2021年7月7日に自治体DX全体手順書【第1.0版】が公表されました。
これは2020年12月に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」における自治体関連の各施策について、自治体が自治体DX推進のために重点的に取り組むべき事項・内容を具体化したものです。
期間2025年度末までの計画とされており、2021年から計算すると5年の間に実施しなければなりません。
今回はこの自治体DX全体手順書を基礎からわかりやすく解説し、記事にしました。
これから自治体DX導入をご検討される方も、既に体制構築中の方もぜひ最後まで読んでみてください。
全体手順書を理解する前に。そもそもDXとは?
昨今、インターネット上でキーワード上位に挙がるDXとは何なのでしょうか?
DXについて聞いたことがあっても正確に答えられる人は僅かだと思います。そこでここではDXの基本について説明します。
そもそもDXとは?
DXとは「Digital Transformation」の略称です。日本語では「デジタル変革」と訳されています。
読み方は「ディエックス」や「デジタルトランスフォーメーション」です。
DX を一言で表現すると「デジタル技術を活用することで生活やビジネスが変革すること」になります。
日本政府が描くDXの推進のための3原則
2020年12月、政府は「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定しました。
本計画は行政サービスの効率化を図るため、以下の3原則を規定することで「行政サービスの100%デジタル化」を目指すというものです。(DX推進計画は2025年度末までの計画とされています)
この計画は今後、日本政府が目指すDXの指標と言って良いでしょう。
デジタルファースト
個々の手続が一貫してデジタルで完結
ワンスオンリー
一度提出した情報は、再提出不要
コネクテッドワンストップ
民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現
自治体DXとは?
そんな政府が推進を推奨する行政サービスの100%デジタル化です。もちろん対象は自治体にも及びます。
政府は、行政サービスの利便性向上や業務効率化のために、自治体DXが必要不可欠だと考えており、2020年12月25日、総務省が「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(以下、「自治体DX推進計画」とする)を策定しました。
これは、全国にある各自治体のDXを足並み揃えて進めていくための計画のことです。各自治体が取り組むべき内容や政府としての支援策などを具体化することで、より高度なデジタル社会の実現を目指します。
自治体DX全体手順書とは?
昨年7月に総務省は自治体DXを成功に導くための全体手順書を発行しました。
この全体手順書は自治体DX推進を滞りなく実行することができるように策定されたものです。
ここからは全体手順書の全体像をわかりやすく解説していきます。
DX全体手順書の目的
政府の押し進めるDXは単なるデジタル技術の導入ではありません。
デジタル技術を活用して利用者目線で業務の効率化を実現すると共に行政サービスの利便性向上を達成するために策定されたものなのです。
しかし、一方で自治体DXは、全国でシステム標準化やオンライン化を実現し、足並みを揃えることを求められているので、現状を考慮するとコロナ禍による業務増加やITに精通した人材不足等により、体制準備や対応が遅れてしまう自治体も多くあるかもしれません。
そんな自治体の方こそ、読み解いていただきたいのが、この自治体DX全体手順書。
全体手順書は全国の各自治体が遅延なく、着実にDXを実現するためのガイドラインです。
この全体手順書の位置付けは総務省が自治体がやるべきことを取りまとめた「自治体DX推進計画」を具現化したもので、全国の自治体にとってこの全体手順書は、DX推進のバイブルと言って良いでしょう。
自治体DXのビジョンと取り組み
次に自治体DXのビジョンは「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会〜誰一人取り残さない人に優しいデジタル化〜」と示しています。
総務省はこれを実現するための重点取組事項として以下の6つを全体手順書の中で掲げています。
① 情報システムの標準化・共通化
② マイナンバーカードの普及促進
③ 行政手続オンライン化
④ AI・RPAの利用促進
⑤ テレワークの推進
⑥ セキュリティ対策の徹底
引用元:自治体DX推進計画概要
これらはどれも自治体DXにとっても必要不可欠であり、一部どうしてもDX化できない部分はあると思いますが、可能な限り対応していきたい、しなくてはいけないものとなっていると言えるでしょう。
自治体DXの工程表やステップ
政府が目指す自治体DXの工程表は全体手順書の中で以下のように明記されています。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
① | 情報システムの標準化・共通化 | 目標時期を2025年として、ガバメントクラウドの活用に向けた検討を踏まえ、基幹系17業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行 |
② | マイナンバーカードの普及促進 | 2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づき、申請を促進するとともに交付体制を充実 |
③ | 行政手続オンライン化 | 2022年度末を目指して、主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続き(31手続き)について、原則マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能とする |
④ | AI・RPAの利用促進 | ①・③による業務見直し等を契機に、AI・RPA導入ガイドブックを参考としてAIやRPAの導入・活用を推進 |
⑤ | テレワークの推進 | テレワーク導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考に、テレワークの導入・活用を推進。①・③による業務見直し等にあわせ、対象業務を拡大 |
⑥ | セキュリティ対策の徹底 | 改定セキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底 |
自治体DXの問題点
このように政府が強く推進する自治体DXをはじめとするDX化ですが、実際に自治体が自治体DXを推進する上では、主に以下の3つが問題点として危惧されています。
アナログ文化
自治体DX導入、体制構築の課題としてまず挙げられるのが根強く残るアナログ文化です。
DXではペーパーレスと呼ばれる紙媒体からデジタルへの変換が強く求められますが、自治体では旧態依然としたアナログ文化が根強いです。
しかしアナログである紙業務から脱却することで、転記作業や紙資料の入力業務などは簡単に行えるようになります。
またRPAの活用によって業務プロセスを改善し、効率的な業務プロセスへの移行も可能になりますのでぜひこの点を解決したいところです。
財政不足
自治体DXを実現するためには、デジタル技術を導入する資金がどうしても必要となってきます。
自治体DX導入のために最初はセキュリティ体制、人的リソースの確保、各種サービスの導入などコストがかかりますが、長期的視点で見れば、業務効率化や人的リソースの最適化が進むことで十分なメリットとなることが見込めます。
これから労働者人口が低下することで自治体は更に厳しい財政状況に陥ると見られていますので、このタイミングでの自治体DXへの転換を進めましょう。
IT人材の不足
2019年に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると2030年には約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
この背景としてIT技術が様々な分野で活用された結果、需要を上回るITエンジニアが必要とされました。
自治体DXを進める上で、ITエンジニアは慢性的な人材不足に陥るとみなされています。
これら課題を解決するには最適なIT環境構築、各種ITサービス導入、または運用にあたりプロによるサポートが必要です。
全体手順書の重要取り組み項目④・⑤・⑥はNECネッツエスアイにお任せ
この記事を監修しているNECネッツエスアイは自治体DXの全体手順書の重要取り組み項目の④、⑤、⑥をサポートを行っております。
④ AI・RPAの利用促進
⑤ テレワークの推進
⑥ セキュリティ対策の徹底
特に⑤のテレワークの推進は実際にNECネッツエスアイがテレワーク推進を自社実践で実現・成功しており豊富なノウハウを持っています。
以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご参照ください。
記事まとめ
この記事では自治体DXを理解するため、総務省が発行したDX全体手順書のダイジェストを解説しました。
自治体DXを正しく理解するには全体手順書が最適ですが47ページもあり、内容も難解です。
そこでこの記事では全体手順書を読まなくとも馴染みのなかった自治体DXを理解できるような内容になっています。
自治体DXを平たくいうと「自治体のデジタル改革」ですが、理想を実現するための手段のひとつです。
それぞれの自治体の実状に合わせて創意工夫しながら取り組むのが良いでしょう。