2020年12月、自治体におけるDXの方針を示した「自治体DX推進計画」が総務省によって策定されました。
この記事では、総務省が発表した自治体DX推進計画の概要と、同じく総務省から公開されている「自治体DX推進手順書」の内容を解説します。
自治体DXとはどういったものなのか、どのように進めれば良いのかといった点でお悩みの自治体関係者様はぜひ参考にしてみてください。
総務省による「自治体DX推進計画」とは?目的・要綱を確認
まずは、総務省が発表した「自治体DX推進計画」の概要と、自治体DX推進計画内でまとめられている6の重点取組事項について詳しく見ていきましょう。
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画概要
「自治体DX推進計画」は、デジタル社会の実現に向けて策定された「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日閣議決定)に基づく自治体向けの参考資料として総務省から発表されました。(2020年12月公開/2022年9月改訂)
主に自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体的にまとめたもので、自治体DXの概要や意義について以下のように定義されています。
政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。
このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要である。自治体においては、まずは、
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、
・デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
ことが求められる。
つまり、国が掲げる“デジタル社会の実現”を果たすには、地域住民と密接な関わりを持つ自治体のDX推進が不可欠であるということです。
6つの重要取組事項
総務省による「自治体DX推進計画」では、自治体が重点的に取り組むべき事項として以下の6つを挙げています。
取組事項 | 総務省の方針・概要 |
---|---|
①自治体情報システムの 標準化・共通化 | 目標時期を2025年度として、ガバメントクラウドの活用に向けた検討を踏まえ、基幹系20業務システムを国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行 |
②マイナンバーカードの普及促進 | 2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づいた申請促進と交付体制の充実を図る |
③自治体の行政手続の オンライン化 | 主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続(31手続)について、マイナポータルからのマイナンバーカードによるオンライン手続を可能とする |
④自治体のAI・RPAの利用推進 | ①・③による業務見直し等を契機として、AI・RPA導入ガイドブックを参考に、AIやRPAの導入・活用を推進 |
⑤テレワークの推進 | 「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」や「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガ イドライン」等を参考に、テレワークの導入・活用を推進/①、③による業務見直し等に合わせ、対象業務を拡大 |
⑥セキュリティ対策の徹底 | 改定セキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底 |
DXと合わせて地方自治体が取り組むべき項目
また総務省では、自治体DX推進と同時に以下の点についても取り組みが必要だとしています。
デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取組の推進・地域社会のデジタル化 | 光ファイバーの全国展開や5Gサービスの開始、ローカル5Gの導入といった情報通信基盤を有効活用し、全ての地域がデジタル化によるメリットを享受できるよう集中的に取り組みを推進/地域の創意工夫を活かした各自治体の自主的・主体的なデジタル実装の取組を促進するため、幅広い分野の事業に係る事例集を作成し各団体に周知 |
---|---|
デジタルデバイド対策 | オンラインによる行政手続き等の利用方法を学習できる「デジタル活用支援」事業の周知・促進/NPOや地域おこし協力隊等の関係者との連携による講座の開催や相談対応等の実施 |
デジタル原則に基づく条例等の規制の点検・見直し | 目視規制、定期検査・点検規制、実地監査規制、常駐・専任規制、書面掲示規制、対面講習規制、往訪閲覧・縦覧規制等のアナログ規制が存在する条例・規則等の点検と見直しの実施 |
引用元:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画
「自治体DX全体手順書」に基づくDXの基本的な進め方について
総務省では、自治体DX推進計画に基づくDXの取り組み方法をとりまとめた「自治体DX推進手順書」を作成・公開しています。(2021年7月公開/2022年9月改訂)
続いて、自治体DX推進手順書に記載されているDXの基本的な進め方について詳しく見ていきましょう。
ステップ0.DXの認識共有・機運醸成
総務省は、自治体DX推進計画において「利用者中心の行政サービスを実現する上で、デジタル化は目的ではなく、あくまでも手段と認識することが重要」としています。
つまり、単に新たな技術を導入するのではなく、デジタル技術やデータ活用による利用者目線での業務効率化・改善等を行うとともに、行政サービスに係る住民の利便性の向上につなげていく必要があるということです。
そのためには、首長や幹部職員から一般職員までが「自治体DXとはどういうものか」「なぜ自治体DXが必要なのか」等の基本的な共通理解の形成が欠かせません。
ステップ1.全体方針の決定
はじめに、自治体のデジタル化の進捗状況に基づいたDXの取り組み内容および工程表の作成を行います。
取り組みの順序を決定する際は、自治体DX推進計画において設定されている取組方針や目標時期等を踏まえて検討することが大切です。
デジタル化の進捗状況を確認する際の視点として、以下のようなポイントが挙げられます。
組織体制、人材育成の状況 | 既存の情報政策に係る方針等の有無・その内容/情報政策担当部門の体制・業務/情報政策に係る人材の育成 |
---|---|
業務プロセスのデジタル化の状況 | ペーパーレス化/電子決裁システム/書面・押印・対面の見直し/行政手続のオンライン化 等 |
業務環境のオンライン化の状況 | 個人用のパソコン端末の配備状況/コミュニケーションツール(メール、チャット、WEB会議等)の導入・利用状況/セキュリティ対策の状況 等 |
ステップ2.推進体制の整備
全体方針を踏まえたDXの推進体制を整備するにあたっては、組織・人材の両面からの検討が必要です。
組織については全庁的・横断的な推進体制の構築、また人材についてはデジタル人材の確保・育成が求められるでしょう。
なおデジタル人材に関して、十分なスキル・能力を持つ職員が不足している場合は、必要に応じて外部人材の活用や民間企業への業務委託等も検討することが求められます。
ステップ3.DXの取り組みの実行
推進体制が整った後、総務省が公開している自治体DXの関連ガイドライン等を踏まえて、計画的に取り組みを実行していきます。
個別の取り組みに関しては、自治体内でPDCAサイクルによる進捗管理を行うことが望ましいでしょう。
引用元:自治体 DX 全体手順書
まとめ
総務省は自治体DXに関する資料を複数公開しており、すでに取り組みを行っている自治体の事例等も確認することが可能です。
自治体DXの取り組み内容や順序等で迷った場合には、総務省が提供するこれらの事例をチェックしてみるのも良いでしょう。
またNECネッツエスアイでは、自治体DXを支援する様々なソリューション・サービスをしているので、総合的なサポートを希望される場合はぜひ一度ご相談ください。
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