近年多くの企業や組織が取り組むべき課題であるIT化やDX化。
それらIT化やDX化が進んでいくに伴い、各企業や組織の通信容量は年々増加しています。
またそれと同時に、悪意のある第三者による不正アクセスや情報漏洩などセキュリティの問題も増大しており、今後もこの流れは続いていくでしょう。
そのような状況の中、通信速度や容量、セキュリティの面で優れている「閉域網」がにわかに注目を集めています。
以下では、注目を集める「閉域網」とは何なのか。また、「閉域網」と呼ばれるもののサービスの種類、特徴、セキュリティリスク、対策とはどのようなものなのかについても解説していきます。
閉域網とは?
閉域網とは?
閉域網とは、限られた人のみが利用することのできる外部には閉じられたネットワークのことです。
もう少し詳しく言うと、閉域網とはインターネットやインターネットに接続された機器を使うことなく、外部の影響を受けないネットワークであると言えるでしょう。
英語では閉域網とは “closed network” (クローズド・ネットワーク) と呼ばれ、公衆電話回線や Free Wi-Fi 、パブリッククラウドなどに代表されるような不特定多数の人物が利用することのできる “open network” (オープン・ネットワーク)と対極であるというようにすれば理解できるのではないでしょうか。
閉域網を利用することのメリットとは?
閉域網を利用することの一番のメリットは、セキュリティ面ではないでしょうか。
閉域網では、インターネットに接続することなく閉じられたネットワークを利用するため第三者の介入がなく、インターネット経由の攻撃はもちろんのこと、データの改ざんや通信傍受などのリスクをなくすことができ、安全にネットワークを利用することができます。
また、仮に問題が起こった際にも第三者ではないことが明らかなため原因の追究も容易になるでしょう。
さらに、通信品質の保証という点も閉域網の大きなメリットとなるでしょう。
通信品質の保証とは、すなわち通信の早さや通話の際の音声などのことです。
閉域網では、インターネットに接続をすることなく、契約者専用のネットワークを使用するため、アクセスの集中や混雑などで通信ができないなどの不都合が起こりづらくなるというメリットが期待できるでしょう。
閉域網の用途とは?
閉域網の利用には多額のコストがかかることもあり、主に法人向けに提供されているサービスです。
主に用途としては、「セキュリティが重要視されるネットワークでの利用」と「通信品質が重要視されるネットワークでの利用」の2つがあげられるでしょう。
閉域網の主なサービス4種類と特徴
閉域網とは、上述のとおりインターネットと物理的に遮断されているため第三者からの攻撃などの被害を受けません。
しかし、その閉域網の中にも通信の速度やネットワーク構築の自由度、コストなどからいくつかの種類に分けられています。
下記ではそのうち4つのサービス
- 広域イーサネットサービス
- IP-VPNサービス
- エントリーVPN
- 専用線
について特徴などを簡単に解説していきます。
1.広域イーサネットサービス
広域イーサネットサービスとは、通信業者などが敷設した閉域イーサネットワーク網を利用するサービスのことを言います。
こちらのサービスでは主にレイヤー2という運用の自由が高いネットワークを使っており、柔軟なネットワーク設計が可能という点が特徴であり大きなメリットであると言えるでしょう。
また、自由な設計が可能であるために高いセキュリティ性能を確保することも可能です。
そのため、医療機関や金融機関、行政、通信業者など気密性の高い情報を扱う業界や機関によく採用されています。
一方で、初期設定やこちらのネットワークの維持管理などにかかるコストが高いといったデメリットがあります。
2.IP-VPNサービス
IP-VPNサービスとは、通信業者などが敷設した閉域IP網を利用するサービスのことを言います。
こちらのサービスでは、レイヤー3というネットワークが利用されているため前述の広域イーサネットサービスに比べると設計や運用の自由はありません。
しかし、その分導入の容易さの面でこちらのサービスも人気を集めています。
導入のハードルの低さから、IP-VPNサービスは製造業やサービス業、流通業などで用いられています。
また、広域イーサネットサービス同様、通信について品質は保証されているためカスタマイズの必要がないという方は閉域網の中でもIP-VPNを利用するとよいでしょう。
3.エントリーVPN
エントリーVPNとは、通信業者が敷設した閉域IP網を利用するサービスです。
