まれます。
狭い意味での電子サインの仕組みには、ID、パスワード、メールアドレスやSMSを用いた認証が用いられています。
(この記事では、ここより以降で電子サインという場合には狭い意味での電子サインを指すこととします。)従来のはんこに例えると認印に相当します。
電子サインの信頼性は、電子契約サービスを提供している企業の信用に依存します。
電子署名とは
電子署名とは電子サインの一種で、電子契約における現時点での最も厳正な本人確認方法です。
電子証明書と一体で機能します。電子署名の仕組みにはハッシュ関数と公開鍵暗号方式が用いられています。
従来のはんこに例えると電子署名は実印に、電子証明書は印鑑証明書に相当します。
電子署名の信頼性は、本人証明と非改ざん性いずれについても電子認証局発行の電子証明書に依存します。
電子認証局、電子証明書のいずれの信頼性も高度に担保されています。
電子サインは電子署名法第3条を満たしているか
法律上では、電子署名法第3条の要件を満たす方法について電子署名に限定していません。
提供されている仕組みで行う電子サインで本人証明や非改ざん性が検証できるのかどうかを個別に判断することになるでしょうが、現時点では判例などがまだなく、今後電子サインの法的効力が定義されていくものと思われます。
電子契約の種類
ここからは電子契約の2つの種類について見ていきます。
1.立会人型
立会人型の電子契約とは、電子サイン(+タイムスタンプ)を用いた電子契約。
契約サービスへの登録やメールアドレスを用いた仕組みで、低コストで始められます。
電子署名に比べて本人性や非改ざん性の証明が難しいため、民事訴訟などトラブル発生時に法的な有効性がどの程度保証されるかは、上述のとおり現時点では不確かな面があります。
ただし、近年のペーパーレス需要で日本国内での普及も進んでおり、一般的となりつつあるサービス形態です。
※立会人型の電子契約には、電子サインとタイムスタンプを組み合わせたサービスも、タイムスタンプのない電子サインだけのサービスもあります。タイムスタンプのないサービスでは、文書を印刷して保存しなければ電子帳簿保存法違反となる可能性があります。
2.当事者(署名)型
当事者型(署名型)の電子契約とは、電子署名、電子証明書、タイムスタンプを用いた電子契約。
電子署名には本人性を担保する電子証明書が付与されており、タイムスタンプと合わせることで、電子契約に必要な3つの要素を全て厳格に満たす仕組みとなっており、高い法的効力を持ちます。
電子認証料がコストに上乗せされているため、電子サインと比較すると価格が高い傾向にあります。
また、署名の際に二段階認証を要したり、専用のアプリやインターネットブラウザの起動が必要となります。
電子証明書とは
電子証明書は、データの作成者が間違いなく本人であることを担保する技術的な仕組みを言います。従来の制度に例えると印鑑証明書に相当します。
電子認証局とは
電子認証局とは、電子証明書を発行する第三者機関。
従来の制度との違いで例えると、運転免許や印鑑証明などは公的機関でしか発行できませんが、電子証明書は民間企業でも発行できます。
電子認証局の信頼性について
電子認証局は公に認められた機関であり、認証業務運用規程やセキュリティーポリシーは公開されています。
さらに、第三者による監査を受けてその適合性を公開しています。
中でも国際的な電子認証局の監査規格である WebTrust for CA に合格している認証局から発行されている電子証明書は非常に高いレベルで信頼できるとされています。
また、アドビシステムズ社のAATL(Adobe Approved Trust List)に登録された電子認証局が発行する電子署名PDFは、Adobe AcrobatあるいはAdobe Reader上で電子証明書の信頼性を確かめることができます。
タイムスタンプとは
タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術的な仕組みを言います。
なぜ電子契約にはタイムスタンプが必要なのか
電子署名と電子証明書によって「誰が」「何を」契約したかを証明することができますが、「いつ」契約したかについては技術的に証明できません。
「いつ」を証明する仕組みがタイムスタンプです。タイムスタンプは、公的な機関がもつ正確な時刻を用いて、「いつ」「何を」を証明します。
長期間の電子契約への対応
電子署名は長くても3年まで、タイムスタンプは10年が有効期限ですが、組み合わせることで電子契約としての有効期限が10年になります。
期限を設けているのは、技術の進歩によって暗号が解読されるリスクを避けるためです。
10年以上の契約を電子契約で結ぶための解決策として、長期署名があります。新しい暗号化技術を備えたタイムスタンプを10年ごとに更新することで有効性を延長するというものです。
電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法でスキャナ保存が認められている国税関係の書類を電子化するには、タイムスタンプの付与が必要です。
まとめ
- 電子契約は紙の契約書と同等の法的効力が認められている
- 電子契約には本人証明、非改ざん性、存在証明の3つの要素がある
- 電子契約には、電子サインを用いる立会人型と、電子署名を用いる当事者型の2つの仕組みがある
- 電子証明書とタイムスタンプをもちいた当事者型の電子契約は、より法的効力と安全性が高い
- 用途に応じて選ぶべき電子契約の仕組みは異なる