会社の新入社員研修のカリキュラムに必ずと言っていいほど含まれているのが、電話対応研修です。
しかし、いつからか固定電話を使う機会が減少し、最近の新人には電話対応に苦手意識がある人も多いと言われています。
新人向けの電話対応研修を任されたら、どのようなことを教えればよいのでしょうか。
本記事では、新人教育を担当されている方に向けて、電話対応の新人研修に盛り込むべき内容を解説します。
電話対応研修で新人に教えるべきこととは
携帯電話が普及して以来、固定電話で取次を行うことはほとんどなくなりました。
そのため「全く知らない人からの電話を受ける」「家族あての電話を取り次ぐ」といった経験に乏しいのが最近の新人の特徴ともいえます。
新人向けの電話対応教育では、まず「電話の受け方」「ビジネスにふさわしい言葉遣いと態度」「電話機の操作」を覚えてもらう必要があるでしょう。
また、一般的なマナーに加えて、社内独自の決まりごとも新人に伝える必要があります。
社内ルールは他では学べませんので、必ず研修やマニュアルで取り上げるようにしましょう。
電話対応の基本マナー
まずは職場で電話対応をするための一般的なマナーについて学習する必要があります。
初めて業務で電話対応を行う新人に、電話の取り方・名乗り方・取次対応・伝言メモの作成方法など、電話対応の各ステップでやるべきことを覚えてもらうのが目的です。
言葉遣い・態度
次に、電話対応業務で取引先やお客様と会話するための正しい言葉遣いや接客態度を学んでいきます。
ここで学んだ応対スキルは、電話対応だけではなく対面でのコミュニケーションにも応用できますので、新人時代の早い段階で基礎を固めておくことが大切です。
固定電話の使い方
会社で電話対応や取次を行う際は、固定電話を操作する必要があります。
内線通話や転送などは、家庭の電話ではあまり見かけないビジネスフォン特有の機能ですので、本番で慌てないようしっかりと操作を覚えてもらいましょう。
自社独自の言い方やルール
社内で定めた独自の対応ルールや言い方などは、一般的なマナーの本からは学べません。
口頭で伝えるだけではなく、新人が後で確認できるよう、社内向けの電話対応マニュアルにも記載しておきましょう。
マニュアル①ビジネス電話対応の基本の流れ
ここからは、電話対応の基本手順と一般的なマナーを紹介していきます。
クレーム対応などの特殊なケースを除き、会社や部署の代表電話にかかってくる電話の大半はこの流れで対応が進みます。
まずは、新人がこの手順通りに電話対応できるようになることを目指して教育・研修するのが良いでしょう。
各ステップのポイントを詳しく解説していきます。
受電
- 電話が鳴ったら3コール以内に取ることを目標にする
- 電話を取ったらまず自分が社名と名前を名乗る。「お電話ありがとうございます。株式会社△△ 営業部の〇〇です」
- 次に相手が名乗ったら、相手の社名と名前を復唱して確認し、メモする。「□□社の○○様ですね。お世話になっております」
会社の固定電話が鳴ったら業務を一時中断して、なるべく早く電話に応答しましょう。
目安は3コール以内です。
電話を取ったら、まずは受けた側が名乗り、続いて相手が名乗ります。
ここで聞いた相手の会社名や名前は、後で担当者に取り次ぐ際に必要になりますので、メモしておきましょう。
担当者に取り次ぐ
- 相手が繋いでほしい担当者の名前を言ったら、在席状況を確認する。「○○ですね。ただいま確認しますので、少々お待ちくださいませ」
- 担当者が席にいたら、誰からの電話かを伝える
- 担当者が電話に出られる場合は転送する
電話の相手が名指しした担当者が席にいればすぐに取次可能ですが、電話を転送する前に担当者の都合を確認します。
電話に出られる状況で、担当者が承諾したら電話を転送しましょう。
担当者が今は電話対応できない状況の場合は、次に説明する「担当者不在時の対応」を行います。
担当者不在時の対応
- 担当者が不在であることと、戻り予定の時間を電話の相手に伝える。「申し訳ございません、〇〇は本日出張しております。15時頃に戻る予定です」
- 戻り次第、担当者から折り返し連絡してよいか確認する。「〇〇が戻り次第、折り返しご連絡を差し上げてよろしいでしょうか」
- 折り返し希望の場合は連絡先を聞く
- その他の伝言(相手からかけ直す、他の方法で連絡する等)があれば聞く
