自治体DXは、デジタル技術を活用して行政サービスそのものや組織の体制を改革することです。単なるデジタル化のことではありません。
自治体DXの必要性が認識されるようになりましたが、取り組み状況は自治体によって差があります。
この記事では、どのようにすれば成功するのか、取り組み事例と推進事例から紹介します。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
自治体DXとはデジタル技術利用による行政改革
デジタル・トランスフォーメーション(DX)は経済産業省によると「企業がデータとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するとともに、競争上の優位性を確保すること」と定義され、自治体DXにおいては、内部の変革だけでなく、住民中心の視点が必要不可欠になります。
自治体DXでは横断的にデータを活用できるようにするため、全体的に最適化された情報システムを構築することが重要です。
最近では、新型コロナウイルスの対応において、データが十分活用・連携されていない等の問題が明らかになりました。
こうしたデジタル化の遅れに対して、業務の改善とともに制度や組織の在り方等を変革し、自治体DXへの迅速な取り組みが求められています。
情報システムの標準化・共通化をともなう取り組み
2020年12月25日に閣議決定した「デジタルガバメント実行計画」「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」において自治体のIT推進に関する取り決めがされました。
国は、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境(「(仮称)Gov-Cloud」)を整備・運用することを示しており、自治体の情報システムについても「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討を進めることとされています。
自治体は、目標時期を2025年度とし、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討を踏まえ、基幹系17業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへの移行に対応するための準備を始める必要があります。
このため「早期から全庁的・ 横断的な推進体制を整え、現行の情報システムの調査や、スケジュール策定をはじめとして計画的な導入に向けた検討」が必要とされています。
また自治体DXの推進意義について、以下について提示されています。
- 自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる
- デジタル技術やAI 等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
自治体DX推進計画における取り組み事項は以下の通りです。
- 自治体の情報システム標準化・共通化
- マイナンバーカードの普及促進
- 自治体の行政手続きのオンライン化
- 自治体のAI・RPAの利用推進
- テレワークの推進
- セキュリティ対策の徹底
並行すべき取り組み事項
- 地域社会のデジタル化
- デジタルデバイド対策
その他取り組み必要事項
- オープンデータの推進・官民データ活用推進計画策定の推進
- BPRの取り組みの徹底(書面・押印・対面の見直し)
※BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは、現在の業務内容やフロー、組織の構造などをプロセスそのものを根本的に見直し、再設計すること。
組織のスリム化、サービスの向上、コスト削減などのメリットがあります。
自治体DXの促進課題と取り組みのポイント
自治体の課題や自治体DXを阻害する要因、自治体DX取り組みで改善するためのポイントを紹介します。
横断的な体制の構築および関連部署連携の必要
自治体DXは担当部署だけでなく、全庁的に取り組みを行うことが自治体DX実現のポイントです。
更に、社会全体としてデジタルによる変革が求められているため、国と県・市町村及び民間が連携してDXを実現する必要があります。
行政サービスがうまく機能しない、連携がうまくいかないなどの非効率な体制を変革することにより、業務の生産性向上が期待されています。
BPR取り組みとAI・RPAの導入
自治体DXが必要な理由の一つとして、地方公共団体で務めている職員の人手不足があげられます。
介護問題や地域公共交通の維持問題等への対応など、職員の業務負荷が大きくなり、また過疎問題や労働人口減で税収入が減少することで、自治体サービスの質の低下が予測されます。
このため限られた人員で行政サービスを提供するためには、BPRに取り組み、業務効率を上げることが必要となります。
利便性や生産性を向上させる取り組みとして、例えば問合せ業務などへのAI(人工知能)・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入があげられます。
AIやRPAの基盤を全国で共同利用することで、データ蓄積の加速・コスト削減などのメリットも創出できるのです。
オンライン手続きシステム導入
押印・書面・対面での手続き業務では、生産性や住民のサービス向上にはつながらないでしょう。
大量の書類処理業務が発生し、住民の手続きにも手間がかかっているからです。
現状は行政手続きのオンライン化が整っておらず、対面による手続きしかできないという自治体が多くあります。
すでにBPRの取り組みとあわせてオンライン化に取り組み、成功している事例がありますので紹介します。
デジタル人材の確保と自治体DXに対する理解
自治体DX にはITやデジタルに精通したデジタル人材が必要です。現在、行政はもちろん、民間企業でもデジタル人材が不足しています。
つまり自治体DXを成功させるためには、職員の教育が必要不可欠なのです。そのうえで推進できる計画策定をする部署を設置することも重要です。
また情報システムの構築にあたっては、ベンダーだけでなく、自治体の主導でシステムについて理解しなければなりません。
自治体DXの目的である「更なるサービスの向上や新たな価値の創出」には、既存のシステムにとらわれないアイデアが必要です。
迅速かつ全庁的な取り組みには、職員全体でDXに対する理解や関心が必要です。
自治体DXの情報共有と財政事情
自治体DX実現のために、デジタル技術を導入するには資金が必要ですが、厳しい財政状況におかれている自治体は、なかなかDXに取り組めません。
まずトップがDXの必要性やその可能性について理解し、情報を広く提供し、住民や議会・財政担当部署などの理解を得ることが必要です。
長期的な計画と取り組みの必要性
自治体DXの実現には、有益性の理解と長期的な視点が必要になります。
DX推進の取り組みにより多大な労力がかかり、かつ自治体DXの効果が判明するまでに、多くの時間がかかります。サービスの質や利便性の向上の効果が現れるには数年かかります。
自治体DX全体手順書・推進手順書参考事例集【1.0】の成功事例
「自治体 DX 全体手順書」は、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の取り組みの標準的な手順書として公表されました。
4ステップで取り組み方が示されており、参考として先進事例の紹介もしています。
- トップ自らDXを宣言し、デジタルガバメント戦略の策定を行い、変革していく方針を示した
- 「地域情報化アドバイザー派遣制度」を使って人材の育成を推進 等
成功事例から自治体DXの有益性を認めてもらえば、取り組みやすくなるでしょう。
自治体DXの取り組みの実情に応じて、全体手順書を確認し、取り組みを進めている場合でも、改めて一連の手順に沿って取り組みを再構築することも効果的です。
- ステップ0:自治体DXの認識共有・機運の醸成
- ステップ1:自治体DX推進全体方針決定
- ステップ2:自治体DXの推進体制
- ステップ3:自治体DX取り組みの実行
引用元:自治体 DX 全体手順書
まとめ
DXを成功させるには、DXの必要性を自治体の中で共有していく必要があります。
組織の改革が必要なので、リーダーの覚悟も求められます。ITに精通した人材が不足している自治体も多く、これからの人材育成や教育が必要です。
総務省のサイトから取り組み事例の資料がご覧になれますので参考にされるとよいでしょう。セミナーなどイベントに参加するのも効果的です。地域に合った体制を整える参考事例としてご活用ください。