2020年代のマーケティングのトレンドとして「オムニチャネル戦略」が挙げられます。
この記事では、オムニチャネルの概要と小売業界における2020年代の展望をまとめています。
オムニチャネルの導入によって成果をあげている小売企業の事例も紹介しているので、2020年代におけるマーケティング戦略の立案でお悩みの企業様はぜひ参考にしてみてください。
オムニチャネル戦略の概要と2020年代の展望
まずは、オムニチャネルの概要と類似する手法との違いを詳しく見ていきましょう。
また2020年代におけるマーケティングのトレンドについても解説しているので、合わせて参考にしてみてください。
オムニチャネルとは
オムニチャネル(Omnichannel)とは、企業と顧客との接点や販売経路を統合し、顧客へ総合的なアプローチを行うマーケティング手法のことです。
チャネルの種類は様々で、主なものに実店舗・カタログ・Web・ECサイト・SNS・アプリ等が挙げられます。
以前は広告やチラシから店舗へ誘導する事例が一般的でしたが、スマートフォンが普及した2020年代においては、顧客1人1人のニーズに合わせたチャネルの展開がカギを握っていると言えるでしょう。
マルチチャネルやクロスチャネルとの違い
オムニチャネルと類似する手法として、マルチチャネルやクロスチャネルといったものがあります。
これらのマーケティング手法の概要と、オムニチャネルとの違いは以下の通りです。
オムニチャネル | マルチチャネル | クロスチャネル | |
---|---|---|---|
概要 | 複数の接点を同一のユーザーがシームレスに利用する | 複数の接点を別々のユーザーが利用する | 複数の接点を同一のユーザーが使い分ける |
顧客との接点 | 複数あり、全体がシームレスに連携されている | 複数あるものの各チャネルは独立している | 複数あり、部分的に連携されている |
顧客側の認識 | 全体を1つのブランドとして認識 | 独立した複数のタッチポイント | 同一ブランドにおける複数のタッチポイント |
2020年代は“チャネル連携”が主流に
2020年代に入ってオムニチャネルが注目を集めている理由として、消費行動の多様化が挙げられます。
スマートフォンが普及して購買の選択肢が広がったことで、ショールーミング(実店舗で商品を確認し、Webで購入すること)やウェブルーミング(Web上で情報を収集し、実店舗で購入すること)が一般的となりました。
企業においてもオンライン・オフラインを統合した新たな施策の導入が求められるようになり、こうした中で台頭してきたのが、店舗とECの境界線をなくして一貫性のある販売活動を目指す「オムニチャネル」という考え方です。
チャネル間での連携ができないマルチチャネルや、連携が部分的となるクロスチャネルと比較して、オムニチャネルは顧客満足度を高めやすい効果的なマーケティング手法だと言えるでしょう。
また2020年代はコロナ禍の影響もあり、デジタル技術が加速度的に進化しています。
これによってオムニチャネルの実現に欠かせない顧客情報・在庫情報の連携や一元化をシステムとして実現できるようになった点も要因の1つと言えるでしょう。
2020年代におけるアプリの役割
2020年代に入ってオムニチャネルの導入が拡大する中で、アプリが持つ役割にも変化が生まれています。
続いて、2020年代におけるアプリの目的や役割について詳しく見ていきましょう。
情報配信ツールとしての利用が始まり
元々、多くの店舗では情報配信のツールとしてアプリを導入していました。
情報配信の役割はそれまでメールマガジンが担っていましたが、プッシュ通知等の機能を利用できるアプリの方が顧客へ情報を届けやすいことから、次第にアプリの利用が主流となっていったのです。
企業のブランディングにも活用
スマートフォンの普及によってアプリの利用が一般的になると、ポイントカードの代わりやクーポン配布のツールとしてアプリを活用する事例が増えはじめました。
この取り組みにより、利用者がポイントカードやクーポンを紛失してしまうというリスクがなくなり、店舗の利用率や顧客満足度の向上に貢献しています。
2020年代は顧客の行動履歴の取得が主目的に
2020年代に入ってからは、顧客の行動履歴を収集・分析するためのツールとしてもアプリが活用されています。
店舗・ECの利用頻度やクーポンの利用履歴等をデータ化することで、顧客1人1人に最適化したマーケティング施策の実施が可能となるためです。
ECやアプリはオムニチャネル化を進めるうえで欠かせない要素となりつつあり、今後も情報収集を目的としたアプリの活用事例は増えていくと考えられるでしょう。
小売企業の成功事例を紹介
ここからは、オムニチャネルを導入して成果をあげている小売企業の事例をいくつか紹介していきます。
事例①【スーパー】アプリを活用した店舗誘導で売上向上
スマホアプリを活用したオムニチャネルの推進で実店舗の売上を向上している小売企業の事例です。
こちらの事例では、売り場に設置されている商品POPやチラシをアプリに取り込むことで、その商品を使ったレシピの提案を受けられるというサービスが導入されています。
商品の具体例な活用方法をその場でチェックできることから、実店舗への誘導やクロスセルによる売上向上に役立てられています。
事例②【生活雑貨店】実店舗とECの連携強化で顧客を囲い込み
モバイルアプリの開発・提供によって顧客の囲い込みを実践している小売企業の事例です。
アプリから通販を利用したり、近隣店舗を検索したりできる他、実店舗での会計時にアプリを提示することで、事前登録した住所へ商品を配送できるといったサービスも運用されています。
また店舗とECのポイントシステムを共通化したことにより、顧客の囲い込みやロイヤルカスタマーの育成にも貢献しています。
事例③【アパレル】オンライン接客の導入でEC売上145%を達成
販売チャネルの拡大によってEC売上を前年比145%まで向上させた小売企業の事例です。
こちらの事例では、コロナ禍で減少した店舗売上の回復を目的として、SNSでのライブ配信やオンライン接客ツールによるフィッティングサービス等の新たな販売チャネルを導入しました。
オンライン接客の効果でEC売上が大きく伸びた他、配信を通じて店舗への来店数も伸ばしており、実店舗・ECの双方で顧客単価向上に成功した好事例です。
オムニチャネルの仕組みと国内の取り組み事例まとめ
- オムニチャネルは企業と顧客との接点や販売経路を統合し、顧客へ総合的なアプローチをかける戦略のこと
- 一貫性のあるマーケティングを実現するオムニチャネルの考え方は、消費行動の多様化が進む2020年代において主流となりつつある
- オムニチャネルの推進とともに、アプリの活用目的・事例の傾向も情報発信から情報収集へと変化している
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