自治体DX推進計画における重点取組事項の1つとして「情報システムの標準化・共通化」という項目があります。
この記事では、自治体情報システムの現状と標準化・共通化によって期待される効果および注意点を解説します。
自治体情報システムの標準化・共通化に向けた政府の取り組みや支援内容もまとめているので、自治体DXの施策を検討中の自治体関係者様はぜひ参考にしてみてください。
自治体DX推進計画における“情報システムの標準化・共通化”の概要
まずは自治体情報システムの現状と、標準化・共通化による自治体DXで期待される効果および注意点について詳しく見ていきましょう。
これまでの自治体情報システム
これまでの自治体は、個別にシステム開発・運用を行ってきたために、維持管理や改修にかかる負担が大きかったり、自治体間での連携が取りづらかったりする等の課題がありました。
自治体DXによってシステムの標準化・共通化が進めば、全国の自治体で同品質のサービス提供が可能となる他、自治体間の連携強化や業務効率化といった効果が期待されます。
またシステム運用にかかる人的・財政的コストを削減できることで、人材不足の解消や行政サービスの質向上等も見込めるでしょう。
情報システムの標準化・共通化で期待される効果
情報システムの標準化・共通化による自治体DXで期待される効果として、具体的に以下のような点が挙げられます。
- システムの運用経費を3割程度削減(2018年度比)
- ハードウェアやソフトウェアを各自治体が整備・ 管理することを不要とする環境の実現
- 独自のカスタマイズ等によるベンダーロックイン(特定ベンダーへの依存)の解消
- 行政運営の効率化・行政サービスの利便性向上 等
システム標準化・共通化を進めるうえでの注意点
情報システムの標準化・共通化による自治体DXを進めるうえでは「標準準拠システムはカスタマイズしない」という点に注意が必要です。
せっかく標準化・共通化されたシステムを導入しても、自治体の要件に合わせてカスタマイズしてしまっては意味がありません。
標準準拠システムはカスタマイズせず、標準オプション機能やAPI連携等を活用して各自治体の要件を満たしていくことが求められます。
自治体DX推進に役立つ政府の支援・サービス
続いて、自治体DXおよび情報システムの標準化・共通化に伴う政府の取り組みや支援について見ていきましょう。
ガバメントクラウド(Gov-Cloud)の提供・利用拡大
デジタル庁では、政府共通の情報システム基盤および機能を提供するクラウドサービス(IaaS・PaaS・SaaS)の利用環境として「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」の整備を進めています。
標準化・共通化の要件を満たしたアプリケーション・サービスがガバメントクラウド上に構築され、その中から自治体ごとに必要なものを選択するという仕組みです。
ガバメントクラウドの活用により、システム運用にかかるコストの削減やサービス切り替えの効率化、自治体間のセキュリティ水準の統一といったメリットが期待されます。
デジタル基盤改革支援基金
デジタル基盤改革支援金とは、自治体DXに伴うシステム標準化・共通化やマイナポータル等のオンライン手続きの推進にかかる費用を補助するための助成金制度です。
デジタル基盤改革支援基金の補助対象となる事業は以下の通りです。
助成金の対象 | 助成金の予算 | 助成金額 |
---|---|---|
自治体のシステム標準化や共通化 | 約1,509億円・2025年度まで | 費用の全額 |
マイナポータル導入などのオンライン手続き推進 | 約250億円・2022年度まで | 費用の半額 |
次期自治体情報セキュリティクラウドへの移行 | 約29億円・2022年度まで | 費用の半額 |
また情報システム標準化・共通化による自治体DX事業のうち、補助対象となる経費には以下のようなものがあります。
- 現行システムの分析やシステム更新時期等を踏まえた移行計画作成等に要する経費
- 文字情報基盤文字との同定作業やデータ移行等に要する経費
- ガバメントクラウド上で提供される標準準拠システムの稼働環境への接続設定等に要する経費
- 標準準拠システムにかかる一連のテストや操作研修の実施等に要する経費
- 標準準拠システムと関連システムとの円滑な連携に要する経費
- 標準準拠システムへの移行に伴う契約期間中の既存システムの整理に要する経費
助成金の支給条件は自治体の規模によって異なるため、申請前に総務省へ確認するようにしましょう。
システム標準化・共通化の概要と政府の支援策まとめ
情報システムの標準化・共通化による自治体DXの取り組みはすでに始まっており、現時点では2025年度末の移行完了が目標とされています。
早い段階から業務の見直しや自治体DX推進計画の設計を行い、スムーズに標準システムへ移行できるよう準備を進めていきましょう。