オンライン営業、名刺の電子管理、定型業務の自動化、AIによる売上予測、リモートワークなどなど、近年、多くの民間企業でDX化が急速に進んでいます。
一方で、自治体はどうでしょうか?
自治体においてもDX化は進んでいますが、自治体には自治体特有の課題があり、民間企業ほど進んでいない自治体もあります。
ここでは、自治体DXにフォーカスし、その概要や課題、推進ポイントなどを紹介します。
DX化が思うように進まず悩んでいる自治体関係者の方、ぜひ参考にしてみてください。
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
まずDXについておさえておきましょう。
DXとは、「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略称で、デジタル技術を積極的に取り入れながら、様々な問題解決や新たな価値創造を目指す取り組みのことを言います。
2018年頃から政府が使い出すようになり、現在はビジネス用語として定着しつつあります。
では、自治体DXとは何でしょうか。自治体DXとは、DXの自治体版で、デジタル技術を積極的に取り入れながら、行政サービスの利便性向上や業務最適化を目指す取り組みのことを言います。
自治体DXは、例えば、窓口業務のオンライン化、AIによる問合せ対応の自動化、SNS等を利用した行政サービス情報の配信、情報セキュリティの強化等が挙げられます。
現在、多くの自治体が、生産年齢人口の減少による自治体職員の減少、および税収入の減少に悩んでいます。
限られたリソースの中で業務を回していくためには、業務の効率化・自動化が欠かせません。この問題の対応策としても、自治体DXは有効だと考えられています。
また、政府としても、自治体DXには力を入れ始めています。
政府は、自治体DXを加速させるべく、2021年度に38億8,000万円の予算を計上しました。これは、2020年度の予算の約5倍にも相当します。
また、2021年1月から2026年3月までの期間を「自治体DX推進計画」の対象期間とし、自治体DXに重点的に取り組んでいくとしています。
DXが遅れている?! 行政が抱える課題
以前から自治体DXの必要性が叫ばれているものの、民間企業と比べて大きな遅れが出ています。そこにはどのような課題があるのでしょうか。
ここでは次の3つを紹介します。
- 課題1:アナログ文化
- 課題2:DXに対する理解不足
- 課題3:厳しい財政状況
以下、それぞれを詳しくみていきましょう。
自治体DXの課題1:アナログ文化
まず挙げられる課題が、「アナログ文化」です。
民間企業でデータ化・ペーパーレス化が進む中、自治体では依然として紙を主軸とした業務を行っているところが少なくありません。
例えば、住民が記入した帳票類(申請書・届け出など)を職員が手作業でシステムに転記する、といったケースが数多く散見されます。
また、FAXによる事務連絡、印鑑による承認作業なども当たり前のように行われています。
このように紙を主軸とした業務を行っていれば、やはりデジタル的な改革は進みにくいでしょう。
自治体DXの課題2:DXに対する理解不足
次にあげられる課題が、「DXに対する理解の薄さ」です。
民間企業では、ライバル企業との競争があるため、新しい技術をどんどん取り入れていく傾向がありますが、一方で自治体は、特に新しい技術を取り込まなくても、大きな問題が起こることがありません。
そのため、自治体には、「そもそもDXがどういうものなのか分からない」「自分の業務とDXの関連性がいまいち掴めない」などといった声が少なくありません。
DXに対する理解が薄ければ、具体的なアイデアが出てこないですし、モチベーションも湧いてこないでしょう。
自治体DXの課題3:厳しい財政状況
最後にあげられる課題が、「厳しい財政状況」です。
現在、多くの自治体が財政難で頭を抱えています。財政破綻してしまう自治体も今は珍しくありません。
財政状況が厳しい自治体では、DXに十分な予算を割り当てられない、といったことが往々にしてあります。
課題解決のための自治体DX推進のポイント
前セクションにて、自治体DXを推進する上で「アナログ文化」「DXに対する理解不足」「厳しい財政状況」の課題を紹介しました。
では、これら課題を乗り越えていくためには、どのようなところがポイントとなるのでしょうか。主に次の3つが挙げられます。
- ポイント1:現場の意識醸成
- ポイント2:先行事例の調査
- ポイント3:レガシーシステムからの脱却
以下、それぞれを詳しくみていきましょう。
自治体DXの推進ポイント1:現場の意識醸成
まずは、現場の意識を醸成することが大切です。
