新型コロナウイルス感染防止のため、西村経済再生相は『在宅勤務を7割に』という目標を改めて経済界に要請しました。
それに伴い各企業で急がれているのが電子印鑑の導入です。
今回このページでは、電子印鑑とはどのようなシステムなのかを分かりやすく解説。
IT担当者がおらずどのように対応するべきか困っている場合や、まずは社内文書だけでも電子化したいとお考えの場合はぜひご覧ください。
印鑑の基礎知識
『ただハンコを押すためだけに出社しなくてはいけない』
テレワーク・リモートワーク化を進める中で、契約書への印鑑の捺印業務は大きな障害となっています。
そこで内閣府、法務省、経済産業省は令和2年6月19日『押印についてのQ&A』というpdfファイルを公開しました。
この文書では書面の作成及び押印の有無による契約効力などについて触れられています。
『ハンコは要らない』と受け取れるこの文書により、ハンコ制度の継続について多くの議論が交わされています。
印鑑の種類と用途とは
個人や法人に関係なくさまざまな場面で使用される印鑑。そもそも印鑑を押すことはどのような意味があるのでしょうか。
まずは印鑑の種類と用途を見ていきましょう。
実印とは
実印とは印鑑登録済みの印鑑のことです。最も法的効力のある印鑑とされ、重要な契約を取り交わすときや、遺産相続時、会社設立時などに使用されます。
法人においては、会社の本店所在地にて届出をした印鑑が会社実印となります。会社実印は登記印・代表者印とも呼ばれます。
銀行印とは
銀行印とは金融機関に印影の届出をした印鑑のことです。預金口座からお金を引き出す人の本人確認も兼ねて使用されています。
認印とは
認印とは個人が日常生活上使用する印鑑登録していない印鑑のことです。法人では角印や役職名のみ入った印鑑などが認印として使用されています。
シャチハタとは
シャチハタとは朱肉を必要としないスタンプ印の総称として使用されています。そもそもシャチハタとは印章類を製造する会社の社名です。※正式にはシヤチハタ株式会社。
印鑑の捺印・押印の意味、法的効力とは
捺印も押印もどちらもハンコを押す行為ですが、署名・記名と組み合わさることに法的効力に違いが生まれます。
署名捺印とは
手書きで氏名を記載し印鑑を押すこと。
記名押印とは
氏名(手書き・代筆・スタンプ・印刷問わない)を記載し印鑑を押すこと。
法的効力
- 署名捺印
- 署名のみ
- 記名押印
- 記名のみ
法的な証拠能力としては上記の順に強い効力を持ちますが、日常生活においては捺印と押印とはあまり意味合いに差はありません。
日本社会の『脱ハンコ』は進むのか?
見出し冒頭でも触れたように政府は民間企業に対し、不要な捺印・押印を廃止し電子署名に切り替えを進めることを宣言しています。
とはいうものの根深く残る日本のハンコ文化。
ハンコを押す煩わしさから解消されたいとは思っても、実際にハンコが廃止されることにさまざまな不安を感じることがあるのではないでしょうか。
そこで、今大変大きな注目を集めているのが電子印鑑です。
次の見出しからはいよいよ電子印鑑とはどのようなシステムなのか解説します。
電子印鑑とは
電子印鑑とはパソコンやスマートフォン・タブレット端末などを使い、文書を紙に印刷しなくても、いろいろな種類のハンコが押せる仕組みのことを言います。
電子印鑑の導入で感じられるメリットとは?さっそく見ていきましょう。
電子印鑑のメリットとは
すでに電子印鑑を導入することで感じられるメリットとは下記のような点が挙げられます。
- 印鑑の紛失・破損リスク軽減
- 業務効率大幅アップとECO化
- テレワークの最適化
印鑑の紛失・破損リスク軽減
(例)A社では以前、社内の印鑑を管理している担当者が不在の際、社員が『急いでいるからと』持ち出した角印を紛失してしまいました。
代表者が使用する実印のみを厳重に管理している中小企業はとても多く、使用頻度の高い角印(社判)やスタンプ・ゴム印などは比較的管理が疎かになっていることがあります。
しかし、A社は角印紛失の件を期に使用頻度の高い印鑑こそ紛失・破損のリスクを最小限に抑えるべきだと判断しました。
角印そのものに法的効力はなくても、紛失したとなると信用問題に関わります。
電子印鑑を導入すると社印の使用日・使用時間・使用者などの情報がすべて履歴に残ります。
また管理担当者が不在であっても事前承認を得た使用者ならば、必要なタイミングですぐにハンコが押せるようになります。
もちろん持ち出しによる印鑑の紛失や破損などもありません。
業務効率大幅アップとECO化
社内文書を回覧する際に認印を押印していたところに電子印鑑を導入すると、送付された文書の確認と押印をパソコンだけで済ませることができるようになります。
このほか出張などで役職者が不在の際にも、ノートpcやスマホ・タブレットなどを使用すれば、いつでもどこからでも捺印が可能です。
電子印鑑の導入後はこれまで『○○さんのハンコ待ち』で滞っていた業務がスムーズに進むようになり、社内全体の業務効率が大幅にアップします。
また社内文書を電子化したことによりペーパーレスを実現することもできます。それにより大幅なコスト削減を実現することもできます。
テレワークの最適化
コロナ禍における電子印鑑の最大のメリットとは、やはりテレワーク・リモートワークの最適化でしょう。
すでに電子印鑑を導入していた会社では、緊急事態宣言発令時スムーズに在宅勤務へとシフトすることができました。
役職者を含む全社員がただハンコを押すためだけに出社する必要がなく、電子印鑑によりスムーズなワークフローを確立できています。
また社内文書だけでなく社外文書にも電子印鑑の使用を承認すれば、コロナ禍において契約締結が中断してしまうケースが減少します。
