自治体DX推進の重要な実行計画の1つ、「自治体DX推進計画」では、住民の暮らしに直結する17の自治体業務についてのシステム標準化を2025年までに完了させるとされています。
この17業務のシステム標準化により、何が実現されるのでしょうか。
また、このシステム標準化は、ガバメントクラウド上のシステム構築を原則として予定しているものですが、狙いは何でしょうか。
17業務のシステム標準化および並行して進められる自治体DXの重点取り組みから考えられるメリットや、手法・効果についてまとめてご紹介します。
システム標準化の対象「17業務」とは
システム標準化は、総務省が取りまとめた自治体DX推進計画の中で業務のオンライン化と並び、重点取組が必要とされる課題です。
実行手順は「自治体DX推進手順書」にまとめられています。
また、実行においては、内閣府所管の専門家であるデジタル庁がリードして、技術仕様をまとめ、公表されています。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画(2021年6月18日閣議決定)」の中でシステム標準化計画は次のように示されました。
地方公共団体の基幹業務システムについて、情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張、データ移行や連携の容易性の向上、高度の セキュリティ対策の導入、サーバ等の共同利用による情報システムに係るコスト削減等を通じて、デジタルファースト及びワンスオンリーを徹底し、住民サービスの向上と行政の効率化を図るため、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度(2025 年度)までに、ガバメントクラウド上に構築された標準化基準に適合した基幹業務システムへ移行する統一・標準化を目指す。
システムを標準化すると、住民サービスの向上と行政の効率化が見込めます。
そして、ガバメントクラウド上に標準システムを構築すると、よりよい技術にシステムを更新していくことも容易であることが考えられるでしょう。
その結果、自治体DXを円滑に進められると考えられますが、これが標準化の狙いです。
ところで、この計画の実行ですが、現在標準仕様が策定済である住民基本台帳の標準システム移行が開始されており、各業務の標準仕様書を関係省庁が順次策定しているところです。
中でも住民の暮らしに近いところにある17の業務に関しては、標準システムの導入が原則2025年度末までの実施が目標として掲げられています。
同時に各自治体には標準システム導入が義務付けられています。
17の業務は具体的には以下の通りです。
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 児童手当
- 生活保護
- 健康管理
- 就学
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
17業務は税金や保険関連、健康関連、子どもに関するものなど、暮らしと直結し、窓口業務として現在行われているものが多く挙げられています。
これらの業務のシステム標準化ができれば、職員の負担が軽減できるでしょう。
さらに、オンライン化や共通化により、窓口の待ち時間短縮や手続にかかる作業量の大幅な減少など、自治体で働く職員だけでなく住民にも大きなメリットがあるものと考えられます。
システム標準化が必要とされる背景
システム標準化が必要とされる背景には、住民サービスにあたる職員数の減少と高齢者の増加によるサービスの多様化が見込まれることがあげられます。
団塊ジュニア世代の半分の職員数で高齢者を支える2040年頃には、今より住民サービスを大幅に効率化しないと追いつきません。
システムを導入するだけでも、行政事務は効率化されるはずですが、「標準化」が必要なのには次のような理由があります。
標準システムによるデータ活用の推進
システム仕様を標準化して統一するとデータ形式も共通化することが容易になります。
そうすると、データ活用が進み、業務の標準化も自治体の垣根を超えて、例えば自治体間で同じ知見を持った人員を融通しながら進めることができます。
ベンダーロックインの克服
新しいシステムを導入しようとすると、データ形式が特定のベンダーのそれに拘束される・システム連携をすると優先されるシステムの仕様に拘束され、結果、特定のベンダーの仕様が固定化する、などの問題があります。
それでは技術革新で業務が効率化できるのにしない、といったことになりかねません。
標準化をガバメントクラウド上で進めると、アプリケーションのみの更新で大改修を避けることができます。
結果、柔軟に最新のアプリケーションを導入することが可能になったり、あるいは標準仕様のシステムの更新も容易である、といったメリットが生じ、自治体DXが加速すると考えられるのです。
