データ保管方法としてよく比較されるのが「オンラインストレージ」と「NAS」です。
2つのうちどちらが自社にとって最適なのか迷っている方や、NASからオンラインストレージへの移行で迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、オンラインストレージとNASそれぞれのメリットとデメリット、コスト、使いやすさなどデータ管理に関するあらゆる側面から両者を比較し、選択のポイントを解説します。
NASのメリット・デメリット
NAS(Network Attached Storage)は、ネットワーク経由でアクセスできる専用のデータストレージデバイスです。自宅やオフィスのネットワークに接続し、複数のユーザーが共有できるため、データの中央集約やファイル共有が容易に行えます。
NASは特に、大量のデータを安全に保存し、高速でアクセスしたい場合に適しています。
また、RAID(※)設定による冗長化で、データの安全性を高めることが可能。
個人用から企業用までさまざまな製品があり、管理やカスタマイズの自由度が高いのが特徴です。
※RAID(Redundant Array of Independent Disks)
複数のハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)を組み合わせて1つのドライブのように認識させる技術。
データを複数のドライブに分散させて保存することで、物理的な故障によるデータの損失リスクを低減したり、書き込みを高速化したりすることができる。
メリット①プライバシーが守られる
NASは、社内に物理的なストレージサーバーを設置することで、重要なデータを内部に保管します。
外部のクラウドサービスよりも高いプライバシーレベルを確保できるため、機密情報や個人情報などの重要なデータを扱う場合におすすめです。
メリット②アクセスが速い
NASではローカルネットワーク経由で直接データにアクセスするため、オンラインストレージに比べて高速なデータ転送が可能です。
大容量のファイルを頻繁に扱う場合には、作業効率が大幅に向上します。
メリット③カスタマイズが可能
NASは、RAID設定やバックアップ機能のカスタマイズが可能。
企業や個人のニーズに合わせて、より柔軟な運用が実現できます。
デメリット①初期コストが高い
NASを導入する際には、デバイスの購入や設置のための初期投資が必要です。
また、機器のスペックによっては、初期コストが高額になる場合もあります。
デメリット②管理やメンテナンスが必要
NASは、定期的なメンテナンスや障害時の復旧作業など、自社での管理が必要になります。
これには専門的な知識が求められるため、IT人材がいない場合は外部に委託するなどの方法をとらなければなりません。
デメリット③物理的な損傷リスクがある
NASは物理的なデバイスのため、火災や水害などで破損するリスクが伴います。
物理故障によるデータの損失リスクを避けることはできませんので、バックアップの頻度・メディア・保管場所などで対策する必要があります。
オンラインストレージのメリット・デメリット
オンラインストレージは、インターネットを介してアクセスするクラウド上のデータ保存サービスです。
ファイルをオンラインで保存しているため、外出先や異なるデバイス間でのデータアクセス・共有が効率的に行えるのが特徴。
無料プランから始められるサービスも多く、低コストで始められるのも魅力です。
メリット①どこからでもファイルにアクセスできる
オンラインストレージはインターネットがあれば、世界中どこからでもデータにアクセス可能。
ビジネスで急速に普及しているスマホやタブレットにも対応しており、外出先での作業が容易に行えます。
メリット②自動バックアップや同期が可能
ほとんどのオンラインストレージサービスでは、自動でのバックアップやデバイス間の同期に対応しています。
誤ってファイルを変更してしまっても以前のバージョンを復元することができるため、データの損失リスクを低減できます。
メリット③外部共有が容易
オンラインストレージでは簡単な操作でファイルの共有ができるので、社内外の相手とスムーズにデータのやり取りができます。
これは、特にリモートワークが増えている現在、大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット①インターネット環境に依存する
オンラインストレージの利用には、インターネット接続が必須です。
接続が不安定だとファイルにアクセスできなくなったり、読み込みに時間がかかったりすることがありますので、作業環境には注意する必要があります。
デメリット②継続的にコストが発生する
多くのオンラインストレージサービスは、月額または年額のサブスクリプションです。