こちらの点は先述の「IP-VPN」と同じですが、エントリーVPNは閉域網へのアクセスにADSL回線や光回線など比較的安価なブロードバンド回線を利用し、コストを抑えているという点が決定的に違います。
そのため、エントリーVPNのメリットとしては、コストが広域イーサネットサービスやIP-VPNサービスに比べて抑えられているという点があげられるでしょう。
一方で、デメリットとしては他の利用者の利用状況などによって通信速度などが変わってしまうという点があげられます。
4.専用線
専用線とは、異なる拠点間で物理的な通信回線を敷設し、それを用いることで確かなセキュリティと通信品質を可能とした閉域網のサービスのうちの1つです。
専用線は物理的な通信回線を用いるため、情報漏洩が起こることはなくかつ通信品質もユーザーが決まっているため優れています。
その一方で、物理的な回線を用いるに伴って維持費などのコストが大いにかかることが多くその点がデメリットとなるでしょう。
また、拠点確保や敷設に時間がかかるため拠点の拡充に柔軟に対応できない点も気になる点となる可能性があります。
以下、閉域網の主な4つのサービスの比較表です。
セキュリティ | 通信の安定性 | コスト | |
---|---|---|---|
1. 広域イーサネット | ◎ | 〇 | 高額 |
2. IP-VPN | 〇 | 〇 | やや高額 |
3. エントリーVPN | 〇 | △ | 比較的安価 |
4. 専用線 | ◎ | 〇 | かなり高額 |
以下では、閉域網のセキュリティリスクと対策とはについて解説していきます。
セキュリティリスクと対策とは?
閉域網はインターネットから遮断されているためセキュリティの心配はないと上記しましたが、1つ特に気を付けなければいけない点があります。
では、実際に閉域網を利用する際のリスクとは、またその対策とはどのようなものがあるのでしょうか。
閉域網内のセキュリティリスクとは
閉域網を利用するうえで最も気を付けるべきリスクとは、ランサムウェアというウイルスです。
ランサムウェアとは、「PCを解放するためにはお金を払え」というような身代金を要求する旨のメッセージが画面に表示されるウイルスのことを言います。
こちらのウイルスには主に、利用者の所有するUSBなどの端末などにすでにウイルスが侵入しており、それが閉域網を利用している端末に接続されることで感染します。
もしくは、ウイルスを持った端末が閉域網の中に入ってしまうことによってインターネットに接続され攻撃を受けるなどの可能性も考えられるでしょう。
閉域網はインターネットからの直接的な攻撃は受けませんが、上記のようなケースには十分注意する必要があります。
閉域網内のセキュリティ対策とは
上述したように、閉域網とはセキュリティに優れたネットワークであることに違いはありませんがリスクをより減らすセキュリティ対策が必要になってくることは間違いないでしょう。
そこで効果的になるのが、多層防御という対策方法です。
多層防御とは、ウイルスやサイバー攻撃などの手口から情報を守るための対策方法のことで、以下から対策領域とする以下の3つの領域を簡単に見ていきましょう。
- ウイルスなどの侵入を防ぐ「入口対策」
入口対策とは、セキュリティ上の脅威をファイアウォールなどで社内ネットワークに入らないように防ぐものです。
- 内部での被害拡大を防ぐ「内部対策」
内部対策とは、脅威が社内ネットワークに侵入した後ログ監視などによって監視し被害を食い止めるためのものです。
- 外部への情報漏洩を防ぐ「出口対策」
出口対策とは、不審な動きを検知するサンドボックス型の標的型攻撃対策ツールなどで情報を外部に持ち出そうとする動きを検知しブロックするものです。
これら3つの領域を対策するため、閉域網というセキュリティ性の高いネットワークと掛け合わせることでセキュリティリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
まとめ
これまで閉域網とは何かということについて、メリット、閉域網を利用したネットワークの種類やセキュリティリスクと対策などについて解説してきました。
閉域網は、インターネットとの接続が遮断されている点が一番のメリットであり、情報セキュリティを気にされている方には非常におすすめのネットワークであると言えるでしょう。
また、通信品質も良好であるため仕事を進めていくうえで非常に重要な2点がそろっていると言えます。
閉域網の導入を検討する際には、より閉域網のメリットやリスク、その他のネットワークとの違いなどを理解したうえでの決定をおすすめします。