人的・財政的な負担の軽減や行政サービスの効率化等を目指し、全国の自治体における情報システム標準化また、共通化が実施されることとなりました。
この記事では、システム標準化の概要と、対象となる20業務の一覧を掲載しています。
標準化までのスケジュールや政府の取り組み等も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
自治体情報システム標準化の対象となる20業務をチェック
まずは、自治体情報システム標準化が行われることとなった背景や、標準化による効果等を解説します。
また合わせて、標準化の対象となる20業務の一覧やシステム移行までのスケジュールについてもチェックしていきましょう。
自治体情報システムの現状と目標
これまで自治体では、個別にシステム開発・運用を行ってきたため、維持管理や改修にかかる負担が大きかったり、自治体間での連携が取りづらかったりする等の課題がありました。
またこのような情報システムの差異の調整が負担となり、クラウド利⽤が円滑に進まず、住⺠サービスを向上させる取組を普及させることが難しい状況にあります。
このような状況を踏まえて、標準準拠システムの利⽤を義務付ける 「地⽅公共団体情報システムの標準化に関する法律」が2021年2月に成⽴。
累次の閣議決定において検討されてきた17業務が情報システム標準化対象事務となりました。
その後この17業務以外に、⼾籍・⼾籍の附票・印鑑登録の3業務が加えられ、現在では20業務がシステム標準化対象事務となっています。
20業務のシステム標準化が実現されれば、全国の自治体で同品質のサービス提供が可能となる他、自治体間の連携強化や業務効率化といった効果も期待できるでしょう。
またシステム運用にかかる人的・財政的負担を軽減できることで、人材不足の解消や行政サービスの質向上等も見込まれます。
※標準準拠システムとは、データ要件・連携要件に関する標準化基準に適合した情報システムを指します。
政令で定めるシステム標準化対象事務
地⽅公共団体情報システムの標準化に関する法律に定められているシステム標準化の対象20業務は、住民基本台帳関連業務や児童/子育て支援関連業務をはじめ以下のとおりです。
①児童⼿当
- 児童⼿当⼜は特例給付の⽀給に関する事務
②⼦ども・⼦育て⽀援
- ⼦どものための教育
- 保育給付若しくは⼦育てのための施設等利⽤ 給付の⽀給、特定教育・保育施設、特定地域型保育事業者若しく は特定⼦ども
- ⼦育て⽀援施設等の確認⼜は地域⼦ども
- ⼦育て⽀ 援事業の実施に関する事務
③住⺠基本台帳
- 住⺠基本台帳に関する事務
- 中⻑期在留者の住居地の届出⼜は外国⼈住⺠に係る住⺠票の記 載等についての通知に関する事務
- 特別永住者の住居地の届出に関する事務
- 個⼈番号の指定に関する事務
- 住居表⽰に係る事項の通知に関する事務
④⼾籍の附票
- ⼾籍の附票に関する事務
⑤印鑑登録
- 印鑑に関する証明書の交付に関する事務
⑥選挙⼈名簿管理
- 選挙⼈名簿⼜は在外選挙⼈名簿に関する事務
- 投票⼈名簿⼜は在外投票⼈名簿に関する事務
⑦、⑧、⑨、⑩ 地⽅税
- 個⼈の道府県⺠税(都⺠税を含む)若しくは市町村⺠税(特別区⺠税を含む)、法⼈の市町村⺠税、固定資産税、軽⾃動⾞税、 都市計画税⼜は森林環境税の賦課徴収に関する事務
⑪⼾籍
- ⼾籍に関する事務
⑫就学
- 就学義務の猶予若しくは免除⼜は就学困難と認められる学齢児童 若しくは学齢⽣徒の保護者に対する必要な援助に関する事務
- 学齢簿に関する事務
- 就学時の健康診断に関する事務
⑬健康管理
- 健康教育、健康相談その他の国⺠の健康の増進を図るための措置 に関する事務
- ⺟性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その 他の措置に関する事務
- 予防接種の実施に関する事務
⑮⽣活保護
- ⽣活保護の決定及び実施⼜は就労⾃⽴給付⾦若しくは進学準備 給付⾦の⽀給に関する事務
⑭児童扶養⼿当
- 児童扶養⼿当の⽀給に関する事務
⑯障害者福祉
- 障害児通所給付費、特例障害児通所給付費、⾼額障害児通所 給付費、肢体不⾃由児通所医療費、障害児相談⽀援給付費⼜ は特例障害児相談⽀援給付費の⽀給に関する事務
- 特別児童扶養⼿当、障害児福祉⼿当⼜は特別障害者⼿当の⽀ 給に関する事務
- 福祉⼿当の⽀給に関する事務 ・⾃⽴⽀援給付の⽀給に関する事務
⑰介護保険
- 介護保険に関する事務
⑱国⺠健康保険
- 被保険者の資格の取得若しくは喪失、保険給付の実施⼜は保険 料の賦課及び徴収に関する事務