担当者が不在で電話対応できない場合、戻り時間を伝え、折り返し連絡を提案します。
戻り時間を伝えるのは、いつくらいに連絡が取れそうなのかを相手に知らせるためです。
電話の相手が折り返しの連絡を希望する場合は、必ず連絡先を聞いておきましょう。
また、他にも担当者に伝えておくべき用件があれば聞き、メモしておきます。
終話
- 聞き逃したことがないか確認する
- 話が終わったら、かけた方が電話を切ったのを確認してから受話器を置く
電話対応を終える前に、担当者に伝えるために必要な情報をすべて聞いてあるか・聞き逃したことがないかもう一度確認しましょう。
用件がすべて終わったら電話を切りますが、こちらが先にガチャンと切るのはマナー違反です。
かけてきた相手が先に切ったことを確認してから電話を切りましょう。
伝言メモの作成
- 伝言は紙のメモ・メール・チャットなどの文字で残しておく
- 伝言メモは箇条書きを用いて見やすく簡潔にまとめる
通話が終わっても、まだ電話対応が終わったわけではありません。
電話を置いた後は、担当者に電話対応の内容を伝えるメモを作成して対応完了となります。
伝言メモのフォーマットは特に決まっていませんが、「受電日時」「電話対応した人の名前」「相手の社名・名前」「用件」「必要な対応」の5項目は必ず書くようにしましょう。
メモを見た担当者が何をすればよいかすぐわかるよう、長文でダラダラ書かず、簡潔にまとめるのがポイントです。
マニュアル②電話の敬語・言葉遣い
電話対応が苦手な方の特徴の一つに「敬語が使いこなせない」というものがあります。
これは、敬語に触れる機会が少なく慣れていないのに加えて、敬語の種類や用法をきちんと理解できていないのが原因であることが多いです。
敬語は商談やビジネスメールでも必要になるスキルですので、覚えておけば一生役に立つものです。
電話対応は敬語の正しい使い方を学ぶ良い機会ですので、最初から完璧にできなくても、実務の中で使い方を学んでいくのが良いでしょう。
この章では、電話対応に役立つ敬語の基本を解説します。
敬語の種類と使い分け
「敬語」とひとくちに言っても、実は用途や対象によっていくつか種類があります。
この中で、日常的に使う敬語として覚えておきたいのが「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つです。
尊敬語
尊敬語は、相手を敬う表現です。
電話対応においては、電話の相手に対して尊敬語を用います。
尊敬語には、次の3つのパターンがあります。
- 尊敬語として決まっている言い方を使う:「お客様は13時にいらっしゃいます」
- 「~れる」「~られる」を付ける:「社長はいつお見えになりますか」
- 「お(ご)~なる」を使う:「この絵は先生がお描きになったものですか」
謙譲語
謙譲語は、自分の動作や状態、持ち物などをへりくだる表現です。
電話対応では、自分および自社の社員に対して謙譲語を使います。
謙譲語には次の3パターンがあります。
- 謙譲語として決まっている言い方を使う:「資料を拝見しました」
- 「~ていただく」を付ける:「会議室を利用させていただきありがとうございます」
- 「お(ご)~する」を使う:「先日、御社の鈴木様にお会いしました」
丁寧語
丁寧語は、物事を丁寧に表すための敬語です。
言い回しを丁寧にするのが目的ですので、自分に対しても相手に対しても使えます。
丁寧語には次のようなものがあります。
- 語尾の「です」「ます」「ございます」:「会社に行きます」
- 言葉の頭に「お(ご)」をつける:「お料理」「ご自宅」
よく使う言葉の敬語
電話対応や接客で間違えやすいのが、尊敬語と謙譲語の使い分けです。
よく使う動詞の尊敬語と謙譲語を一覧にしましたので、言い間違えないよう整理しておきましょう。
尊敬語 | 謙譲語 | |
---|---|---|
言う | おっしゃる、言われる | 申す、申し上げる |
来る | いらっしゃる、おいでになる、見える | うかがう、参る |
見る | ご覧になる | 拝見する |
聞く | お聞きになる | うかがう、拝聴する |
知っている | ご存じ | 存じている |
いる | いらっしゃる、おいでになる | おる |
する | なさる、される | いたす |
電話対応ができない人や困った新人にはどう対処すべき?
