インターネットの利用が拡大し、多くの企業ビジネスを支える重要なIT基盤となりつつあります。
しかし、セキュリティ面の課題も多く、情報漏えいを防ぐための仕組みも必要です。
その中でも注目されているのが「閉域網SIM」。
この記事では、閉域網SIMの重要性から、仕組み、メリット・デメリット、おすすめの利用シーンまで詳しく解説します。
閉域網SIMとは?
閉域網SIMとは、通信事業者が提供する閉域モバイルネットワークに接続するSIMカードを使ったサービスを指します。
一般の公衆モバイルネットワークやインターネットに接続せず、拠点〜SIM端末間やSIM端末同士の通信を可能とするサービスであり、高いセキュリティと信頼性を実現するものです。
閉域網SIMの重要性
情報漏えいやサイバーセキュリティの脅威が、日々増加している現代において、閉域網SIMは非常に重要な役割を果たします。
企業専用のプライベートなネットワークを構築したうえで、閉域網専用のSIMカードから接続することで、完全にセキュアな通信を実現できるのです。
また、データの遅延や性能悪化が許されないアプリケーションやシステムにとっても、他社の影響を受けず高い信頼性を確保することができるでしょう。
このように、機密性の高いデータを扱う企業にとって、閉域網SIMサービスを利用した接続は、非常に重要なソリューションといえます。
閉域網SIMの仕組み
閉域網SIMは、その名前からもわかるように、通信範囲を限定したSIMカードサービスのことです。
企業が閉域網SIMを使う際には、まず閉域網を提供する通信事業者と契約し、専用の通信ネットワーク(閉域網)を構築します。
このネットワークは、外部から接続できない完全閉域網であり、高いセキュリティを提供しつつ、社内LANのようにとして使うことができます。
そのうえで、通信事業者が発行した専用の閉域網SIMカードをデバイス(スマホ、PC、IoTデバイス、ルータなど)に挿入して、データ通信を行うことが可能となるのです。
通信内容は、すべて閉域網内で保護されるため、外部からアクセスすることはできません。
閉域網SIMのメリット・注意点を整理
続いて、情報漏えいのリスクを軽減し、セキュリティの向上を実現する閉域網SIM接続のメリット・デメリットについて、整理していきましょう。
メリット①高いセキュリティ
閉域網SIMでは、インターネットに接続していない閉域モバイルネットワークを経由し、企業専用のプライベートネットワーク内で通信を行います。
プライベートネットワーク内ですべての通信が行われるため、外部からの接続はできません。
これにより、セキュリティが向上し、機密情報の漏えいを防ぐ役割を果たします。
メリット②安定した通信
閉域網SIMでの接続は、公衆モバイルネットワークと違い、コンシューマーアクセスがないため、通信トラフィックが安定しています。
通信の安定性が確保されることから、データの遅延や損失が最小限に抑えられ、高い通信品質につながることが、大きなメリットです。
特に、リアルタイムデータや要求の厳しいアプリケーションにとって、この品質の高さは非常に重要です。
閉域網SIMを使用することで、通信品質が向上し、サービスの安定性を確保することができます。
メリット③導入が容易
通常、高セキュリティのネットワークを構築するには、有線の専用回線を敷設する必要があります。
しかし、閉域網SIMは有線回線の敷設が不要です。
これにより、面倒な工事や設備投資が不要となり、容易に導入することができます。
また、閉域網SIMを利用する際にも、契約済みのSIMカードを対応するデバイスに挿入するだけです。
導入作業が迅速に行え、業務の中断を最小限に抑えることができるのも、閉域網SIMの利点といえるでしょう。
注意点①高コストになることも
一方で、閉域網SIMの導入はコストがかかる面もあります。
閉域網SIMは、SIMカードごとに通信量に応じた従量課金モデルを採用していることがほとんどです。
データ通信が頻繁に行われる場合、高い通信料金が発生する可能性がありますし、使用しなかったSIMカードにも、月額費用がかかってしまいます。
SIMカードの契約枚数に比例してコストがかかることは、意識しておかなければなりません。
閉域網SIMのメリットとデメリットを意識したうえで、利用ニーズやセキュリティ要件に合わせて導入を検討することが重要となります。
おすすめ利用シーンや活用事例
閉域網SIMは、高いセキュリティと信頼性から、さまざまな利用シーンで優れた効果を発揮しています。
閉域網SIMのおすすめ利用シーンや、具体的な活用例について解説していきましょう。
IoTデバイスからのセキュアなデータ取得
IoT(Internet of Things)デバイスは、多くの産業分野で活用されています。
また、IoTデバイスを閉域網SIMと組み合わせて使うことで、さらなる効果が期待できるでしょう。
閉域網SIMでは、クローズドなデータ通信を可能とするため、IoTデバイスが収集した機密性の高いデータを安全に送受信することができます。