もちろんすべての取引先が電子印鑑を導入しているわけではないため、完全に電子化とはいかないものの、今この状況においてとても大きなメリットを感じられるはずです。
電子印鑑のデメリット、懸念される点とは
電子印鑑の懸念材料とは下記のような点が挙げられます。
- セキュリティ
- 導入コスト
- 取引先の対応状況
特に電子印鑑のセキュリティは最も不安に感じる部分ではないでしょうか。
『無断で電子印鑑が作成されてしまったら?』
『電子印鑑がいつ誰に使用されたか把握できるのか?』
じつはこのような電子印鑑のセキュリティに対する不安要素は、普通の印鑑を使用しても全く同じことが言えます。
紙に押されたハンコや印鑑そのものが悪用されないとは言い切れないのではないでしょうか。
ここからは勘違いしている人も多い電子印鑑の印影について解説していきます。
印影のデジタル化と電子印鑑の違いとは
少し前まではスキャンした印影を画像データとしてパソコンに取り込むことで、ワードやエクセル、pdfなどに貼り付けて使用することを印鑑の電子化として認識されていました。
印影画像の作り方はとても簡単でフリーの画像編集ソフトや、体験版・無料版アプリなどを使えばだれでも作成することができます。
またインターネットでは任意の文字・書体・サイズなどを指定して印影画像を作成できるフリーサービスなどもあります。
印影画像の背景を透過して作成したものがパソコン上にあれば、Excelの電子印鑑機能を使って印鑑を捺印したかのように見せることができます。
実際にフリーソフトを使い無料で作成された印影の画像ファイルを、電子印鑑としてWord文書に使用するケースはたくさん見かけます。
このようなデジタル化された印影画像は、一度印影の透過画像を作成しておけば簡単に複製できますし、いろいろな種類の印影画像を作成することで、幅広い文書に対応できるようになりとても便利です。
電子印鑑のセキュリティが懸念される理由とは
印影を画像としてデジタル化することは、電子印鑑導入の第一歩になります。印影の画像化はフリーのWEBサービスなどを利用すれば、コストもかかりませんしイメージしているよりもうんと簡単です。
しかしいろいろな種類の印影画像が簡単に作成できること、そしてWordやExcel、pdf文書に貼り付けるだけで押印したと見なされることが、電子印鑑はセキュリティが不安だと言われる要因でしょう。
しかし『電子印鑑=”印影画像を貼り付けるだけ』という認識は大きな間違いです。
今、大企業などで導入されている電子印鑑とは、ただ印影を画像ファイルとしてデジタル化したものではありません。
効力のある電子印鑑とは
本来の印鑑としての効力を持ち合わせた電子印鑑とは、誰がいつ捺印したのか証明されなくてはいけません。
またすでに触れたように、下記についても明確になっていることが必要です。
- どのように電子化された印影なのか
- どのように印影が管理されているのか
これらを満たす電子印鑑システムならば、これまで懸念されていたセキュリティの弱さが解消されるのではないでしょうか。
電子印鑑の導入コストとは
wordやexcelで作成した文書に印鑑を捺印する際、単純に画像化した印影を貼り付けるのと、セキュリティ対策がされた電子印鑑を使用するのでは効力に違いがあります。
電子印鑑としての効力を持たせるには、やはり有料のサービスを利用することが必要です。
取引先の対応状況とは
電子印鑑を導入しても取引先が対応していなければ、意味がないのではと懸念されている方もいらっしゃるはずです。
想像してみてください。県境を越えた移動について自粛要請が出される中、契約書に印鑑を貰うためだけに取引先に出向くというのは、お互いにリスクを生じるものです。
実際に『今は来ないでくれ』と言われてしまう営業担当者は後を絶ちません。
電子印鑑を導入すれば、これまでのワークフローとは別に新たな選択肢をひとつ増やせるようになります。このことは今の時代にとって大きなメリットではないでしょうか。
今後、印鑑の電子化はどんどん進んでいくでしょう。
おすすめサービス『DocuSign(ドキュサイン)』とは
ドキュサインとはカスタム可能なクラウド型の電子署名サービス。地方自治体や政府組織、金融機関などを含む世界中で66万社以上の企業が導入しています。
国内大手の印章会社シヤチハタと提携するなど、適法性と信頼性が高く評価されているサービスになっていることが大きな特徴です。
ドキュサインが日本向けに提供しているeハンコとは、登録済みのシャチハタ印をワードやエクセルに簡単に取り込みできる機能。
ドキュサインで作成した書類には電子署名が付くため、より契約書としての効力を強く持たせることが可能となります。
紙ベースで契約書をやり取りするよりも、スピーディーに契約締結を可能とし、さらにデジタルデータに対し『いつ・誰が・どこで・何をしたか』を可視化することで、セキュリティも強化されます。
電子印鑑導入の際は、ぜひこのようなサービスを利用することも検討してみてください。
まとめ
電子印鑑とは?をテーマに解説させていただきましたがいかがでしたでしょうか。
今回このページではドキュサインを紹介しました。しかしながらこのようなクラウド型サービスは多岐に渡るため、各サービスの違いなどを把握するのが難しいです。
コロナ禍におけるテレワーク・リモートワーク化については、トータルに相談できるコンサルタント会社を利用する方法もあります。
ドキュサインについてはNECネッツエスアイ株式会社が、国内代理店として導入についての問い合わせに対応しています。
さまざまな分野で電子化が進む中、やはり日本社会にとって切っても切れないハンコ文化。
電子印鑑は日本独自のハンコ文化を残しながらも、今の時代に合ったワークスタイルを可能とします。ぜひご検討ください。