ICT技術の進歩や行政サービスの高度化といった背景から、今後は予測・予防型のサービスや個人個人にカスタマイズされた情報提供サービス等へのデータ利活用が期待されています。
この記事では、自治体が抱える課題とデータ利活用による効果・メリット等を解説します。
データ利活用による取り組みを行っている自治体の事例も紹介しているので、自治体関係者様はぜひ参考にしてみてください。
自治体におけるデータ利活用の必要性
まずは、現在の自治体が抱える主な課題と、データ利活用によって期待される効果・メリットについて詳しく見ていきましょう。
地方公共団体が抱える課題
多くの自治体が抱える共通の課題として、少子高齢化による労働人口の減少が挙げられます。
2015年度時点で約7,600万人いた生産年齢人口(15歳から64歳まで)は、2025年度時点で約7,100万人、そして2050年度には約5,000万人まで減少するという統計予測が発表されています。
こうした中で、従来の⾏政サービスを維持しつつ、多様性のある社会へ対応するためには、データ利活用による業務効率化や生産性向上が不可欠と言えるでしょう。
データ資源の有効活用
自治体が保有するデータの多くは、既存の行政サービスを利用するために収集されたもので、⾏政が保有する多種多様なデータが、部局・分野を横断して有効活⽤されているとは⾔いがたい状況です。
しかし、こうしたデータを利活用することができれば、行政サービスの生産性向上や住民サービスの質向上に向けた取り組みの推進も可能となるでしょう。
今後は、現時点で有効活用されていない様々なデータの見直しや形式の統一化を行い、利活用可能な状態へと整備していく必要があると言えます。
データ利活用によって期待できるメリット
自治体のデータ利活用による取り組みが進められることで期待できる主なメリットは以下の通りです。
政策分析精度の向上
個人情報等を含む業務データを整備することで、これまで多くの時間がかかっていたデータ収集・分析作業を効率化し、シミュレーションを円滑に行うための仕組みを構築できます。
これにより、データに基づく精緻な現状把握や政策立案・評価が可能となり、適切な投資判断を行えるようになることが期待されます。
住⺠サービスの向上
これまでは、例えば子育て世帯への施策や介護世帯への施策といった大きなカテゴリでのサービス提供が一般的でした。
しかしデータ利活用を進めることで、今後は家族との近居の有無やダブルケア世帯等の細やかな情報を把握し、住⺠ひとりひとりのニーズに応じた⾏政サービスを提供することが可能となります。
自治体職員の⽣産性向上
データ利活用によって紙前提の業務をデジタルに移行することができれば、自治体職員の生産性向上にも繋がるでしょう。
政府が2018年に策定した「デジタル・ガバメント実⾏計画」の中でも、自治体がデジタル・ガバメントを推進するにはIT化や業務改革が重要であり、そのためにはデータ利活用の推進が必要とされています。
行政サービスへのデータ利活用の取り組み事例
続いて、自治体におけるデータ利活用の取り組み事例と効果をいくつか紹介していきます。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
属性情報等の活用で子育て関連情報を素早く提供
データ利活用により、ひとり親家族への子育て支援策を拡充した自治体の実証事例です。
こちらの自治体では、スマホアプリを通じて公営駐輪場の減免やJR定期券助成、福祉資金貸付等のあまり周知されていない支援情報や、⼦の年齢に応じた保育園の空き情報、税情報を活⽤した保育料の⾒込額通知等を提供することで、以下のような成果を上げています。
- 各種⽀援策の認知度向上
- 各種⽀援策の申請件数の増加
- 保育園の申込みの平準化
- 調べる時間の削減
- 事前の⽀出計画検討
- 問合せ対応時間の削減
医療・介護分野のデータ利活用で地域包括ケアシステムの実現を推進
ある自治体では、地域の包括ケアシステムの実現に向けて、情報通信基盤となる以下の4つのプラットフォームを構築しています。
データ集約システム | 医療・介護・生活支援等の住民データを集約 |
---|---|
データ分析システム | 医療・介護のクロス分析やデータのマッピング |
在宅連携支援システム | ケア対象者の生活状況をリアルタイムで共有 |
情報提供システム | 社会資源情報と地図を組み合わせたものをWeb上で公開 |
こうしたデータを利活用したシステム構築により、資料の取得にかかる手間を削減し、ケアマネジャーの業務効率化を実現しました。
必要な生活情報を自由に受信できる仕組みを構築
地理情報の整備・蓄積によって統合型GIS(Geographic Information System:地理情報システム)を構築し、地理情報の共有化に伴う重複整備費用の抑制やデータ利活用を進めている自治体の事例です。
こちらの自治体では、GISに基づく防災マップや水害マップの公開、また犯罪情報の提供等を実施することで、データ利活用による住民サービスの利便性向上を実現しています。
また必要に応じて地図データをダウンロードできるようにしたことで、一部の申請書や届出書における業務効率化にも繋がりました。
まとめ
自治体のデータ利活用については、総務省のWebサイトにて「地方公共団体におけるデータ利活用ガイドブック」という資料が公表されているので、こちらも参考にしてみると良いでしょう。
またNECネッツエスアイでも、自治体のIT化・デジタル化に役立つ様々なソリューション・サービスを提供しているので、データ利活用に伴うツール等の導入をお考えの自治体関係者様はぜひ一度お問い合わせください。