地方自治法の一部が改正され、自治体でも「事業者(立会人)署名型」の電子契約サービスを導入することが可能となりました。
しかし、「電子契約のメリットが分からない」「電子化に伴う業務フローの変更が負担……」など、あまり電子化に積極的でない自治体も少なくありません。
そこでこの記事では、自治体における電子契約の導入メリットと、電子契約を含む自治体DXの必要性について解説していきます。
法改正で自治体への電子契約導入が加速!
まずは、自治体への電子契約の導入が加速する契機となった“地方自治法の改正”についてチェックしておきましょう。
また自治体が電子契約を活用することのメリットも解説していきます。
法改正の背景
自治体と民間企業が電子契約を結ぶ際、これまでの地方自治法では以下の2点が要件として定められていました。
- 改ざん検知機能・なりすまし防止機能が備わっている電子契約サービスを利用すること
- 総務省令で定める電子証明書を取得すること
この条件は自治体だけでなく取引先の民家企業にも適用されるため、電子証明書の発行にかかる手間やコストなどの理由から、自治体への導入は思うように進みませんでした。
そこで、一部の自治体から「同等の法的効力が認められているクラウド型署名(電子証明書を必要としない署名方式)の電子契約サービスを自治体でも利用できるようにしてほしい」「民間で普及してきている『事業者署名型(電子証明書を必要としない署名方式)』電子契約サービスを地方自治体で利用できるようにしてほしい」という要望が提出されたのです。
これを受け、総務省は地方自治法の改正に乗り出し、最終的には施行規則の一部を削除する形でクラウド型署名の電子証明書を必要としない電子契約サービス利用を認めることとしたのです。
今後は電子署名法第2条1項で定められている以下の2つの要件を満たすものであれば、自治体でもクラウド型の事業者署名型電子契約サービスを利用することが可能となります。
- 電子署名が本人によって作成されたことを証明するもの(本人性)
- 電子署名が改ざんされていないことを証明するもの(非改ざん性)
自治体における電子契約導入のメリット
電子契約を導入することで期待できる自治体の主なメリットは以下の通りです。
書類管理の効率化・検索性の向上
自治体の業務や行政手続きの大半はいまだ紙ベースで行われており、膨大な契約書を保管するために多くのスペースが使われています。
電子契約を導入すれば、こうした物理的な保管スペースが不要となる他、検索機能によって必要な契約書を簡単に探し出せるようになります。
承認プロセスの効率化
自治体業務の中でも特に複雑で時間のかかるプロセスが契約書の承認に伴うフローです。
紙ベースの契約書の場合、書類を回覧して承認を得る必要があるため、全員の承認が確認できるまでに1週間以上かかるケースも珍しくありません。
電子契約を導入した場合、オンライン上で承認を行うことができるため、最短数分程度でプロセスを完了できます。
自治体DXはなぜ必要?現状の課題と取り組み
電子契約の導入に限らず、自治体においてはDXの推進が急務とされています。
ここからは、政府が提言する自治体DXの概要と、DX実現のためのポイントについて詳しく見ていきましょう。
自治体DXの概要
政府が発表した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」の内容を受け、総務省では「自治体DX推進計画」の策定が行われました。
自治体DX推進計画には、自治体におけるDXの必要性や重点取組事項に関する内容が示されている他、自治体DXの意義について以下のように明記されています。
政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。
このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要である。自治体においては、まずは、
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、
・デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
ことが求められる。引用元:自治体DX推進計画概要
つまり、国が掲げる“デジタル社会の実現”を果たすには、地域住民と密接な関係にある自治体のDXが不可欠であるということです。
現在の自治体が抱える課題とは
自治体DXを進めるにあたって大きな障壁となっているのが、根強く残るアナログ文化とデジタル人材の不足です。
2022年6月に総務省が公表した「自治体におけるAI・RPA活用促進」という資料では、現状の導入率として以下の値が示されました。
都道府県 | 指定都市 | その他市区町村 | |
---|---|---|---|
AI導入率 | 100% | 100% | 35% |
RPA導入率 | 91% | 95% | 29% |
このデータから、都道府県や指定都市ではDXが進んでいるものの、その他の市区町村では大幅に導入が遅れていることが分かります。
特に小規模な自治体においては、スマートフォンを利用した手続きへの対応等も進んでおらず、いまだ役所・役場に足を運んで紙ベースの手続きを行うケースがほとんどです。
またAIエンジニアやDXプランナーといった、特定分野のスペシャリストと呼べる人材の不足も課題の1つです。
現在の自治体では、技術職の人数が事務職と比較して圧倒的に少ないため、雇用面についても構造から見直していく必要があると言えるでしょう。
業務の電子化が自治体DX実現のポイント
これらの課題を解決して自治体のDXを実現するには、各自治体が自主性を持って電子化・デジタル化を進めていくことが重要です。
また電子化を進める際は、職員の方が受け入れやすいよう、スモールスタートで少しずつ範囲を広げていく方法がおすすめです。
一部の契約書を電子契約に移行する、一部の職員からテレワークを導入するというように、部分的なDXとフィードバックを繰り返しながら最適な形を見つけていくようにしましょう。
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