継続的にコストが発生し、大量のデータを長期間保存する場合には高額になる可能性があることも覚えておきましょう。
NASとオンラインストレージの違いを比較
NASとオンラインストレージの違いを項目別に比較していきましょう。
NAS | オンラインストレージ | |
---|---|---|
初期コスト | 必要 | ほぼ不要 |
ランニングコスト | 光熱費などが発生 | プラン・ユーザー数などにより課金が発生 |
物理的なハードウェア | 必要 | 不要 |
容量上限 | あり | 変更可能 |
管理のしやすさ | やや難しい | 容易 |
アクセスの速さ | 速い | 環境に依存 |
①初期コスト
NASはCPU、メモリー、ストレージから成るハードディスクです。
NASの価格はスペックにより異なりますが、個人用製品では数万円、法人用では10万円以上が相場です。
また、NASを設置するためにはLANケーブルやACアダプター、ラックなども必要になるため、初期コストが高額になる場合があります。
オンラインストレージは基本的に無料から始められるものが多く、専用機器の購入も必要ありません。
②ランニングコスト
NASの稼働には電気料金が発生しますが、それ以外の運用コストはほぼ不要です。
ただし、故障やメンテナンスのための費用は都度かかり、定期的なリプレイスも行わなければならないため、追加費用なしで永続的に使えるわけではありません。
オンラインストレージは月額・年額のサブスクリプションで、サービス契約中は一定額を継続的に支払う方式です。
保守やメンテナンスはプロバイダーが行うため、これらに関する追加費用は発生しません。
オンラインストレージの料金はユーザー単位となっている場合が多く、ランニングコストは人数により変動する点に注意しましょう。
③物理的なハードウェア
NASは物理ストレージのため、自宅やオフィス内に設置場所が必要です。
また、物理破損によるデータ消失リスクがあるためRAID設定などで対策する必要があり、修理・買い替えなどの費用負担も発生します。
オンラインストレージでは、データはプロバイダーのデータセンターに保管されるため、物理的なハードウェアの設置・管理が必要ありません。
④容量
NASに保存できる容量は、接続されているドライブの合計が上限です。
ドライブの追加により後から拡張することも可能ですが、個々のハードウェアの容量を超えることはできませんので、物理的な限界はあります。
オンラインストレージはプランに応じて容量を柔軟に変更でき、増やすことも、減らしてコストを節約することも可能です。
また、最初から容量無制限のオンラインストレージもあります。
⑤管理のしやすさ
NASの構築や設定には専門的な知識が必要になるため、IT人材がいない企業では導入・管理のハードルが高くなります。
オンラインストレージの場合は、設定や管理がWeb画面から行える場合がほとんどです。
設定や管理の操作を視覚的に行うことができるため、小規模な企業でも導入しやすいのが特徴です。
⑥アクセスの速さ
NASはローカルネットワークを通じてアクセスするため、転送速度は社内LANの速度に準じます。
高速のデータ転送に対応するNAS・LANケーブル・ハブなどの機器を導入していれば、大容量のデータへの高速アクセスも不可能ではありません。
オンラインストレージの速度はインターネット環境に依存するため、利用するネットワークや作業場所によって通信速度に差が出てしまいます。
速度が遅い場合は、データへのアクセスに時間がかかったり、アクセスできないケースもありますのでご注意ください。
記事まとめ
オンラインストレージとNASを、データ保管に関するさまざまな側面から比較しました。
どちらが最適かは、使用目的や必要な機能、コストなどによって異なります。
NASがおすすめのケース
- データを社内で安全に管理したい
- 速度を重視する
- NASを運用できる知識や技術がある
オンラインストレージがおすすめのケース
- リモートワークを導入している
- 複数のデバイスを業務利用する
- 手間をかけずにデータ管理をしたい
現在NASを利用中の方で、リモートワークやモバイルワークの利便性を向上させたい場合は、NASとオンラインストレージを併用する選択肢もあります。
社外で利用するデータやユーザー間で共有するファイルにはオンラインストレージを利用し、機密文書など外に出したくないデータはNASに保存するといった運用ならば、双方のいいとこ取りをすることもできますね。
また、法人向けには高度なセキュリティやコンプライアンス対策機能も備えたオンラインストレージサービスがあります。
このようなオンラインストレージならば、個人情報や機密データもクラウド上で安全に管理することが可能です。
法人におすすめのセキュアなオンラインストレージサービスは次の記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。