自治体DXが必要となったのは、少子高齢化に伴う労働人口の減少が最大の要因と認識されています。
労働人口の減少に対応するデジタル化を進めるためには、アナログ業務の変革や、IT人材の登用を積極的に行うなど、より抜本的な対策の推進が必要です。
この記事では、行政サービスが抱える課題やそれに対する具体策を中心に、自治体DXの必要性について説明していきます。
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
自治体DXとは、「自治体・住民等が、デジタル技術も活用して、住民本位の行政・地域・社会等を再デザインするプロセス」と定義されることがあります。
デジタル技術「も」とされるように、非デジタルの業務改善も含めた今後の少子高齢化社会のさらなる進行に備えた業務改善の取り組みです。
自治体DXは総務省がリードして進められています。
今まで総務省がどのように自治体DXに取り組んできたか、今まで総務省が公表してきた文書の一覧で全体像を見てみましょう。
- 2017年 自治体戦略2040構想研究会開始、人口動態から見た行政サービスの危機を分析、デジタル活用を行うスマート自治体の提唱等報告書を継続的に公表
- 2019年 行政改革の一環として、スマート自治体の取り組み着手
- 2020年 「自治体DX推進計画」公表
- 2021年 自治体DX推進手順書公表
「自治体DX推進計画」の必要性
2020年12月25日に発表された「自治体DX推進計画」では、自治体DXの目標は次の通りとされています。
- 自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる
- デジタル技術や AI 等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
行政サービスは紙の手続きが多いため、自治体職員が窓口に出向く必要がある業務が多く現存しています。
これらをデジタル化することで、業務効率化の実現や住民の利便性向上が期待できます。
一方で2040年頃には、団塊ジュニア1人を、半分ほどの出生数の労働人口が支える社会となります。公務員の数も半分になり、倍の高齢者を支える行政サービスを提供することになるかもしれません。 危機的状況を認識しつつ、自治体DX推進計画では「人にやさしいDX」を目指すとされています。 高齢者が増えることから、高齢者向けにもわかりやすいインターフェイスとし、利便性の高いものとすることも求められます。 行政サービスにはRPAや、AIなどを用いた自動化による効率化・データの活用などの効率化・業務改善を早急に進めなければ、近い将来の高齢者増・労働力の減少に備えられないこととなります。 少子高齢化問題は、自治体DXの必要性を高めている大きな理由のひとつです。 それと同時に、不足した人手を補えるだけの技術を活用できるかが課題となります。 IT人材が確保できなければ、自治体DXを進めることはできません。民間企業ほど、地方自治体にはIT人材がいないことが知られています。 日本全体でIT人材を育成しなければならないことは明確であり、総務省による自治体DX手順書でも、人材確保・人材育成の必要性が謳われています。 IT人材の確保の取り組みにおいて、人材育成は長期的な取り組みです。 また外部からの人材の登用については、人材の採用の仕組みの改革なども必要となります。 そして業務のデジタル化は、長年紙に頼ってアナログの業務を進めてきた自治体サービスにおいて、すぐに定着するものではありません。 紙をデータ化し、データを効率的に活用することが必要であると同時に、紙に頼る考え方自体を変革する必要があるでしょう。 自治体DXはこれらの課題に向き合い、具体的にどのように推進するかが問題になりますが、対策は総務省による自治体DX手順書にまとめられています。 これまで紹介してきたように、自治体DXを推進し、業務をRPAやAIで自動化するなどの業務改善を進めるためには「労働人口の減少に対応する技術の導入」「アナログ文化の変革」「IT人材の登用」と3つの課題があります。 これらの課題には、具体的にはどのように対処するか、自治体DX推進手順書の内容からまとめると以下の通りです。 労働人口の減少を補う自治体DXの打ち手としては、今までもRPAの導入や、AIの導入が行われてきました。 