2025年末の完全移行を目標に、全国約1,700の自治体の情報システム標準化に向けた動きが本格化しています。
この記事では、情報システム標準化・共通化の概要と、統一の必要性について解説。
システム標準化の対象となる業務一覧や、移行スケジュールに対する課題などもまとめているので、合わせて参考にしてみてください。
地方自治体のシステム統一・標準化の概要
自治体における業務システムの統一・標準化は、総務省・デジタル庁などが中心となって進めている政策「デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及」に含まれる取り組みの1つです。
まずは、業務システムの統一・標準化の概要と、なぜ自治体のシステム標準化が必要とされるのか、その背景について詳しく見ていきましょう。
ガバメントクラウドの活用
政府は、“ガバメントクラウド(Gov-Cloud)”と呼ばれる政府共通の情報システム基盤・機能を提供するクラウドサービス(IaaS・PaaS・SaaS)の利用環境の整備を進めています。
ガバメントクラウド上には標準化の要件を満たしたアプリケーション・サービスのみが構築され、その中から自治体ごとに必要なものを選択するという使い方がなされる予定です。
ガバメントクラウドを活用することで、システム利用におけるコスト削減やサービス切り替えの効率化、自治体間のセキュリティ水準の統一といったメリットが見込まれます。
標準化の要件・法律の整備
ガバメントクラウドの環境整備を進めるにあたって必要となるのが、業務システムの統一・標準化に対するデータ要件・連携要件・非機能要件などの取りまとめです。
すでに総務省からシステム要件の記載された仕様書の公表が行われており、現在はベンダー企業が標準準拠システムの開発を進めている段階にきています。
自治体システムの標準化はなぜ必要?
これまで全国の自治体では、業務システムを個別にベンダー企業へ発注し、自治体ごとに独自の運用を行うという方法が用いられてきました。
業務システムの仕様は大半が法令で定められているものの、利便性向上の観点から個別のカスタマイズが認められていたため、結果として自治体ごとにバラバラのシステムを運用する状況になっていったのです。
各自治体で快適にシステム運用がなされているのであれば問題ないようにも思えますが、実際は全国でシステムが標準化されていないことにより、以下のような課題が生じています。
- 維持管理や制度改正時の改修において、地方公共団体は個別対応を余儀なくされ、負担が大きくなっている
- システム間の差異調整が負担となり、クラウド導入による共同化が円滑に進んでいない
- 住民サービスを向上させるための取り組みを、迅速に全国へ普及させることが難しい など
また昨今のコロナ禍では、感染対策や窓口対応などの面で自治体間の格差が浮き彫りに。
政府と自治体との間でシステム連携がうまくいかず、特別定額給付金のオンライン申請を中止して郵送受け付けのみに切り替えたり、申請内容を目視で確認したりといった自治体も少なくありませんでした。
こうした問題を解消するために、自治体の業務システムを全国で統一・標準化し、足並みのそろった行政サービスの提供を実現しようという動きが加速しているのです。
システム標準化の対象となる自治体業務
続いて、システム統一・標準化の対象となる自治体業務と、ガバメントクラウドへの移行に伴う課題について解説していきます。
基幹システムの17業務が対象
今回の業務システム統一・標準化では、自治体の基幹システムにあたる17業務が対象に含まれています。
政府が公表する「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】」の中で挙げられている17業務は以下の通りです。
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 児童手当
- 生活保護
- 健康管理
- 就学
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
今後は17業務に関する標準準拠システムがガバメントクラウド上に構築されていき、各自治体はガバメントクラウド内のシステムに利用を切り替えていくという流れが予定されています。
2025年末の移行実現に向けた課題
自治体の業務システム統一・標準化を進めるうえで、各自治体は以下のような点に注意が必要となります。
- 自治体DX推進計画の目標時期(2025年度末)に合わせたシステム移行
- 仕様書に基づいた全庁的な業務改革(BPR)への取組
政府は業務システム統一・標準化の完全移行の目安として2025年度末を設定していますが、全国約1,700の地方自治体が足並みを揃えてシステム移行を進めるにあたっては課題も山積みです。
まず、現在の標準仕様書は一律の内容であるため、自治体の規模や特徴に合わせた調整が必要だという声が挙がっています。
また大規模自治体ではカスタマイズの利用も多いため、単なるシステム移行だけでなく、業務フローの変更や業務改革(BPR)の実施なども必要になるでしょう。
こうした事情から2025年度末までのシステム移行は困難だという意見も少なくなく、今後政府がどのように対応していくのかが注目されるところです。
まとめ
システム移行の期間などは今後変更が行われる可能性もありますが、いずれにしても最終的にはガバメントクラウド上のシステム利用へと切り替えていくことが求められます。
2025年度末が近づいてから慌てて準備をはじめるのではなく、早い段階からシステム移行に向けた計画の策定や業務改革への取り組みなどを実施していくことが大切となってくるでしょう。
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