日本でも導入が進みつつあるオムニチャネルですが、この「オムニチャネル」という概念を生み出したアメリカでは、すでに10年以上も前からチャネル統合の取り組みが行われています。
オムニチャネルマーケティングのトレンドはコロナ禍の影響で強まっており、アメリカ企業はもちろん、アメリカのECサイト等に出店する日本企業においても重要な考え方になると言えるでしょう。
この記事では、アメリカにおけるEC市場の規模と、オムニチャネル化によって成果をあげているアメリカ企業の事例を紹介していきます。
アメリカにおけるECの市場規模
まずは、アメリカのECサイトの市場規模と、アメリカのECにおける特徴について詳しく見ていきましょう。
アメリカのEC市場は世界第2位
世界のBtoC-ECの市場規模ランキングは以下のようになっています。(※2020年度の資料)
国 | EC市場規模(単位:億USドル) | |
---|---|---|
1位 | 中国 | 22,970 |
2位 | アメリカ | 7,945 |
3位 | イギリス | 1,804 |
4位 | 日本 | 1,413 |
5位 | 韓国 | 1,106 |
引用元:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)
アメリカのEC市場規模は世界第2位となっており、3位以下の国に大きな差をつけていることが分かります。
1位の中国とは2倍以上の開きがあるものの、今後も大きな成長が見込まれると言えるでしょう。
アメリカのECサイトの特徴
アメリカのECの特徴は、高いシェア率を誇るECサイトが業界ごとに存在しているという点です。
日本でも利用者の多いオールジャンル型の大手ECサイトをはじめ、アメリカには業界専門のECサイトが複数存在しています。
またこうした業界専門のECサイトは実店舗を構えているケースが多く、オンラインとオフラインのあらゆる販売経路を活用したオムニチャネル型のマーケティングが広く普及していると言えるでしょう。
市場拡大の要因
アメリカのEC市場規模が拡大している背景には、キャッシュレス決済の普及も挙げられます。
アメリカのキャッシュレス決済比率は2015年時点で45%に達しており(日本:18.4%)、クレジットカードやデビットカード等を利用した決済方式に抵抗を持つユーザーが少ないことが分かります。
またキャッシュレス決済が普及したことで、ECでの決済もより簡易化され、ユーザー側の利便性向上とともに市場規模も拡大していったと考えられるでしょう。
オムニチャネル化に成功したアメリカ企業の事例
続いて、店舗・ECのオムニチャネル化によって高い成果をあげているアメリカ企業の事例を紹介していきます。
【百貨店】早期のオムニチャネル化で顧客の囲い込みを実現
2010年代よりオムニチャネルを導入し、現在まで高い成果をあげ続けているアメリカの大手百貨店の事例です。
こちらの大手百貨店では、オムニチャネル戦略の施策として以下のような取り組みを実施してきました。
- 店員へのモバイル機器の配布
- RFID(無線ICタグ)の採用
- 店舗・EC間の在庫情報一元化 等
これらの取り組みによって、例えば店舗で商品が欠品している場合にその場でネット在庫を確認して手配するといった対応が可能となり、店舗・ECの双方で売上向上を実現しました。
また近年ではオンラインで購入した商品を店舗で受け取れるようにする等の取り組みも進められており、オムニチャネルの先駆者として今後の動向にも注目が集まっています。
【小売(総合)】EC事業の強化でユーザー数を拡大
店舗売上の不調からオムニチャネル型のサプライチェーンへシフトしたアメリカの大手小売企業の事例です。
こちらの企業では、店舗とECの在庫管理を一元化し、多数の在庫を抱える必要がある商品はECに集約する等の取り組みを実施しています。
また2015年には会員制ECサイトの運営企業を買収しており、これによって都市部やミレニアム世代の利用者数を伸ばしたことで、現在は世界最大手のECサイトに次ぐ会員数を記録しています。
【小売(IT機器)】サービスのオムニチャネル化で顧客体験を向上
オムニチャネル戦略を製品やサービスに取り入れることで顧客満足度の向上に繋げている事例です。
こちらの企業では、音楽等のコンテンツ配信サービスで使用する会員情報を軸とした顧客管理を行っています。
顧客情報をIDで一元管理し、店舗とECにおけるメンテナンス情報等を連携させることで、製品のアップデートや個別のロイヤルティプログラムの配信を可能としています。
日本でもオムニチャネル戦略の導入が加速
アメリカでは大手ECサイトをはじめ、多くの企業がオムニチャネル化を進めていますが、日本におけるオムニチャネルの市場規模はどのようになっているのでしょうか。
ここからは、日本のオムニチャネル市場の現状と、オムニチャネル化を進める際のポイントについて解説していきます。
日本のEC市場規模
以下は、ある調査会社が発表した“日本の小売業界におけるオムニチャネルコマース市場とBtoC-EC市場規模”の結果と予測をまとめたものです。(※2020年度の資料)
オムニチャネルコマース市場(兆円) | BtoC-EC市場(兆円) | |
---|---|---|
2017年 | 52.2 | 17.6 |
2018年 | 54.4 | 18.1 |
2019年 | 57.5 | 19.5 |
2020年 | 61.0 | 20.8 |
2021年 | 64.5 | 22.1 |
2022年 | 68.2 | 23.4 |
2023年 | 72.2 | 24.9 |
2024年 | 76.3 | 26.3 |
2025年 | 80.6 | 27.8 |
引用元:「ITナビゲーター2020年版」 「5G」サービスが本格スタート リアルとデジタルの融合で関連市場が拡大 ~2025年までの市場トレンドを予測~
2020年時点のオムニチャネル市場の規模は約61兆円となっており、こちらの資料では2025年に80兆円を上回る見通しとなっています。
アメリカと比較するとその規模は小さいと言わざるを得ませんが、日本国内でも着実にオムニチャネル化の傾向が強まっていると言えるでしょう。
日本でオムニチャネル化を成功させるポイント
オムニチャネルによるマーケティングを成功させるためのポイントとして、以下のような点が挙げられます。
- オムニチャネル化の目的やゴールを設定し、有効な施策を絞り込む
- カスタマージャニーマップを作成して最適なアプローチ方法を設定する
- 各チャネルのブランドイメージを統一し、チャネルごとの違いを感じさせない環境を整備する
- チャネルごとに顧客を奪い合うのではなく、各チャネルが協業して企業全体の売上向上を目指す
- オムニチャネル化に伴うスタッフの評価制度の見直し
- 顧客データや在庫データを一元管理するためのツール・システム活用 等
なお導入すべきツールやシステムは企業が設定するゴールによって異なるため、はじめに全体で共通の目標を設定し、目標の達成に向けて必要なシステムを選定していくことが大切です。
記事まとめ
- アメリカのEC市場規模は8,000億USドル近くまで拡大し、背景にはキャッシュレス決済やオムニチャネル化の普及が挙げられる
- アメリカの大手百貨店等では2010年代からオムニチャネル施策が取り入れられており、現在まで売上向上等の高い成果をあげている
- 日本でもオムニチャネル化の傾向が強まっており、2025年には市場規模が80兆円を超える見通しとなっている
アメリカと比較してオムニチャネル化が遅れている日本ですが、今後は大企業を筆頭にオムニチャネルを導入する企業が増えていくと予想されるでしょう。
NECネッツエスアイでは、オムニチャネル化に役立つ様々なソリューション・サービスを提供しているので、推進方法やツール選びでお悩みの企業様はぜひ一度ご相談ください。
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