どんなに改革に迫られていても、どんなにリソースがあったとしても、そもそも現場に意識がなければ大きな変化は期待できません。
意識を醸成するためには、「DX化を進めると仕事がしやすくなる」「DX化を進めるとコストが抑えられ何らかの形で還元される」など、各現場職員が自分事化できるようなメッセージを発信することです。
自分にもメリットがあると分かれば、いずれ現場職員側から主体的に行動するようになるでしょう。
自治体DXの推進ポイント2:先行事例の調査
次に、自治体DXの先行事例を知ると、イメージが膨らみやすくなります。
どのような問題を抱えていたのか、どのような技術・手法でアプローチしたのか、どのような効果を得られたのか等がポイントです。
イメージが膨らめば、自分の業務に置き換えて考えられるようになったり、アイデアが湧いてきたりするようにもなるでしょう。
自治体DXの推進ポイント3:レガシーシステムからの脱却
レガシーシステム(過去の技術や仕組みで構築されているシステムのこと)にとらわれていると、根本的な改革が行えません。
長期間同じシステムで運用していると、どうしても「慣れ親しんだ仕事のやり方を変えたくない」「新しい運用方法で仕事を覚え直すのが面倒」といった考えがおよぶようになりますが、レガシーシステムは、コストがかかりすぎているケース、効率が悪いケースが少なくありません。
コスト削減や効率化を目指すためには、レガシーシステムからの脱却が必要不可欠です。
日本における成功事例を紹介
ここでは、自治体DXの3つの成功事例を紹介します。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
自治体DXの事例1:公共施設の管理業務
ある自治体では、公民館やスポーツ施設といった公共施設の窓口業務の人材不足に課題を抱えていました。
そこで、オンラインで利用予約ができるシステム、およびリモートで入室管理できるシステムを導入。
窓口業務が省力化された上に、さらに利用率も増加したとのことです。
自治体DXの事例2:河川の監視業務
ある自治体では、頻繁に反乱する河川の監視業務に課題を抱えていました。
大雨時などで現場に職員を派遣する必要があるものの、時間がかかる上に大きな危険が伴うとのことでした。
そこで防災用のダッシュボード(様々なデータを一目で確認できるようにしたツール)を導入。
現場に水位センサーやカメラを取り付け、その内容をダッシュボードで確認できるようにしました。
結果として、庁舎内でリアルタイムに現場情報を確認できるようになり、職員を派遣する必要がなくなったとのことです。
自治体DXの事例3:採用業務
ある自治体では、採用業務に課題を抱えていました。
Uターン就職、Jターン就職として自治体に勤めようとする人が多い中、「通っている大学から面接地まで遠い」などといった理由から、途中で辞退する人が少なくないとのこと。
そこで、どこからでも面接ができるオンライン面接を導入。
辞退者が大幅に減り、希望する人材を採用しやすくなったとのことです。
リモートワークから自治体DXを推進
自治体DXについて考える際、外してはならないのがリモートワークです。
「自宅や外出先からでも庁内にある端末を操作したい」「急ぎのメールをスマホやタブレットで確認したい」
そのように考えたことは一度や二度ではないでしょう。
NECネッツエスアイの『リモートデスクトップ for LGWAN』は、庁外端末から庁内端末へ安全にアクセスできるリモートアクセスサービスで、主に次のような特徴があります。
- 庁内端末とほとんど変わらない環境を提供
- マルチデバイス対応
- 本人認証にワンタイムパスワードを組み合わせた強固な認証、および通信経路の暗号化により不正アクセスを防止
この『リモートデスクトップ for LGWAN』の導入、自治体DXの一環として是非ご検討ください。
重点取組項目⑤テレワークの推進対応
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記事まとめ
今回は、自治体DXにフォーカスし、その概要や課題、推進ポイントなどを紹介しました。
自治体DXを推進していく上で、課題となりやすいのは次の3点です。
- 課題1:アナログ文化
- 課題2:DXに対する理解不足
- 課題3:厳しい財政状況
もちろん、これはケースバイケースで、他にも課題となりうるものもあるとは思いますが、まずはこの3点を確認しましょう。
また、繰り返しになりますが、政府としても自治体DXには力を入れ始めています。この流れに乗っていけるかどうか、ここも自治体DXの成否に大きく関わってくるでしょう。
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