コロナ禍を契機としてライフスタイルやビジネスのあり方が大きく変化する中、小売・流通業界では店舗DXの推進が活発になっています。
この記事では、小売業界における店舗DXの市場規模の推移と導入の必要性・メリットなどを解説。
店舗DXの取り組み事例もいくつか紹介しているので、市場規模の推移と合わせてチェックしてみてください。
小売・流通業界における店舗DXの市場規模
まずは、小売・流通業界における店舗DXの市場規模について、国内と世界双方の推移を見ていきましょう。
店舗DXの世界市場規模は2027年までに19.9%の拡大が見込まれる
小売業界における店舗DXの世界市場規模は、2020年から2027年にかけて19.9%以上拡大するという予測が出されています。
世界の実質GDP成長率予想の1位に名前の挙がっているインドでは、2017年の電子取引部門の売上が385億米ドルであったのに対し、2024年には2,000億米ドルまで成長すると見込まれています。
また2018年の小売電子商取引の売上高が1兆5,200億米ドルと推定される中国では、2023年までに4兆900億米ドルにまで成長すると言われており、小売業界のDX市場規模が世界的に拡大していることが伺えるでしょう。
日本はやや遅れているものの、DX全体の市場規模は2019-2020年度で27.2%拡大
一方、日本は店舗DXの導入がやや遅れており、国際経営開発研究所(IMD)が発表する「世界デジタル競争力ランキング」においては27位という位置付けです。(参考:韓国8位・台湾11位・中国22位)
世界的に見ると日本は出遅れている印象がありますが、DX全体の市場規模は大幅に拡大しており、2019年度から2020年度にかけてのわずか1年で27.2%も伸びています。
国内の市場規模は2030年までに2020年度比5.6倍になる見通し
市場調査会社が発表したデータによると、日本国内における小売業界のDX市場は2030年までに2,455億円に達する見込みとなっています。
これは2020年度比の5.6倍にあたる金額で、その他の業種と比較しても大幅な伸びであることが分かるでしょう。
2020年度 | 2030年度予測 | 2020年度比 | |
---|---|---|---|
製造 | 1,620億円 | 5,450億円 | 3.4倍 |
流通・小売 | 441億円 | 2,455億円 | 5.6倍 |
金融 | 1,887億円 | 6,211億円 | 3.3倍 |
医療・介護 | 731億円 | 2,115億円 | 2.9倍 |
交通・運輸 | 2,780億円 | 1兆2,740億円 | 4.6倍 |
不動産 | 220億円 | 970億円 | 4.4倍 |
小売業界が店舗DXに取り組むメリットと必要性
続いて、小売業界における店舗DXのメリットと必要性について詳しく見ていきましょう。
店舗DXを推進するメリット
店舗DXの実現によって期待できるメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
メリット | 具体的な店舗DX事例 |
---|---|
顧客満足度の向上 | キャッシュレス決済の導入で会計手段を充実させ、顧客の利便性を高める など |
顧客の囲い込み | 店舗アプリを開発し、限定セール開催やクーポン発行を行うことで集客力を向上 など |
業務効率化 | 本支店間のやり取りにグループウェアを採用し、情報処理の時間を短縮 など |
人材配置の効率化 | 電子荷札・セルフレジを導入し、レジスタッフの不足を解消 など |
人為的ミスの削減 | セルフオーダー端末を導入し、注文の聞き間違いといったスタッフのミスを除外 など |
コロナ感染対策 | オンライン接客を導入し、自宅から店舗品質の接客を受けられるよう仕組み化 など |
またこれらの取り組みによって店舗DXが実現されれば、成約率向上や口コミ増加による新規顧客獲得といった副次的なメリットも見込めるようになるでしょう。
商品・サービスは“買う”時代から“借りる”時代へ
近年ではサブスクリプションやシェアリングエコノミーなど、自分で所有することなく商品・サービス利用できるシステムが相次いでリリースされています。