⑲後期⾼齢者医療
- 被保険者の資格の取得若しくは喪失⼜は保険料の徴収に関する事務
⑳国⺠年⾦
- 被保険者の資格の取得若しくは喪失、年⾦である給付若しくは⼀時⾦の⽀給、付加保険料の納付⼜は保険料の免除に関する事務
※その他
- 上記20業務に附帯する事務
引用元:自治体情報システムの標準化・共通化について|総務省自治行政局デジタル基盤推進室
システム開発・関連事業のスケジュール
20業務のシステム標準化に向けたシステム開発・運用スケジュールは以下の通りです。
スケジュール | |
---|---|
ガバメントクラウドの整備 | 対応方策や課題の検討(2020~2023年度)/利用環境の整備・運用(2020~2025年度) |
ガバメントクラウドの提供 (地方公共団体関係) |
ガバメントクラウド提供(2020~2025年度) |
地方公共団体 | ガバメントクラウド利用団体の順次拡大(2020~2025年度)/標準準拠システムへの移行(2023~2025年度) |
システム標準化に向けた整備 | 法案提出(2020~2021年度)/仕様策定・調整(2020年~2022年度)/標準準拠システム開発(2021~2022年度) |
最終的には、2025年度までに国内全ての地方公共団体が標準準拠システムへ移行することが目標となります。
また標準仕様書やガバメントクラウドへの移行は、随時政府によって検討されています。
自治体における20業務のシステム標準化をしっかりと国の動きと関連させるためにも、スケジュールに余裕をもって取り組む必要があります。
20業務のシステム標準化に向けた政府の取り組み
続いて、対象20業務の情報システム標準化に伴う政府の取り組みや支援について見ていきましょう。
ガバメントクラウドの提供・利用拡大
デジタル庁では、政府共通の情報システム基盤および機能を提供するクラウドサービス(IaaS・PaaS・SaaS)の利用環境となる「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」の整備が進められています。
システム標準化の要件を満たしたアプリケーション・サービスがガバメントクラウド上に構築され、その中から自治体ごとに必要なものを選択するという仕組みです。
ガバメントクラウドを活用することで、システム運用にかかるコストの削減やサービス切り替えの効率化、自治体間のセキュリティ水準の統一といったメリットが期待されます。
デジタル基盤改革支援基金
デジタル基盤改革支援金とは、自治体のシステム標準化・共通化やマイナポータル等のオンライン手続きの推進に伴う費用を補助するための助成金です。
デジタル基盤改革支援基金の補助対象となる事業は以下の通りです。
助成金の対象 | 助成金の予算 | 助成金額 |
---|---|---|
自治体のシステム標準化や共通化 | 約1,509億円・2025年度まで | 費用の全額 |
マイナポータル導入などのオンライン手続き推進 | 約250億円・2022年度まで | 費用の半額 |
次期自治体情報セキュリティクラウドへの移行 | 約29億円・2022年度まで | 費用の半額 |
また自治体の情報システム標準化・共通化にかかる事業の内、補助対象となる経費には以下のようなものがあります。
- 現行システムの分析やシステム更新時期等を踏まえた移行計画作成等に要する経費
- 文字情報基盤文字との同定作業やデータ移行等に要する経費
- ガバメントクラウド上で提供される標準準拠システムの稼働環境への接続設定等に要する経費
- 標準準拠システムにかかる一連のテストや操作研修の実施等に要する経費
- 標準準拠システムと関連システムとの円滑な連携に要する経費
- 標準準拠システムへの移行に伴う契約期間中の既存システムの整理に要する経費
なお助成金の支給率等、自治体の規模によって条件が異なるため申請前に確認するようにしましょう。
地方自治体の現状と今後の運用イメージまとめ
現在のスケジュールでは、2025年までに対象20業務の標準準拠システムへの移行が予定されています。
標準準拠システムへの移行には、計画立案・システム選定・移行テストなど様々なステップが必要となるため、早い段階から推進体制の立ち上げや業務の洗い出し等を進めていくことが大切です。
NECネッツエスアイでは、現状分析からICT選定・運用までを総合的に支援する「自治体DXコーディネートサービス」を展開しています。
対象20業務の情報システム標準化に向けた準備が遅れている・何から始めれば良いか分からないといった場合は、ぜひ一度NECネッツエスアイまでご相談ください。