AWS(Amazon Web Services)は、さまざまなサービスを提供するクラウドコンピューティングプラットフォームです。
本記事では、AWSを活用して高セキュリティの閉域網を構築する方法について、閉域網の考え方からAWSの特長、閉域網とAWSへの連携方法について解説します。
セキュリティとプライバシーを重要視する方々にとって、AWSでの閉域網の導入方法を探る手助けとなるでしょう。
閉域網とは
閉域網は、高いセキュリティやプライバシーを必要とし、企業や組織内でデータ通信をするためのプライベートなネットワークを指します。
一般のインターネットとは接続しておらず、外部から直接アクセスすることはできない通信ネットワークです。
ここではまず、閉域網の基本を理解しましょう。
閉域網の基本
各企業の働き方改革への取り組みやテレワークの普及により、企業ネットワークはどんどん複雑化したうえ、帯域不足による性能劣化という課題にも直面しています。
一方で、拠点間のデータ共有や円滑なコミュニケーションのさらなる促進も必要とされているでしょう。
閉域網を活用した拠点間ネットワークの構築は、セキュリティリスクの低減と安全なデータアクセスの実現に欠かせない課題といえます。
閉域網は、実現する技術面から、以下の4種類に分けることができます。
- 1.専用線
専用線は、通信事業者が提供する物理回線を使ったネットワークであり、インターネットとは異なる回線を利用するため、セキュリティが高く、安定した通信が可能です。
- 2.インターネットVPN
インターネットVPNは、インターネットを介して論理的な閉域網を利用する技術です。
専用線と比べてコストを抑えることができますが、セキュリティ面では専用線に劣ります。
- 3.IP-VPN
IP-VPNは、IPベースのVPN技術を使用して、複数の拠点間でセキュアな通信を実現します。
専用のIP網を利用するため、セキュリティと安定性が向上しています。
- 4.広域イーサネット
広域イーサネットは、イーサネット技術を広域ネットワークに拡張するための技術です。
専用線やIP-VPNと比べてコストが安価で、スケーラビリティと柔軟性に優れています。
企業は、これらの中から通信ニーズやセキュリティ要件、予算に合わせて最適な閉域網を選択することができます。
閉域網を活用することで、外部からのアクセスを制限しながら、信頼性の高い通信環境を実現するのです。
閉域網のメリット、デメリット
閉域網のメリットとデメリットを正しく理解しておくことは、セキュアなネットワークを構築するうえで非常に重要です。
まず、閉域網のメリットを整理しましょう。
メリット | 説明 |
---|---|
セキュリティの向上 | インターネットから物理的もしくは論理的に分離されているため、外部からの不正アクセスを防ぐことができます。 そのため、機密情報や個人データを保護する必要がある場合に有効です。 |
データの安全な共有 | インターネットを利用すると、通信が傍受される可能性があるため、機密性の高いデータのやり取りには適していません。 閉域網を利用することで、安全にデータや情報を共有することができます。 |
通信品質の向上 | インターネットを利用すると、通信品質が低下する可能性があります。 閉域網を利用することで、安定した通信を実現することができます。特に大容量データの高速転送やリアルタイム通信が必要な場合に有用です。 |
一方、閉域網のデメリットは以下の通りです。
デメリット | 説明 |
---|---|
コストの高さ | 閉域網を構築および運用するためには、専用線やIP-VPNなどの高コストなネットワークインフラが必要となります。 通常のインターネット接続に比べてコストがかさむことがあります。 |
運用の複雑さ | 閉域網を構築し運用する際、設定や管理が複雑になることがあります。 拠点やユーザーが多くなるほど、運用に専門知識が必要です。 |
閉域網の導入を検討する際には、これらのメリットとデメリットを踏まえて、自社に最適な方法を選ぶことが重要です。
AWSを使った閉域網接続の特長
AWSの概要
AWSは、クラウドコンピューティングプラットフォームとして広く知られており、企業のITインフラを効率的に管理し、スケーラビリティを提供するための多彩なサービスを提供しています。
AWSを始めとした、クラウドサービスを使うことの大きなメリットは、以下の3点です。
- コスト削減
- 効率的な運用とスケーラビリティ
- 優れた拡張性と柔軟性
順に解説しましょう。
コスト削減
AWSなどのクラウドサービスの活用により、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア関連のコストの削減が可能となります。
自社でサーバーやネットワーク機器を用意するオンプレミス環境に比べ、クラウドでは、必要なリソースを必要なだけ利用するため、不要な投資を抑制できます。
さらに、AWS自身で運用とメンテナンスを行うため、管理コストの削減も期待できるでしょう。
効率的な運用とスケーラビリティ
クラウド環境を導入することで、ハードウェアの調達やセットアップにかかる時間と手間を劇的に削減することができます。
サーバーを構築する際も、Web設定画面から指示するだけで、必要な環境を容易に準備することが可能です。
さらに、サーバーのメンテナンスやソフトウェアのアップグレードも、AWSが対応するため、運用管理に関して意識することはありません。