どんなに丁寧に研修しても、新人が「電話に出ない」「対応がうまくならない」「苦手意識がなくならない」ということはありえます。
電話対応がなかなか上達しない新人がいた場合、まずは「なぜうまくいかないのか」を考え、適切な練習を行ってみてください。
電話を取らない
電話をなかなか取ることができない人は、緊張しやすかったり、過度に失敗を恐れてしまう特徴があるようです。
会社では周りに上司や同僚がいる中で電話対応しなければならないため、下手だと恥ずかしいという思いもありますね。
「おかしい対応をしてしまうかもしれない」「対応を間違ったら怒られる」などと考えすぎてしまうと、いつまで経っても電話を取れません。
いきなりお客様からの電話を取ることに抵抗がある場合は、社員同士でロールプレイングをして練習を積むのも一つの方法です。
敬語が使えない
ビジネスにおいて敬語は必要ですが、絶対ではありません。
敬語が使いこなせないために電話対応が上手くいかない場合は、まずは「敬語を使わなければいけない」「間違ってはいけない」という考え方から一度離れてみましょう。
言葉遣いは相手に失礼にならない範囲であれば、多少間違っても問題ないことが分かれば安心できるのではないでしょうか。
敬語の使い分けが難しい場合は、電話対応でよく使うフレーズを丸暗記するのも良いでしょう。
内容が聞き取れない
会社の電話対応では自分の担当以外の用件も受けるため、内容が聞き取れないのはベテランでもよくあることです。
問題は聞き取れないことではなく、聞き取れないのを放置して話を進めてしまうこと。
「一度で聞き取らなければいけない」と気負わず、「聞き取れなかった場合はその場で何度も聞き返して良い」と思えば気が楽になります。
どう対応すべきかわからない
電話で相手が言ったことに対してどう対応していいかわからない場合、電話対応の基本手順が頭に入っていないのかもしれません。
対応手順をフローチャートにして電話対応をするときに手元に置いておくと、困った時にいつでも参照できます。
電話の悩みを一気に解決するCanario(カナリオ)
電話対応業務はビジネスの基本ですから、新人時代に身につけておきたいもの。
けれども、電話対応が苦痛で仕事が嫌になったり、電話対応が下手なことを気にして悩んでしまったりしては本末転倒です。
そこで、オフィスの電話業務を代行できるサービスを導入すれば、電話対応の負荷を軽減することができます。
NECネッツエスアイが提供する「Canario(カナリオ)」は、会社の電話番を自動化できるテレフォニーDXサービス。
ワンサービスで電話業務の課題をまとめて解決できるので、「電話が多すぎて仕事が進まない」「固定電話のせいでテレワークできない」といったお悩みを抱えている企業の業務を効率化できます。
Canario(カナリオ)でできることは次の通りです。
- 名前取次:担当者名を自動認識して電話を転送
- 伝言テキスト化:不在時の伝言を自動テキスト化
- 営業時間設定:営業時間外の電話に自動対応
- 一斉着信:担当者不明の電話はチームメンバーを一斉呼び出し
- 自動対応:個人名を指定しない電話に自動音声で対応
- 秘匿発信:個人の携帯からでも会社の番号で折り返し可能
記事まとめ
本記事では、新人の教育や研修を担当している方に向けて、電話対応研修で扱いたいこと・電話対応マニュアルに記載したい内容を解説しました。
固定電話離れが進む今、電話対応スキルを一定のレベルに上げるのはコツがいるかもしれません。
しかし、最近では電話対応を社員が行わず、システムで自動化する企業も増えています。
電話対応業務のあり方自体を見直すことで、働き方も大きく変えることができることでしょう。