DXとは、ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることです。
これを自治体に当てはめると、デジタル技術やデータを活用した行政サービスにより住民の利便性を向上させるとともに、自治体職員の業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが自治体DXの意義であると言えます。
自治体DXを推進するうえで、背景・課題とはどのようなものがあるのでしょうか。
背景や課題を知るには、総務省から公表されている「自治体DX推進計画」や、各都道府県・市区町村から公表されている方針に関する文書などが手掛かりとなります。
背景には「少子高齢化」「過疎」「アナログ文化」などの問題意識があるようです。
「自治体DX推進計画」は、より詳細なガイドライン的な文書である「自治体DX推進手順書」で進め方が具体的に示されています。
最新のこれらの文書に基づいて、自治体DXを推進する背景と課題についてまとめました。自治体職員の方でDXを推進されている方は参考になさってください。
自治体DXの計画
自治体DXは総務省がリードし、都道府県や市区町村を支援して進められています。
総務省では、「自治体DX推進計画」を2020年に公表しており、この文書では自治体DXの全体像について記述しています。
この文書において、重点取組事項は次のように設定されています。
- 自治体の情報システムの標準化・共通化
- マイナンバーカードの普及促進
- 自治体の行政手続のオンライン化
- 自治体のAI・RPAの利用推進
- テレワークの推進
- セキュリティ対策の徹底
また、総務省ではこれに先立ち、2017年に「自治体戦略2040構想研究会」を開始しています。
この研究会の見通しによれば、わが国には少子高齢化・労働人口の減少という危機が迫っており、これに対応するため、自治体は行政の在り方を大胆に更新する発想が求められています。
この課題意識の中、総務省はデジタル活用を行い、効率的に行政事務を進められる「スマート自治体」の提唱・先進事例の共有など、報告書の形で継続的に公表してきました。
2040年頃に65歳以上となる団塊ジュニア世代に比べ、その頃に20歳代前半となる人の数は半分程度にとどまります。
こうした時代においては、現状の自治体業務の進め方ではとても高齢者を支える行政サービスを行うことができないという危機感が、上記の研究会の議論を経てDX推進計画に反映されています。
また、2019年12月20日には、国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直すデジタル・ガバメントの実現を目指して「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定されました。
ここでは政府情報システムの共通インフラ化・マイナンバーの活用・ワンストップサービス化の推進等が盛り込まれています。
そこで、自治体DX推進計画にもデジタル・ガバメント推進計画を土台とし、システムの標準化といった具体的な方策が盛り込まれています。
国全体をあげて、デジタル化を進める中で自治体DXが強力に推進されることとなっているのです。
自治体DXが求められる背景・行政における課題
自治体DX推進計画は、冒頭でも紹介した通り、具体的には以下の6つが重点取組事項となります。
- 自治体の情報システムの標準化・共通化
- マイナンバーカードの普及促進
- 自治体の行政手続のオンライン化
- 自治体のAI・RPAの利用推進
- テレワークの推進
- セキュリティ対策の徹底
各自治体は、すでに都道府県レベル・市区町村レベル双方で、それぞれの背景・課題を認識し、自治体DXに取り組んでいます。
AI・RPAの利用推進は、大都市圏で数年にわたる取組みがすでに行われ先進事例も各方面で紹介されているほどです。
では、地方自治体は具体的にどの様に背景をとらえ、課題を認識しているのでしょうか。
事例からみる課題意識
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
自治体DX先進事例を生み出す自治体として知られているある県では、DXを進める背景について、以下のように説明しています。
人口減少・少子高齢化による社会構造の変化によって生じる労働力不足や地域産業の衰退, 生活交通や医療・福祉など県民の暮らしに直結する様々な社会課題に直面している。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、非接触や3密回避の「新しい生活様式」への対応やビ ジネスの在り方の変革が求められている。
(中略)
一方で,令和3年2月に実施した県内企業等に対するDX実態調査において,デジタル技術 の活用を含めたビジネス変革の必要を感じ、既に取り組んでいる、と回答した割合が約2割にとどまっており、DXに対する理解・実践意識の醸成が十分でないと認識している。
また、県・市町においては、DX推進体制の整備や、デジタル技術を活用した行政サービス の向上、地域課題の解決に向けた取組など、徐々にDXの取組が進みつつあるが、今後一層の 質的・量的な拡大が求められている。
この説明のとおり、自治体でのDXを進める背景には以下の課題意識があります。
- 労働力人口の減少
- 地域ビジネスの振興
- 新しい生活様式への対応
労働力人口の減少は、地方の過疎地域にとって、より深刻な状況となり得ることから、以下のようにDXが位置づけられているケースもあります。
DXは、過疎地域において、担い手不足が深刻化する中で、条件不利性を改善し、少ない人口で地域経済・社会を存続・発展させていくための手法として有効であることから、地域 の課題解決に積極的に活用していくことが重要です。
このように、地域防災には、デジタル技術の活用が急務とされており、各地において防災DXを自治体DXの一部として重視する動きも見られています。
例えば、水害・地震などの災害が発生する現場でのIoT技術の活用や、バックオフィスでの情報収集業務にSNS・RPA・AI等の活用などがあげられます。
自治体DXは、労働力人口の減少・過疎への対応・コロナ禍の新しい生活様式への適応・産業振興対策・魅力ある地域づくりのための活用など、事務系の行政サービスへの技術活用だけでなく、幅広い課題が背景にあり、各地で推進されています。
自治体のDX推進はテレワークから始めよう
自治体DX推進計画に記述された重点取組の中でも、テレワークの推進は、ICTの活用により業務の効率化が図られることで行政サービスの向上が期待できるとともに、新型コロナウイルス対策としても有効な手段となっています。
少子高齢化が進行する中、自治体の業務効率が上がらないと、自治体の職員は今後疲弊してしまいます。
業務負担を合理的に軽減し職員の将来への不安を取り除くことで、自治体の採用にも好影響を与え、より長期的にITシステムを支える人材を自治体内で確保することができますので、テレワークの推進は非常に重要な取組みです。
テレワークで職員の負担が減ると、自治体DXを推進するメリットが職員にも感じられ、効果は大きくなるでしょう。
テレワークは、自治体DXの起爆剤となり、今後の自治体DX成功のカギを握ると考えられています。
記事まとめ
自治体DXの背景と、行政の課題について、地方自治を所管する総務省の文書や報告書、地方自治体の方針を中心にまとめて紹介しました。
少子高齢化による労働力不足・人材不足を解消するためには、外部人材を登用することも考える必要があるでしょう。
しかし、より長期的には、職員の業務生産性を高めることで内部の戦力を増やすことができます。そのための解決策として、テレワークの環境を整えることはカギになる取り組みといえるでしょう。
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