消費者もこれらのシステムを当たり前に利用しており、商品やサービスは “買う”時代から“借りる・シェアする”時代に変化してきていると考えられるでしょう。
一方で、消費者の選択肢が多様化するほど、小売企業の商品・サービスが売れにくくなるという課題もあります。
今後は店舗を主軸とした従来のマーケティングから脱却し、新たな顧客体験の創出や他店との差別化を意識した店舗DXが重要になると言えるでしょう。
コロナ禍で変化する消費者のニーズ
小売業界における店舗DXの市場規模が拡大している背景には、2019年末から続く新型コロナウイルスの存在があります。
コロナ禍以降、不要不急の外出や対面サービスの利用を控える動きが大きくなり、店舗販売を主軸としていた小売企業の多くが客足減少や売上低迷といった課題を抱える事態となりました。
一方で、ECサイトなどの通販需要が大きく伸びていたことから、店舗販売に代わる新たな販路の獲得に向け、ECサイトに注力する企業が増えたのです。
今後は店舗DXの有無によって競争力の差が大きく開いていくと予想されるため、他社から遅れを取らないためにも、早急な店舗DXの推進が必要になると言えるでしょう。
国内小売企業のDX事例を紹介
ここからは、店舗DXの実現に向けた取り組みを行っている国内の小売企業の事例をいくつかご紹介します。
電子荷札×セルフレジの導入で人件費を削減
ある大手のアパレル企業では、電子荷札とセルフレジの活用による人件費の削減に成功しています。
電子荷札を用いることで瞬間的に商品の種類・価格を読み込み、更にセルフレジによって自分のペースで支払いができるというのが特徴。
セルフレジの市場規模は2019年時点で1,415億円でしたが、2030年には2,975億円まで拡大する見通しとなっており、今後も導入企業は増えていくと予想されるでしょう。
電子棚札システムの活用で業務効率改善
ある家電量販店では、「電子棚札」のシステムを全店舗に導入することで、大幅な業務効率化を達成しています。
価格変更やセール情報などを一括で更新できる電子棚札の導入により、過去の増税時には価格変更をほぼ0時間で完了できたなど、業務効率の改善を実現しました。
電子棚札の市場規模は世界的にも拡大しており、2021年は約8億米ドルであったのに対し、2026年には約21億米ドルにまで拡大すると予測されています。
VR空間でのショールーム開催とオンライン接客
不動産やインテリア業界では、VR技術を活用したオンラインショールームの開催に注目が集まっています。
VRによって仮想空間にショールームを再現することで、自宅にいながらも実際に会場を訪れているような体験を提供できるのが特徴。
またオンライン接客ツールを組み合わせて現地スタッフによる対応を可能にしているケースも多く、成約率や顧客満足度の向上に繋がっています。
そして、このオンライン接客ツールも市場規模を大きく伸ばしているツールの1つです。
2018年にIT調査会社が公開したデータによると、オンライン接客の市場規模は2016年時点で17億円に達しており、これは前年度比の142.9%にあたります。
その後も市場規模は拡大傾向が続いているため、オンライン接客は店舗DXの代表的な手法として確立されていくことが予想されるでしょう。
小売業界のDX市場規模と導入の必要性まとめ
- 小売業界における店舗DXの市場規模は国内・世界ともに拡大傾向となっている
- コロナ禍で変化するライフスタイルに適応していくためにも、小売企業のDX推進は不可欠と言える
- すでに店舗DXの取り組みを行っている企業では、人材配置や業務の効率化といった成果をあげている
NECネッツエスアイでは、市場規模を大きく伸ばしているオンライン接客ツールをはじめ、小売企業の店舗DXに役立つ様々なソリューション・サービスを提供しています。
導入後の運用に関する支援なども可能ですので、DXのやり方でお悩みの企業様はぜひ一度ご相談ください。
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