マーケティングの自動化、AIによる顧客データ分析、キャッシュレス決済、生体認証、リモート会議等々、近年、多くの企業でDXの推進が進んでいます。
更に、2021年9月1日にデジタル庁(国全体のデジタル化を推進する役割を持つ庁)が発足したことから、自治体においてもDXを推進する動きが活発化しつつあります。
そこで今回は、自治体DXにフォーカスし、その概要、必要とされている理由、課題、参考事例などを紹介します。
自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

自治体DXとは一体何でしょうか?
DXは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略称で、自治体DXとは、デジタル技術によって行政の仕組みを改革する取り組みのことを言います。
政府は、行政サービスの利便性向上や業務効率化をするために、自治体DXが必要不可欠だと考えており、2020年12月25日、総務省が「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(以下、「自治体DX推進計画」)を策定しました。
これは、全国にある各自治体のDXを足並み揃えて進めていくための計画です。
各自治体が取り組むべき内容や政府としての支援策などを具体化することで、より高度なデジタル社会の実現を目指します。
この「自治体DX推進計画」では、次の6つを自治体DXの重点取組事項として挙げています。
① 情報システムの標準化・共通化
② マイナンバーカードの普及促進
③ 行政手続オンライン化
④ AI・RPAの利用促進
⑤ テレワークの推進
⑥ セキュリティ対策の徹底
引用元:自治体DX推進計画概要
自治体DXが必要とされている理由とは

なぜ自治体DXが必要とされているのでしょうか。
その理由いくつか考えられますが、ここでは次の2つをあげてみます。
理由1:住民ニーズが多様化しているため
これまで、自治体のサービスは、画一的に提供されることが多くありました。
しかし、現代は、人々のライフスタイルが変化する中、住民ニーズも多様化してきています。
住民一人ひとりのニーズに応じたサービスが求められており、そこでデジタル技術の持つ力が期待されています。
理由2:職員数の減少
現在、多くの自治体が、生産年齢人口の減少による職員数の減少に頭を悩ませています。
加えて、介護問題、空き家増加、インフラ老朽化、新型コロナウイルス対策など、自治体の業務はどんどん増える一方です。
限られたリソースの中で自治体業務を行うためには、業務の効率化が欠かせません。
この問題の対策としても、デジタル技術が有効だと考えられています。
自治体DXの課題とは

住民ニーズの多様化、職員数の減少といった理由から必要とされている自治体DXですが、そこにはどのような課題があるのでしょうか?
主に次の4つがあげられます。
課題1:アナログ文化
自治体にまだまだ根強く残るのが、アナログ文化です。
民間企業でデータ化・ペーパーレス化が進む中、自治体ではまだまだ紙を主軸とした業務を行っているところが多くあります。
例えば、住民が記入した申請書や届け出などを職員が手作業でシステムに転記する、といったケースが数多く散見されます。
また、紙媒体による情報共有、印鑑による承認作業なども当たり前のように行われています。
このようアナログ文化から脱却できなければ、やはりデジタル的な改革を進めることは難しいでしょう。
課題2:自治体によって異なるシステム仕様
自治体で使われている情報システムの多くは、各自治体が独自に構築・運用してきました。
そのため、ITベンダー(IT製品を販売する企業)の立場からすれば、ある自治体に特定のシステムを導入して成功したとしても、そのまま他の自治体に横展開することができません。
データ形式や操作方法、画面などが異なっているため、個別の対応を行う必要が出てきます。
課題3:レガシーシステム依存
自治体では、レガシーシステム(過去の技術や仕組みで構築されているシステム)が使われていることが往々にしてあります。
長期間にわたって同じシステムを使用していると、「慣れ親しんだ仕事のやり方を変えたくない」などといった考えが及ぶようになりますが、レガシーシステムは、コストがかかり過ぎているケース、複雑化・ブラックボックス化しているケースが少なくありません。
根本的な改革を行うためには、レガシーシステムからの脱却が必要不可欠です。
課題4:厳しい財政状況
自治体DXは、コスト削減効果も見込める一方で、それ自体を行わなくても現状の業務に支障をきたすことがありません。
そのため、財政状況が厳しい自治体では、情報システムに対する投資が見送られてしまうことがあります。
行政のデジタル化の事例

