デジタル社会の実現に向け、IT化・DX化に取り組む自治体が増えています。
この記事では、現在の自治体が抱える課題と、政府が主導する「自治体DX推進計画」の概要を解説します。
自治体DXに取り組む先進事例やその効果・メリット等もまとめているので、自治体関係者様はぜひ参考にしてみてください。
自治体DX推進計画とは?デジタル化の必要性
まずは現在の自治体が抱える主な課題と、自治体DX推進計画の意義・具体的な取り組み内容について詳しく見ていきましょう。
自治体が抱える課題
現在、日本の多くの自治体が以下のような問題を抱えています。
- 人口減少による慢性的な労働力不足
- 新型コロナウイルスの拡大等に伴う自治体職員の業務負担増
- 紙ベースのアナログな処理による非効率な業務プロセス 等
日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少傾向となり、自治体で働く職員数も年々減少していることから、労働力不足による行政サービスの質低下等が懸念されています。
また新型コロナウイルスの対応といった新たな業務の追加により、職員1人あたりの業務負担が増大している状況も課題の1つと言えるでしょう。
こうした課題の解決には、自治体DXによる業務処理のデジタル化と、AIやRPAを活用した業務の自動化を実現するための環境整備が不可欠です。
自治体DX推進計画の意義
「自治体DX推進計画」とは、社会のデジタル化を実現するために策定された「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日閣議決定)に基づく自治体向けのDX計画のことです。
主に自治体が重点的に取り組むべき事項・手順を具体化したもので、自治体DXの定義・目的については以下のようにまとめられています。
政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。
このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要である。自治体においては、まずは、
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、
・デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
ことが求められる。
DXの推進は国が掲げる“デジタル社会の実現”を果たすうえで不可欠であり、中でも地域住民と密接な関係にある自治体のDXが重要になるということです。
重点取組事項として挙げられる6つの取り組み
「自治体DX推進計画」では、自治体が重点的に取り組むべき事項として以下の6つを挙げています。
取組事項 | 総務省の方針・概要 |
---|---|
①自治体情報システムの標準化・共通化 | 目標時期を2025年として、ガバメントクラウドの活用に向けた検討を踏まえ、基幹系20業務システムを国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行 |
②マイナンバーカードの普及促進 | 2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づいた申請促進と交付体制の充実を図る |
③自治体の行政手続きのオンライン化 | 主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続き(31手続き)について、マイナポータルからマイナンバーカードによるオンライン手続きを可能とする |
④自治体のAI・RPAの利用推進 | ②・③による業務見直し等を契機として、AI・RPA導入ガイドブックを参考にAIやRPAの導入・活用を推進 |
⑤テレワークの推進 | 「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」や「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガ イドライン」等を参考に、テレワークの導入・活用を推進/②・③による業務見直し等に合わせ、対象業務を拡大 |
⑥セキュリティ対策の徹底 | 改定されたセキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底 |
自治体DXの先進事例から見る成功のポイント
続いて、自治体DXの取り組みによって成果を上げている先進事例を紹介していきます。
(世の中の先進事例として紹介しているため、当社が直接関与していない事例を含んでいます)
AIの導入で住民税資料併合に関連する業務を5割削減
知恵や経験が必要とされる住民税徴収の関連業務にAI(人工知能)を導入し、大幅な業務改善に成功した事例です。
住民税の徴収にあたって必要となる資料の確認をAIが行うようにしたことで、資料の修正・確認にかかっていた時間の5割以上の削減に成功しました。
AI・RPAを用いた業務改善・自動化の事例は多く、今後の自治体DXにおいても重要な役割を担っていくことが予想されています。
Web会議システムの導入で各分野の業務を効率化
教育・子育て・福祉等の分野にZoomを導入し、地域住民の感染防止や業務効率化を図っている自治体の事例です。
こちらの自治体では、Zoom導入によるDXの取り組みとして以下のようなテーマを掲げています。
- 学校教育における授業効果や学力の向上
- 多様化する保護者ニーズに対応した学校・保育サービスの充実
- 遠隔による各種相談業務や市民講座などの支援
- 防災、減災
- 起業家支援やビジネスマッチング
- SDGs、地方創生への取り組み
これらの取り組みを通して、自治体が抱える課題の解決や地域の活性化を実現し、持続可能な行政サービスを運営していくことが目指されています。
全職員にテレワークを導入しモバイルワークを定着
全職員(約4,000名)を対象にテレワークを導入し、モバイルワークの定着に成功した事例です。
こちらの自治体では、サテライトオフィスの設置・モバイルワーク用のタブレットやノートPCの導入、Web会議システムやコミュニケーションツールの導入といった取り組みにより、全職員を対象とするテレワークの導入を達成しました。
災害時には月間で延べ700人を超える職員が在宅勤務を利用した事例もあり、BCP対策としても役立っています。
まとめ
住民ニーズの多様化や職員数の減少など、自治体を取り巻く環境も変化しているため、早い段階からDXに取り組み、限られた職員でも対応できるよう準備を整えておくことが大切です。
NECネッツエスアイでは、自治体のDXを総合的に支援するコーディネートサービスをはじめ、様々なサービス・ソリューションを提供しています。
過去の導入実績に基づく最適な提案が可能ですので、DXのやり方でお悩みの自治体関係者様はぜひ一度ご相談ください。
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