自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するメリット
自治体DXでの取り組みは、システムの標準化だけではありません。システムの標準化は中心的な取り組みですが、これと併せて以下のような取り組みが予定されています。
- マイナンバーカードの普及促進
2022年度末にはほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指し、マイナンバーカードの普及の加速化等を強力に推進することとされています。 - 自治体の行政手続のオンライン化
マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能にする計画です。 - 自治体のAI・RPAの利用推進
AIやRPAなどのデジタル技術を活用した業務プロセスの標準モデルを構築して、先進事例の情報共有を行っています。
このように自治体DXを進めることにより、次のようなメリットが生じることが期待されています。
人手不足の解消
業務のオンライン化・デジタル化が進むと、職員の負荷軽減となり業務効率化に繋がります。そして、RPA・AIによる自動化は業務効率に大きな効果が期待できます。
窓口業務削減・テレワーク導入等による職員の負担の軽減
紙と窓口での手続きであったものがオンラインで業務が完結できるようになると、窓口で物理的に対応しなくてもよくなるので、職員のテレワークも進められます。
行政サービスの質の向上
コロナ禍においては、窓口に赴くこと自体が住民・職員にとって負担でしたが、オンライン化すると自宅で完結でき、非常事態にはより安全です。また、待ち時間も解消できます。
また、タブレット・スマホなどの活用により、紙に書くより分かりやすく簡単に入力しやすい手続きに変えている先進的な自治体もあります。
例えば、押印の廃止やキッシュレス決済の導入により窓口手続きのデジタル化に成功したり、オンラインでの子育て相談等など、市役所とデジタルで繋がれるようになった自治体もあります。
組織改革によるIT専門家など高度人材の確保
DXを推進すると、公務員として、あるいは外部協力者としてIT専門家の積極的な活用を行わなければなりません。
自治体DX推進計画では組織改革・ポストや専門部署の創設などにより、専門家の確保を図るとされています。
このことは、地方自治体の文化を変革し、時には新しい産業を呼び込んだり、過疎化の歯止めとしても期待できるでしょう。
自治体DXの推進を加速させるために、人材教育に力を入れる自治体も出てきています。
デジタルを活用し、より広い社会課題の解決を進めるための人材育成に取り組んでいる自治体もあるほどです。
NECネッツエスアイは自治体DXサービスの導入・運用を支援します
NECネッツエスアイは、これまでもITインフラを中心とする庁舎設備、消防防災、GIGAスクール関連など現場業務における様々なインフラ構築やソリューション提供を通じて自治体の課題を解決した実績を有しています。
このノウハウを生かして、自治体DX推進計画の策定を契機にデジタルシフトを実現し、働き方やまちづくりに関する自治体の課題解決する具体的な「Action」に繋げる「自治体DXコーディネートサービス」の提供を行っています。
働き方改革の自社実践やお客様との共創から得たノウハウを元にコンサルタントがプロジェクトに伴走し、最先端のICT技術や活用事例の調査・共有、ナレッジデータベースの活用から最適なICT選定を支援します。
また、実証実験の対象業務選定と最適な検証内容の定義を行い、導入効果測定を支援します。
重点取組事項⑤テレワークの推進対応「LGWAN-ASPサービス」
その他、自治体DX推進をサポートする取り組みとして「NECネッツエスアイ リモートデスクトップ for LGWAN」を中心とする「LGWAN-ASPサービス事業」に取り組んでおりパブリッククラウドを活用したソリューションの提供を行っています。
自治体DX推進計画の中では、リモートワーク・セキュリティの強化も重点取り組みとされていますが、上記のソリューションはこれらの取り組みをパワーアップするものと考えられます。
重点取組項目⑤テレワークの推進対応
リモートデスクトップ for LGWAN
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記事まとめ
「自治体DX推進計画」では、窓口で紙を使い進められる住民サービスを中心に17業務が標準化されたシステムに移行することが予定されています。
ガバメントクラウド上構築されるシステムの標準化によって、データ活用が進み、マイナンバーカードの活用の幅も広がり、業務のオンライン化も進められることが狙いです。
住民サービスもより分かりやすくなることが期待されています。また、自治体職員の負荷軽減にも期待できることでしょう。
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