ここで、自治体DXの事例を2つ紹介します。(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
事例1:タクシー運賃補助制度運営
ある自治体は、タクシー運賃補助制度運営の課題をDXで解決しました。
同自治体では、高齢者などの移動困難者向けにタクシー運賃補助制度を実施しています。
タクシー利用者は、乗車時に市から発行された利用登録証を提示し、降車時に利用券及び運賃(本来の運賃から補助額を引いた額)を支払う。タクシー会社は、同自治体に対して、その内容の申請と利用券の返却を行う。同自治体は、タクシー会社に対して、補助金を支給する。
このような仕組みです。
このタクシー運賃補助制度、従来から、利用券の返却や申請業務(主にデータ入力)に膨大な手間がかかってしまうことが課題となっていました。
そこで、マイナンバーカードを利用して利用登録証と利用券を電子化。
利用登録証と利用券の持ち歩きが不要となり、マイナンバーカードのみで利用できるようになりました。申請業務も不要になりました。
結果として、制度運営が大幅に効率化された上に、利用者から「外出する機会が増えた」などといった声をもらえるようになったとのことです。
今後は利用者を増やしていくとしています。
事例2:市民からの問い合わせ対応業務
ある自治体では、問い合わせ対応業務の課題をDXで解決しました。
同自治体では、電話やメールに加えて、市の公式アプリ、広報直通便はがき、市のWebサイトなど、複数のチャネル経由で、年間約300件にのぼる「市民の声」が届きます。
これに対し、同自治体は、次のような流れで対応を行っていました。
- 広報課で問い合わせ内容をExcelにまとめる
- 各担当課にメールで回答依頼を行う
- 各担当課でExcelに回答内容を記入
- 広報課から市民に回答する
しかし、この方法では、データ入力の手間が発生する上に、対応状況を把握しにくく、回答に遅れや抜け漏れが生じることが多々ありました。
そこで、この問い合わせ対応のプロセスを一元管理できるシステムを導入。
リアルタイムで対応状況や進捗、回答内容を把握できる環境を構築しました。
結果として、回答までの時間が大幅に短縮され、回答の抜け漏れや、無駄な確認作業などもなくなったとのことです。
まずはテレワーク導入から行政のデジタル化を推進

自治体DX推進計画における「重点取組事項」の一つに、「⑤テレワークの推進」がありました。これを実現するツールとして、『リモートデスクトップ for LGWAN』がおすすめです。
『リモートデスクトップ for LGWAN』とは、庁外端末から庁内端末へ安全にアクセスできるリモートアクセスサービスです。
自治体におけるテレワーク導入で、大きな問題となりやすいものの一つに、セキュリティの問題があります。
自治体は、地域住民の個人情報を大量に扱うため、高いレベルのセキュリティ機能を要求されます。
その点において、『リモートデスクトップ for LGWAN』には、次のような特徴があり、セキュリティ面は万全です。
- LGWAN(高度なセキュリティ対策を施して構築された行政専用のクローズドネットワーク)を介して接続
- ID&パスワードによるログイン+ワンタイムパスワードの二要素認証で、不正アクセスのリスクを低減
- デバイスの固有IDや証明書により利用端末の制限
- ローカルにデータを転送できない仕様により、印刷やデータ抜き取りによる情報漏洩を防止
『リモートデスクトップ for LGWAN』の導入、ぜひこの機会にご検討ください。
まとめ

デジタル技術によって行政の仕組みを改革する自治体DXは、住民ニーズの多様化や職員数の減少など、自治体を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、必要不可欠なものとされています。
2021年9月にデジタル庁が設立されました。
これからますます自治体DXが加速していくことが予想されます。適宜、「自治体DX推進計画」「自治体DX推進手順書」などを参考にしながら、着実に進めていきましょう。