2020年12月25日、総務省により「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が策定され、2021年9月1日には国全体のデジタル化を推進する役割を持つ政府機関「デジタル庁」が創設されました。
これにより、今後、自治体DXが加速していくと予想されますがそこにはどのような目的があるのでしょうか?また自治体DXを進めていく上でどのような課題があるのでしょうか?
ここでは自治体DXにフォーカスし、その概要・目的・課題を解説します。また、イメージが湧くよう成功事例を紹介します。(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXとは、「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略称で、自治体DXとは、デジタル技術によって自治体業務の仕組みを改革する取り組みのことをいいます。
2020年12月25日、総務省により「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(以下、「自治体DX推進計画」とします)が策定されました。
自治体DX推進計画とは、DXを推進するうえで、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめた計画のことで、次の6点を重点取組事項として挙げています。
① 情報システムの標準化・共通化
② マイナンバーカードの普及促進
③ 行政手続オンライン化
④ AI・RPAの利用促進
⑤ テレワークの推進
⑥ セキュリティ対策の徹底
引用元:自治体DX推進計画概要
自治体DX推進計画の対象期間は、2021年1月から2026年3月までで、適宜計画の見直しを行いながら、デジタル社会の構築に向けた取組みを着実に進めていくこととなっています。
地方自治体には「紙媒体で情報共有を行っている」「単純作業を人手で行っている」など、アナログ文化が根強く残っており、そのため「自治体は民間企業と比べてDXが遅れている」などといった指摘がされていましたが、今後は、自治体においてもDXが急加速していくと予想されています。
自治体DXの目的とは
自治体DXの目的は、デジタル技術の活用により、行政サービスにおける業務効率化と住民の利便性向上を目指すことです。
目的1:業務効率化
少子高齢化により生産年齢人口の減少が進む今、多くの自治体が職員数の減少に頭を悩ませています。
その一方で、介護問題、空き家対策、インフラ老朽化、感染症対策など、自治体の業務は増加していく一方です。
そうした状況の中で、業務を適切に回していくためには業務の効率化が欠かせず、そこでデジタル技術の持つ力が注目されています。
目的2:住民の利便性向上
これまで、行政サービスは、住民各々のニーズに関わらず、画一的に提供されることが多くありました。
しかし、人々のライフスタイルが変化する現代においては、住民ニーズも多様化してきています。
そうした状況の中で求められているのは、住民一人ひとりのニーズに応じたきめ細かい対応や支援、いわゆるパーソナライズされたサービスであり、この実現のためにも、デジタル技術の持つ力が期待されています。
「行政サービスにおける業務効率化と住民の利便性向上を目指す」ということを目的とする自治体DXですが、当然、それぞれの自治体ごとで状況や物事の優先順位は異なります。
真の目的は、それぞれ各自治体が抱えている問題を解決することにあり、それは例えば介護サービスの充実・人員コストの削減・システムUIの最適化などなど、自治体によって様々です。
自治体DXの課題とは
ここまで、自治体DXの目的についてみてきました。
では、そこにはどのような課題があるのでしょうか?主に次の3つが挙げられます。
課題1:デジタル人材の不足
DXを推進していくためには、デジタル人材(AIやIoT、RPA、データベース、プログラミングといったデジタル技術の知識・スキルを持つ人材)が必要となります。
しかし、アナログ文化が根強く残る自治体ではデジタル人材が不足している現実があり、そのため、「戦略を策定できる人材がいない」「アイデアが湧いてこない」「業務プロセスの変更に際して現場職員の理解を得るのが難しい」といったことが往々にしてあります。
DXを推進していくためには、デジタル人材の採用や教育への投資が必要となるでしょう。
課題2:レガシーシステムの固定化
アナログ文化が根強く残る自治体では、レガシーシステム(過去の技術や仕組みで構築されているシステム)が使われているケースが少なくありません。