RPAやAIは業務を自動化し、直接人手を補うための技術ですが、さらに効果的とするためには自治体間で共通化できるデータを活用をすることが必要です。 そこで、自治体DX手順書でも、すでに政府主導で進められているデジタルガバメントを中心としたシステム整備を進める必要性があるとしています。 システムの標準化・クラウド基盤の共通化とこれらを通じたデータ活用が対策として挙げられています。 またマイナンバーについては、より活用を進めることにより自治体で連携して使えるデータを増やすことができます。 政府で共通するクラウド基盤をつくり、その上に共通の仕様のシステムを構築すると、より効率的に早く課題を克服することができます。 実際に、内閣府の主導でガバメントクラウド(Gov-Cloud)の構築は予算化、実施されているところです。 自治体DX手順書でも共通システムの仕様・データの活用の方法などが提示されており、各自治体で今後7年間でこれらを実施することとされています。 自治体の業務は、それまで長年大量の紙によって行われ、また窓口業務も多いことからアナログ文化を変えることは困難と考えられていました。 住基ネットの定着が今一つであったことなども、アナログ文化を変えられなかったことが原因の一つであるように考えます。 アナログ文化の象徴の1つが、テレワークの未対応です。 2020年10月の総務省の調査では、都道府県と政令指定都市の95.5%が導入済みであるのに対して市区町村では80%が未導入でした。 テレワークは、業務に使う文書・データがデジタル化されていることが実行の前提となり、アナログ文化の象徴とはいえ「行政サービスの最前線ではアナログがまだ主流」と言わざるを得ないでしょう。 自治体の業務は窓口業務等、テレワークになじまない業務が多いのは事実ですが「スマホで金融機関なども簡単に手続きができるサービスが多い時代に行政サービスだけが取り残されている」という感は否めません。 自治体DX推進計画では、着手する必要性の高い取り組み(重点取組事項)の一つとして「テレワークの推進」が挙げられています。 テレワークを推進することは、文書のデジタル化・データの活用を推し進める契機になると同時に職員の業務負担も軽減でき、自治体職員の働き方改革につながります。 人手不足をテレワークにより緩和できることにもつながり、将来の人材の確保・育成にもプラスになります。 行政サービスの最前線である市区町村レベルでは、IT人材も不足しています。 主体的な取り組みをしてきた都道府県レベルでも、ITシステムの導入は専門家であるベンダーに大きく依存し、自治体のIT専門家を採用・育成することが不足していたことが問題点として挙げられます。 データ活用が増えれば、今までより一層セキュリティへの取り組みも高度なものにする必要がありますが、セキュリティ体制も人材に大きく関わってきます。 こうした課題認識のもと、外部からの人材登用やIT人材を民間レベルと同等処遇の設定・CIOなどの権限の設定などが自治体DX推進計画の中で定められています。 計画に従い予算や助言などの国・都道府県の支援を受け、市区町村レベルでもIT人材を採用し活躍してもらうための組織での整備を行うこととなります。 自治体DXはどんな課題を克服するために推進されているのか、総務省の文書・課題に対する具体策を中心に、自治体DXの必要性について説明しました。 自治体DXを進めるためにはアナログ業務に対する意識の変革や、IT人材の育成・登用を積極的に行うなどより抜本的な対策の推進が必要です。 この記事を監修しているNECネッツエスアイでは、庁外端末から庁内端末への安全なアクセスを可能にするリモートアクセスサービス「NECネッツエスアイ リモートデスクトップ for LGWAN」を提供しています。 自治体DX推進のため、まずは重点取組項目(5)テレワークの推進から始めてみてはいかがでしょうか。早急に2040年問題に対応するための自治体DX推進計画
DX推進の必要性、知っておくべき3つの課題と解決策
課題① 労働人口の減少に対応する技術の導入
自治体間連携ためのシステム標準化・ガバメントクラウド
課題② アナログ文化の変革
自治体DX推進のポイントは「テレワーク」
課題③ IT人材の登用
自治体DX推進計画でも必要性の高さが謳われているIT人材の育成・登用
記事まとめ