仕事の電話対応でプロフェッショナルな印象を与えるための最もシンプルな方法は、適切な敬語や丁寧な表現を採り入れることです。
本記事では、会社の代表電話対応やコールセンターの応対で頻繁に使う「承ります」など、ビジネス会話を洗練させる表現を詳しく解説していきます。
敬語に苦手意識があったり、電話対応がうまくできないとお悩みの方は、まずは本記事で紹介するフレーズを覚え、電話対応に取り入れてみてください。
「承ります」はどんな言葉?
「承ります」という言葉は、電話対応や来客応対など、お客様と接するさまざまなシーンで使える万能フレーズです。
まずは「承ります」の意味を確認し、どのようなときに使えるかを考えていきましょう。
「承る」には3つの意味がある
「承る(うけたまわる)」は敬語の中で「謙譲語」に分類されるものです。
謙譲語とは、自分をへりくだることで相手への尊敬を表す言葉で、目上の人やお客様などに対して使います。
さらに、「承る」の主な意味は3つあるため、正しく意味を理解していればさまざまな場面で応用が利きます。
受ける
一つ目の意味は「受ける」。
相手からの依頼・提案・命令・指示などを受け、その内容を理解し同意したことを表します。
聞く
二つ目の意味は「聞く」。
相手の要望や意見を受け入れる、あるいはそれに耳を傾けるという意味で、その要望に対して前向きに対応する意志を示す際に用います。
引き受ける
三つ目の意味は「引き受ける」。
仕事や任務、依頼事項などを受け負う・承諾する意志を表します。
この「承ります」には、具体的に行動することや責任を負うという意味も含まれています。
会社の電話対応における「承ります」使用例
では、電話対応で「承ります」をどのように使うのか、実際の使用例を見ていきましょう。
私が承ります/(部署名+自分の名前)が承ります
電話対応での自分の名前を名乗るときの使い方です。
「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇 営業部の〇〇が承ります」
これは、
「私がご用件をお聞きします」
「お客様のご用件は私が担当します」
という意味です。
聞く姿勢を示すことで、相手も用件を話しやすくなります。
ご伝言を承りました
電話対応で担当者が不在の場合、担当者への伝言を預かることがあります。
伝言を聞いたら内容を復唱し、
「確かにご伝言を承りました」という確認の一言を添えましょう。
この使い方での「承ります」には
「私が確かに聞きましたよ」
「責任を持ってお伝えすることを引き受けました」
という2つの意味が含まれますので、相手の信頼感を高める効果があります。
修理のご依頼はメールにて承ります
「承ります」を「受ける(受け付ける)」の意味で使った文例です。
「メールにて承ります」
「あちらの窓口で承ります」
など、別の方法があることを伝え、そちらに誘導するときなどに使える表現です。
「この電話で受けることはできませんが、メールで受け付けていますのでそちらをご利用くださいね」
とやわらかく伝えることができますので、相手を不快にさせません。
このような場面で「できません」「メールでご連絡ください」と言うのは少々きつい印象がありますが、「承ります」を使えばポジティブな意味も持たせることができるのです。
ご依頼の件、承っております
「承る」が聞くこと自体を指すのではなく、「誰かから聞きすでに知っている」状態を表す用法です。
「その件については既に伺っておりますのでお任せください」
「存じ上げておりますのでご安心ください」
という意味で、依頼内容をきちんと理解し了承していることを伝え、相手を安心させることができます。
また、ビジネスの電話対応において、別の担当者から対応を引き継いだときに「承っております」と言えば、組織内できちんと情報連携がされている証ともなります。
ビジネスの電話対応で使える基本フレーズ一覧
電話対応に採り入れるだけでプロフェッショナルな印象を与える「電話対応の基本フレーズ」を紹介します。
「承ります」以外にも覚えておきたい表現がいくつかありますので、すらすら言えるよう実際に声に出して練習しておきましょう。
電話に出たときの挨拶
「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇の田中が承ります」
「お待たせいたしました。株式会社〇〇の田中でございます」
ビジネスの電話対応では、電話を受けた方が先に名乗るのがマナーです。
このとき、間違い電話を防ぐために、最初に「会社名」、続いて部署名や自分の名前を名乗るのが一般的です。
企業によっては電話の第一声を統一している場合もありますので、電話対応マニュアルなどで確認しておきましょう。