レガシーシステムを使い続けると、他システムとデータ連携ができない、最新テクノロジーを導入できない、などといった問題が生じます。
DXを推進していくためには、レガシーシステムからの脱却が必要となるでしょう。
課題3:財政難
近年、主に生産年齢人口の減少や経済活動の停滞などを起因とした税収不足に頭を悩ませている自治体が数多くあります。
また、ここ数年では、新型コロナウイルスの感染症対策も必要となり、仕切りの設置、アルコール消毒、ワクチン接種、給付金対応などなど、新しく行う業務が増加しています。
このような背景から、自治体DXに対する投資を見送るケースも少なくありません。
しかし、自治体DXにはコスト削減の効果も見込むことができます。費用対効果やリスクなどを考慮しながら、導入の検討を進めていきましょう。
成功事例~デジタル化で行政はどう変わるか~
ここで、自治体DXの成功事例を2つ紹介します。
成功事例1:地域商品券運営業務
ある自治体では、地域商品券の運営業務における課題をDXで解決しました。
同自治体では、地域経済の活性化を目的として、地域商品券の発行を行っています。しかし、従来から、印刷、郵送、集計などの業務に手間がかかりすぎている、といった課題がありました。
そこで行ったのが、地域商品券のデジタル化です。地域商品券を、スマートフォンなどのデジタル機器で扱えるようにしました。
その結果、印刷と郵送が不要となり、データ集計も自動で行えるように。利用者にとっても、「紛失がなくなった」「管理がしやすくなった」など、利便性が向上したとのことです。
成功事例2:滞納整理業務
ある自治体は、滞納整理業務における課題をDXで解決しました。
同自治体では、実施する税金や国民健康保険料の滞納整理業務において、職員数が不足していて徴収が計画通りに進まない、といった課題がありました。
そこで、次のような機能を持つシステムを導入。
- 催告をしなければならない対象者を自動で抽出する機能
- 過去の通話データから、つながりやすい時間帯などを予測する機能
- 一定回数電話に応答しなかった人に対してSMS(ショートメッセージサービス)を送信する機能
- 訪問先までの最適なルートを自動生成する機能
その結果、担当職員の作業時間や精神的ストレスが軽減し、かつ収納率が大幅に向上したとのことです。
テレワーク導入により行政のデジタル化を促進
ここまで自治体DXの目的や課題などを解説してきました。
この自治体DX、個々の自治体レベルで比較的取り組みやすいのが「テレワーク」です。
テレワークには、感染症予防・ワークライフバランス向上・非常時の行政機能維持などといった様々なメリットがあります。
また通勤時間を削減できたり、時間や場所に縛られずに働くことができたりするため生産性が向上しやすく、結果として自治体DXの促進にもつながるでしょう。
このテレワークを実現するツールとして、『リモートデスクトップ for LGWAN』をおすすめします。
『リモートデスクトップ for LGWAN』とは、庁外端末から庁内端末へ安全にアクセスできるリモートアクセスサービスです。
テレワークを導入する際、何よりも課題となりやすいのは、セキュリティ面ですが、『リモートデスクトップ for LGWAN』には、次のような特徴があり、セキュリティ面は万全です。
- LGWAN(高度なセキュリティ対策を施して構築された行政専用のクローズドネットワーク)を介して庁内ネットワークへのアクセスを実現し、普段と同じ業務が可能
- ID&パスワードによるログイン+ワンタイムパスワードの二要素認証で、なりすましや不正アクセスのリスクを低減
- デバイスの固有IDや証明書による利用端末の制限も可能
- ローカルにデータを転送できない仕様により、印刷やデータ抜き取りによる情報漏洩を防止
この『リモートデスクトップ for LGWAN』、自治体DXを推し進める起爆剤として、検討されてみてはいかがでしょうか。
記事まとめ
2020年12月25日に「自治体DX推進計画」が策定され、2021年9月1日に「デジタル庁」の創設されました。今後、全国レベルで自治体DXが加速していくでしょう。
人手不足の中で増え続ける業務を効率的に行っていくためにも、多様化する住民ニーズに応えていくためにも、自治体DXの推進は必要不可欠です。
自治体DXの具体的な内容や進め方に関しては、「自治体DX推進計画」「自治体DX推進手順書」など、政府発表資料にまとめられています。必要に応じて活用していきましょう。