本記事は一般的な取組みについて記載したもので、NECネッツエスアイでの取組みを紹介したものではありません。予めご了承ください。
近年、より効率的な政策立案・実行に向けた抜本的な見直しが政府や自治体で行われており、その中で注目を集めているのが「EBPM(Evidence Based Policy Making)」という考え方です。
この記事では、EBPMの概要と効果的な進め方、また実際の取組み事例等を紹介します。
EBPMは自治体DXを推進するうえでも重要な考え方となるので、自治体DXのやり方や手順でお悩みの自治体関係者様はぜひ参考にしてみてください。
自治体DXの推進にも重要となる“EBPM”とは
まずは、自治体DXの推進でも求められる「EBPM」という考え方について、その概要や手順を詳しく見ていきましょう。
ICTの発展で注目が集まるEBPMの考え方
EBPM(Evidence Based Policy Making)とは、“証拠に基づく政策立案”を意味する言葉で、政府による「EBPM課題検討ワーキンググループ」の取りまとめにおいては以下のように表現されています。
①政策目的を明確化させ、
②その目的達成のため本当に効果が上がる政策手段は何かなど、政策手段と目的の論理的なつながりを明確にし、
③このつながりの裏付けとなるようなデータ等のエビデンス(根拠)を可能な限り求め、「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組
つまり、従来の経験や勘に頼った政策立案ではなく、客観的なデータを用いた政策立案を行うことにより、限られた資源の有効活用や国民に信頼される行政の展開を目指そうという考え方がEBPMだと言えます。
これまでもデータ活用が行われなかったわけではありませんが、予算や人材等の面でどうしても限界があり、正確な情報・データを入手することが困難な状況でした。
しかし近年、急速なICTの発展によってビッグデータの整理や分析が容易となり、膨大なデータから必要なデータを抽出することも可能となったことで、改めてEBPMに注目が集まっているのです。
効果的なEBPM実践のための手順
EBPMを効果的に実践するためには「ロジックモデル」と呼ばれる“政策と効果の結び付け”が必要です。
ロジックモデルとは、事業や組織が最終的に目指す姿の実現に向けた筋道を図式化したもので、政策立案においては以下のようなロジックモデルを活用します。
①投入 | 予算や人員等の行政活動を実施するために投入する資源 |
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②活動 | 投入資源を用いて行われる行政活動 |
③産出 | 行政活動の結果、産み出されたモノ(財)やサービス |
④直接成果 | 産出がもたらす直接的な成果 |
⑤中間成果 | 直接成果がもたらす次なる成果 |
⑥最終結果 | 政策(施策や事業)が目指す最終成果 |
参考:EBPM(Evidence-based policy making) 証拠に基づく政策立案, ロジック・モデルの作成 ー政策評価、EBPMの基本として
ロジックモデルは政策形成・ブラッシュアップや対外的なコミュニケーションツールとしても活用できるため、自治体DXに伴う新規事業・実証事業等で効果的な仕組みと言えます。
EBPM実践による自治体DXの取組み事例
続いて、EBPMの考え方に基づいて自治体DXの推進を行っている事例をいくつか見ていきましょう。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
自治体DX事例①住民協働によるモニタリングの実施でごみの不法投棄問題を軽減
ごみの不法投棄対策として、住民協働による定量的なモニタリングを実施した自治体DXの事例です。
有効と思われる対策を一部の資源ステーションで実施し、対策を実施していない資源ステーションとの比較実験を行うという方法で効果を検証しました。
結果、チラシのポスティングおよび収集終了の看板設置という2つの対策で不法投棄削減の効果が確認されたため、これらの対策を本格的に予算化して政策に反映させることで、効果的な政策立案に繋げました。
自治体DX事例②市の予算書をデジタル化・一般公開することで住民の信頼を獲得
インターネット上に「デジタル予算書」を公開し、業務の大幅な効率化を実現した自治体DXの事例です。
従来は厚さ3cmにもなる紙の予算書を用いての業務が行われていましたが、見づらい・分かりづらいといった声が大きかったことから予算書の電子化を実施しました。
市の予算に基づく決算や事業の進行・評価・報告までを体系的に結び付けた他、市民との情報共有が容易となったことで、市民と行政間のコミュニケーションの活性化にも効果が期待されています。
自治体DX事例③診療データの活用で大幅な医療費削減に成功
ある自治体では、診療報酬明細や健康診断のデータを活用した医療費削減の取組みが実施されています。
これらのデータから症状が進行している人の早期発見・個別指導・受診の推奨やジェネリック医薬品との差額通知等を行うことで効果を検証しました。
結果、医療費の適正化と被保険者の健康度向上を実現したため、今後はこのケースをモデルとして全国の自治体へ横展開していくことが期待されています。
まとめ
今後、ICTが更なる発展を遂げることで、より効果的・効率的なEBPMの手法が確立していくと予想されます。
EBPMは自治体DXやスマートシティに向けた取組みにも活用できる考え方ですので、自治体DXのやり方・手順を検討する際にぜひ取入れてみてください。