用件を聞く
「どのようなご用件でしょうか」
「ご用件を伺ってもよろしいでしょうか」
電話対応で担当者を名指しされた場合も、できれば取り次ぐ前に簡単に用件を聞いておきましょう。
用件がわかっていれば、担当者が電話に出る前に準備をしたり、電話の優先度を判断したりすることができるからです。
ただし、中には担当者以外に話しづらい用件もあるかもしれませんので、一次対応で聞くのは「見積書の件」「明日の商談の件」など大まかな内容でかまいません。
また、「伺ってもよろしいでしょうか」という聞き方をすることで、用件を話すかどうかを相手の判断に委ねることができ、より丁寧な印象になります。
聞き取れなかった部分を聞き返す
「申し訳ございません。少々お電話が遠いようなのですが」
「恐れ入りますが、もう一度おっしゃっていただけますでしょうか」
電話対応では機械を通して声が聞こえるため、聞き取りにくいと感じることもしばしばあります。
聞き取れなかった部分はそのままにせず、必ず聞き返して確認しましょう。
相手の声が小さかったり、聞きにくかったりする場合は「お電話が遠いようなのですが」という言い方をします。
「電話が遠い」は相手の声のことを指しているわけではありませんが、「通話品質が悪い」ということを間接的に伝えることで、相手ははっきり話してくれるようになります。
担当者の不在を伝える
「申し訳ございません。あいにく〇〇はただいま外出しております。16時頃に戻る予定です」
「大変申し訳ございませんが、〇〇は休暇中でございます。次は水曜日に出社予定です」
担当者が不在の場合、まずは電話を取り次ぐことができないことをお詫びし、不在の理由と戻り予定を伝えます。
次回担当者と連絡が取れるのはいつになるのかを伝えることで、相手はこの後どうすれば良いのかを判断しやすくなります。
なお、不在の理由を伝えるときは「外出」「出張」「休暇」といった表現にとどめます。
具体的な行先や休みの理由は電話の相手が知る必要のない情報ですので、触れないようにしましょう。
クッション言葉を活用しよう
電話対応の言葉遣いをワンランクアップさせるのが「クッション言葉」です。
クッション言葉は、直接的な表現をやわらげたり、相手に対する配慮を示したりするために使われる言葉のことを指します。
コールセンターなど顧客対応部署の電話対応でよく使われる代表的なクッション言葉を目的別に紹介します。
依頼
- よろしければ
- お手数ですが
- 差し支えなければ
- お忙しいところ恐縮ですが
これらの言葉は、相手に頼みごとをする際に、相手の都合や事情への配慮を示すクッション言葉です。
「お手数ですが、ご対応をお願いできますでしょうか」
「差し支えなければ、ご用件をお伺いしてよろしいでしょうか」
このような言い方をすることで押しつけがましい印象がなくなり、相手に応じてもらいやすくなります。
お断り
- 誠に申し訳ございませんが
- ご期待にそえず申し訳ございませんが
- 残念ながら
- せっかくですが
相手からの依頼や要望、招待などを断る場合には、断ることを非常に申し訳なく思っている・残念であるという気持ちを示すクッション言葉を使いましょう。
「誠に申し訳ございませんが、ご希望の日時は予約が埋まってしまっております」
「せっかくのお申し出ですが、この度は欠席させていただきます」
これらのクッション言葉を使って丁寧にお断りすれば、相手を不快にさせることなく、今後も良好な関係を維持することができるでしょう。
反論
- 申し上げにくいのですが
- おっしゃる通りではございますが
- 差し出がましいようですが
- 出過ぎたことを申しますが
お客様の意見や提案に反することを伝える場合は、相手の気分を害さないよう配慮が必要です。
「誠に申し上げにくいのですが、今回のご提案は見送らせていただくことになりました」
「差し出がましいようですが、私なりの意見を申し上げてよろしいでしょうか」
反論する場合でも、クッション言葉を加えると相手を尊重する謙虚な姿勢を示すことができます。
これにより、相手との衝突を避け、反論を受け入れてもらいやすくなるのです。
記事まとめ
ビジネスの電話対応をブラッシュアップさせる敬語表現や基本フレーズ、クッション言葉を紹介しました。
電話対応が上手い人は、正しい敬語を使っているだけではなく、相手に配慮する気持ちや謙虚な姿勢を示す言葉を使いこなしています。
このような表現を臨機応変に使いこなせるようになると、電話対応でプロフェッショナルな印象を与え、相手の信頼感を勝ち取ることができます。
ぜひ本記事で紹介した表現を覚え、日々の電話対応業務に採り入れてみてください。