通常、IoTデバイスからのデータ収集にはネットワーク機器(ルータなど)を使用しますが、閉域網SIMを活用すれば、ネットワーク機器は必要ありません。
これにより、コスト削減と運用管理の負荷軽減を実現できるのです。
たとえば、農業界では、IoTセンサーで測定したデータをリアルタイムに活用する仕組みに、閉域網SIMが活用されています。
ビニールハウス内の気象データをクラウドに送信し、サーバー上で解析した結果をもとに、現場の制御機器に指示を送ることで、全自動での農作物の管理や生産性の向上に役立てているのです。
その通信インフラに閉域網SIMを活用することで、IoTデバイスからの安定したセキュアなデータ通信を実現しています。
企業内データセンターのバックアップ回線に活用
企業内データセンターのバックアップ回線としても、閉域網SIMは広く利用されています。閉域網SIMは、SIMカードを挿入するだけで導入できるため、迅速な導入が可能です。
従来の通信回線の設置に比べ、導入にかかる時間と手間を大幅に削減します。
また、閉域網SIMでは、通信量に応じた従量課金モデルを採用していることが多いため、通常使用することのないバックアップ回線用途では、コストを抑えることが可能です。
たとえば、データセンターの災害発生に備えて、閉域網SIM接続をバックアップ通信回線として活用することが考えられます。
災害発生時にデータセンターと外部との通信を確保することで、可用性の高いビジネス継続を実現できるでしょう。
バックアップ回線は、普段は使用することが少ないこともあり、コストを抑えたいというニーズにも応えることが可能です。
リモートワークで外部から社内サーバーへアクセス可能
近年、リモートワークが増える中で、閉域網SIMは外部から社内サーバーへのアクセスを可能とします。
従来のリモートアクセスでは、VPN(Virtual Private Network)を使用してセキュアな接続を確立するため、VPNサービスのためのサーバやネットワーク機器、VPNソフトウェアなどが必要でした。
しかし、閉域網SIMを利用することで、VPNを使わずにセキュアな接続ができ、運用負荷を軽減することができます。
たとえば、営業社員が外出先から社内のシステムを利用する場合、PCやスマホに閉域網SIMを挿入することで、社内サーバーに手軽にリモート接続することが可能となります。
これにより、営業社員の利便性を落とすことなく、VPNの運用管理のためのコストを削減することができるでしょう。
遠隔拠点の監視や制御を実現
工場や出張所など、有線回線の敷設にコストがかかってしまう場合も多いでしょう。閉域網SIMは、そんな遠隔拠点の監視や制御にも、幅広く利用されています。
インターネット経由で遠隔制御を行う場合、セキュリティ面でも懸念がありますが、閉域網SIMを利用することで、安全かつセキュアな遠隔制御が実現できるでしょう。
外部からの不正アクセスを防ぎつつ、またネットワーク機器や通信回線にかかるコストを抑え、遠隔拠点を効率的に管理できます。
車載カメラの映像をリアルタイムに受信
車載カメラの映像をリアルタイムに受信する用途でも、閉域網SIMが有用です。
閉域網SIMを活用することで、バスや社用車に搭載されたドライブレコーダーの映像をリアルタイムに送受信できます。
これにより、事故やトラフィック情報のモニタリング、プライバシーデータの保護など、さまざまな活用事例が考えられるでしょう。
実際に、バス車両に搭載されたカメラ映像を閉域網SIM接続を行ってデータ送信し、サーバー側でのAI分析に活用している事例も出てきています。
閉域SIMの導入をお考えならネッツワイヤレスがおすすめ
この記事では、閉域網SIMの基本から応用までを詳しく解説しました。
情報漏えい対策を検討している企業や、新たな通信手段を模索している企業にとっては、非常に参考になるのではないでしょうか。
最後に、閉域網SIMのおすすめサービスとして、NECネッツエスアイの「ネッツワイヤレス」をご紹介します。
ネッツワイヤレスは、NECネッツエスアイが提供する法人向けモバイルネットワークサービスです。
インターネットには接続せずに閉域網を介して通信を行い、データ送受信を行うことができます。
ネッツワイヤレスは、法人向けに特化したサービスでもあり、高いセキュリティを必要とするネットワークに適しているといえるでしょう。
なお、閉域網SIMは、高いセキュリティを実現しますが、「多要素認証サービス」を組み合わせることで、さらに強固なセキュリティを可能とします。
多要素認証サービスは、SIM認証+デバイス認証+生体認証を組み合わせて、リモートアクセスを実現するサービスですので堅牢なテレワーク通信環境を必要とする企業は、組み合わせて導入すると良い
閉域網SIMは情報漏えいを防ぐための強力なツールであり、様々なシーンで活用されています。
セキュリティと信頼性を重視する企業には、最適な選択肢となるのではないでしょうか。