優れた拡張性と柔軟性
アクセスの急増や想定以上のデータ量増加に対応し、ストレージの拡張やサーバースペックの強化など、迅速に対応することができます。
当然、アクセスの急増が収束した場合は、容量やサーバーを元に戻すことも容易に行えます。
自社内にサーバーやストレージを用意していたオンプレミスの形態に比べて、リソースを効率的にかつタイムリーに準備することができ、ビジネスの成長や変化にも柔軟に対処することが可能となるでしょう。
AWSと閉域網の基本的な連携
企業のネットワークが閉域網で構成されている場合でも、AWSなどのクラウド上で提供されている有益なサービスを活用したいこともあるでしょう。
あるいは、AWS上に自社のシステムを構築することがあるかもしれません。
その場合は、AWSと自社で使っている閉域網のネットワークを連携させる必要があります。
AWSと閉域網を相互接続することで、アプリケーション連携やデータの送受信ができるようになります。
ただ、AWS自体はインターネットから利用できるクラウドサービスであり、それゆえ外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクがあります。
そのため、企業の閉域網とAWSを安全に連携させるための技術として、以下の2つのサービスが提供されています。
- AWS VPN
AWS VPNは、インターネットを介してVPN技術を使って、AWSに安全に接続するためのサービスです。
- AWS Direct Connect
AWS Direct Connectは、AWSと企業の拠点やデータセンターを専用線で接続するサービスです。
AWSと閉域網を専用の技術を使ってセキュアに連携することで、AWS上のサービスと企業の閉域網内のデータを安全にやり取りすることが可能となります。
AWSを使用した閉域網のメリット
AWSを使って閉域網の企業システムと連携することは、多くのメリットをもたらします。
以下に、主なメリットを説明しましょう。
- セキュリティの強化
インターネットを経由せずにAWSと自社の閉域網を接続することで、外部からの不正アクセスや情報漏洩を防ぐことができます。
特に機密性の高いデータを扱う企業にとって重要です。
- 俊敏性・柔軟性の向上
閉域網の企業システムからAWS上のさまざまなサービスと連携することで、ビジネスの変化に合わせて、システムを迅速かつ柔軟に拡張・変更することができます。
- コスト削減
AWSは、オンプレミス環境と比べて、初期費用やランニングコストを削減することができます。
また、AWSのクラウドサービスは、従量課金制のため、使用量に合わせてコスト最適化を図ることが可能となります。
これらのメリットにより、多くの企業や組織にとって、閉域網とAWSを連携させることは魅力的な選択肢となっています。
セキュアで柔軟なネットワークを実現するために、AWSの効果を最大限に活用しましょう。
AWS VPNとAWS Direct Connectの違い
AWS VPNを使うことで、AWSと閉域網との接続に仮想的な専用線接続を構築し、セキュアなデータ通信を可能とします。
また、物理的な専用線を使ってAWSに接続するのが、AWS Direct Connectです。
よりセキュリティを高めたいときに、選択する方式となります。
AWS VPNでの接続
AWS VPNは、AWS内で仮想プライベートネットワークを構築するためのツールです。
暗号化されたトンネルを介して、データの安全な送受信を可能とするのがVPN技術であり、このAWS VPNを使うことで、クラウドリソースへのアクセスを保護することが可能になります。
このオプションは、特にリモートワーカーのPC接続や、異なる拠点との通信が必要な場合に有効です。
AWS Direct Connectでの接続
AWS Direct Connectは、企業のネットワークとAWSクラウドへの専用線接続を提供するサービスです。
AWS Direct Connectを活用することで、インターネットを経由せずにAWSクラウドへの高速で信頼性の高い接続を確立することができます。
AWS Direct Connectは、大容量のトラフィックを処理するために設計されており、リアルタイム通信やビデオ会議などのアプリケーションに適しています。
また、AWS Direct Connectを使用することで、遅延の少ない安定した通信環境を実現し、閉域網とAWSとのシームレスな統合を可能とします。
まとめ
この記事では、閉域網の基本、AWSでの閉域網接続の特長、およびAWS VPNとAWS Direct Connectの特長について説明しました。
これらの情報をもとに、セキュアな閉域網ネットワークの構築ポイントを理解し、次のステップに進むための知識を得ることができるでしょう。
なお、閉域網を効果的に活用することで、拠点間接続の際に高いセキュリティと高速な通信を実現しますが、リモートアクセスのユーザーにも同じようにセキュリティは必須です。
外出先社員のPCやスマホ、遠隔拠点のデバイスなどからの接続は、閉域網SIMを利用する方法もあります。
閉域網SIMカードを使った接続を行うことで、高いセキュリティを保持したままリモートアクセスを可能とします。
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AWSでの閉域網の導入方法を理解することで、よりセキュアなネットワークの構築を目指しましょう。