円滑な業務を実現するには、部署・業務に合わせた人材育成や職員のキャリア形成が必要不可欠です。
しかし、自治体は民間企業のような利益追求型の組織ではないため、どのように人材育成をすれば良いのか分からないという自治体も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、自治体における人材育成の課題と、課題解決のために今後必要とされる考え方を解説します。
また人材育成に関する自治体の先進事例も紹介しているので、人材育成でお悩みの自治体様はぜひ当記事に掲載されている先進事例を参考にしてみてください。
自治体における人材育成の課題と今後の考え方
まずは、現在の自治体が抱える人材育成の課題と、課題解決のために今後必要となる考え方について詳しく見ていきましょう。
人材育成基本方針の形骸化
自治体の人材育成に関する方針は、1997年に自治省(現在の総務省)が通知した「人材育成基本方針策定指針」がはじまりとされています。
「人材育成基本方針策定指針」は、新時代に対応した人材育成方針の策定を自治体に求める内容となっており、実際に多くの自治体が人材育成方針の策定を実施しました。
しかし、方針の策定からすでに20年以上が経過しているにもかかわらず、策定当初から内容を一度も改定していないという自治体は少なくありません。
自治体を取り巻く環境はこの20年で大きく変化しており、昔と同じ人材育成方針が用いられているとなれば、その内容はすでに形骸化してしまっていると言えます。
記事の後半で紹介する先進事例に倣っていくためにも、昨今のデジタル化を踏まえた人材育成方針の改定が必要になってくるでしょう。
職員のキャリア形成・モチベーション向上が難しい
利益追求型の民間企業と異なり、自治体は目に見える成果が少ないため、職員のモチベーション向上を図ったり、意欲を持ち続けたりすることは決して簡単ではありません。
また部署間での異動も多く、必ずしも希望した部署に配属されるとは限らないことから、積極的なキャリア形成が難しい環境だと言えます。
そのため、先進事例のように職員のモチベーションを高く保つには、人材育成プログラムの内容を工夫していくことが重要となるでしょう。
今後は“人材マネジメント”視点での取組が必要
上記の課題を踏まえ、これからの自治体には“人材マネジメント”視点での取り組みが必要になると考えられます。
人材マネジメントのポイントとしては、以下の4つの項目が挙げられます。
人材確保 | 自治体が求める人材像を明確化し、効果的な情報発信と広域的な採用を行う |
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人材育成 | 自治体向けのセミナーや研修を導入する |
適正配置と処遇 | 研修制度と連携し、職員個人が最大限に能力を活用できるような配置および定期的な処遇の見直しを行う |
職場環境の整備 | テレワーク推進やキャリア形成の支援といった意識改革を行い、多様な価値観を持つ職員が働きやすいと感じる職場環境を整える |
まずは自治体の実情に合わせた中長期的な計画を立て、人材育成の体制化を目指していきましょう。
そしてその過程で専門知識や技術を積極的に取り入れ、自治体のDXを加速させていくことが大切です。
人材育成の先進事例・取組を紹介
続いて、すでに人材育成に関して積極的に取り組んでいる先進事例をいくつかご紹介します。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
先進事例①職員のキャリアデザインのために職場体験を導入
職員の職業キャリアがデザインしづらいという現状を変えるために、公募制による職場体験の制度を導入している自治体の先進事例です。
対象となるのは40歳以下の職員で、2~3日ほど希望する職場での業務体験を受けることができます。
参加した職員は興味のある職場の雰囲気を知ることができ、また受け入れた職場では適正人材の発掘に繋がるといったメリットが見込めたため、最終的に双方で9割を超える満足度を達成しました。
先進事例②20年後の将来を見据え、起業的視点を持つ職員を育成
ある自治体では、20年後も満足度の高い住民サービスを提供できる体制を確立するため自ら考え行動できる政策提案能力をもつ人材の確保にむけた取り組みを行っています。
対象となる職員が「児童虐待」や「高齢者と地域づくり」といったテーマを設定し、実態把握・分析・先進事例の調査・新施策の提案などを行うというものです。
こちらの先進事例では、自治体だけでなく地域の企業や大学などの団体と連携し、実際に事業化することを目指してテーマに取り組んでいくのが特徴。
課題を通して地域と向き合い、自治体業務にも影響を与えていくことで、人材育成・自治体DXを同時に実現できる良い先進事例と言えるでしょう。
先進事例③戦略的思考やマネジメント力向上のために、民間企業と合同研修を実施
目的達成までの道筋を立てる戦略的思考や、組織管理に必要なマネジメント力を向上させるために、民間企業との合同研修を実施した自治体の先進事例です。
対象となったのは自治体の管理職員で、研修参加後は民間企業の社員との交流が活発化し、新たな気付きを得たり、人間関係の幅が広がったりするなどのメリットが得られました。
自治体における人材マネジメントと先進事例まとめ
人材育成基本方針の形骸化や職員のキャリア形成・モチベーション向上の難しさなどから、これまで自治体における人材育成はあまり進んでいませんでした。
しかしこれからは、人材を有効活用するための”人材マネジメント”視点を持ち、人材の確保から職場環境の整備にいたるまでの体制化が必要になってくるでしょう。
今回ご紹介した先進事例などを参考に、一度人材育成の方針を見直してみてはいかがでしょうか。