Zoomは、海外とのミーティングやセミナーへの参加も容易にしました。これまで出張やテレビ会議で行っていた商談が自宅からパソコン1台で行うことができるようになり、コミュニケーションの機会が増えたという方も多いことでしょう。
海外とのやり取りでは通訳・翻訳機能が必要になるケースがあります。Zoomミーティングやウェビナーではどんなサービスが使えるのか解説します。
会議の通訳にはどんな種類がある?
「通訳」にはいくつか方法があり、会議の規模によって向き不向きがあります。まずはそれぞれの特徴について見てみましょう。
同時通訳
話者の声を通訳者が聞きながら同時に訳していくのが同時通訳です。話者の話を止めることなく通訳するので、進行時間は通訳なしの場合とほぼ変わらないのが特徴です。
発言者の音声を遮らないよう、通訳者は専用のブースの中で、ヘッドフォンで音声を聞きながら通訳し、聞き手はレシーバーで通訳音声を聞きます。大規模な会議や学会、講演会など、主に1人の話者の話を大勢で聞く場合に使われる通訳方法です。
逐次通訳
逐次通訳は話者の話の間に通訳者が訳す方法です。時々話を止めて、通訳者が訳し、また話者が話す……というふうに、通訳のための時間を取りながら進むため、進行時間は長めになります。
会話のテンポは悪くなってしまいますが、発言のまとまりごとに区切って訳すため、しっかりと意味を理解できる利点があります。逐次通訳は、比較的少人数での会議に向いていると言えるでしょう。
ウィスパリング
ウィスパリングは、特定の聞き手のそばに通訳者がついて、直接通訳内容を伝える方法です。
同時通訳と同じく、リアルタイムで進行します。少数の外国語話者がメンバーに含まれる場合に使われます。
Web会議サービスの自動翻訳
Web会議の通訳機能というと、「音声からAIが自動翻訳して字幕表示を行う機能」というイメージが強いかもしれません。GoogleMeetやSkypeにはリアルタイム字幕表示機能があり、無料プランでも使えるサービスです。
字幕表示は手軽に利用できる一方、自動翻訳のため精度は多少目をつぶる必要があります。AIは学習次第で精度が上がっていくことが期待されますが、人が話すように細かいニュアンスを伝えることはできないと思って良いでしょう。
Zoomミーティング・ウェビナーの同時通訳機能
Zoomにも外国語の会議をサポートする機能があります。Zoomの場合は、自動翻訳や字幕表示ではなく、また、Zoomがサービスとして翻訳・通訳を請け負うわけでもありません。
Zoomの言語通訳機能は、「会議に通訳者を参加させる機能」のことです。実際の会議で同時通訳を行う環境をシステム上で再現しています。
会議での同時通訳の仕組み
会議での同時通訳に必要なものは、通訳者・ブース・マイク・レシーバーの4点。
会議では、同時通訳者は他の参加者と同じ席には座りません。通訳音声に余計な音が入らないよう、通訳者は周りの音を遮断できる専用のブースの中で、ヘッドフォンで話者の音声を聞きながら通訳します。
参加者にはあらかじめレシーバーが配られ、指定のチャンネルに合わせると通訳音声が聞こえる仕組みです。
複数言語への通訳が行われる会議では、言語ごとに別のチャンネルが設定されていて、自分が選んだ音声しか聞こえない仕組みになっています。
Zoomの同時通訳機能の仕組み
Zoomでは、言語ごとのオーディオチャネルに同時通訳者を割り当てます。このチャネルが、ブース・マイク・レシーバーの代わりになります。通訳者はオリジナル音声を聞きながら通訳を行い、参加者は言語のチャネルを選んで通訳音声を聞く方式です。
Zoom同時通訳機能の使い方
Zoomで同時通訳機能を使う方法について見ていきます。
事前準備
Zoomで同時通訳機能を使うために必要な準備について説明します。Zoomミーティングをスケジュールする前に済ませておきましょう。
アカウントの確認
ビジネス、教育機関、エンタープライズのアカウント、あるいはプロのアカウント + ウェビナー アドオンのプランの契約が必要です。無償アカウントでは使用できません。
Zoomの同時通訳機能が使える環境
アプリが以下の条件を満たしている必要があります。
・Zoom デスクトップ クライアント
Windows: 5.2.1(44052.0816)以降/macOS: 5.2.1(44040.0816)以降
・Zoom モバイルアプリ
Android: 5.2.1(44042.0816)以降/iOS: 5.2.1(44038.0816)以降
同時通訳者の選定
Zoomで同時通訳機能を利用するには、ミーティング作成時に通訳者を登録する必要があります。事前に通訳者を選定し、メールアドレスを取得しておいてください。
同時通訳機能の設定
ミーティングをスケジュールするアカウントで、言語通訳機能を有効化します。
- Zoomウェブポータル(https://zoom.us/)にサインインします。
- 「設定」をクリックします。
- 「ミーティングにて(詳細)」 で「言語通訳」を有効にします。
- デフォルトの9言語(英語・中国語・日本語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・ポルトガル語・スペイン語)が表示されます。
- ここにない言語を使用する場合は、「+」をクリックして、言語の名前を入力し、「追加」をクリックするとリストに追加できます。
※言語はいくつでも追加できますが、同時に使用できるのはカスタム言語5つだけです。
ミーティングやウェビナーで同時通訳者をアサインする方法
同時通訳機能を使用する準備ができたら、実際にミーティングに通訳機能を設定しましょう。
- 「ミーティングをスケジュールする」をクリックします。
- 「ミーティングID」の項目で「自動的に生成」を選択します。
- 「通訳」の「言語通訳を有効にする」にチェックを入れます。
- 通訳者のメールアドレスを入力し言語を選択します。ここで設定したアドレス宛に招待メールが送信され、通訳者が担当言語のチャネルに入れるようになります。
- 各項目の設定が完了したら「保存」をクリックして終了です。
※ウェビナーに設定する場合は、「ウェビナーをスケジュールする」から同じように設定します。
ミーティングで同時通訳を開始する方法
ミーティングが始まったら、ホストが同時通訳機能を開始することで通訳機能が使えるようになります。
ホストの操作
- Zoomデスクトップクライアントにサインインします。
- ミーティング開始後、「通訳」をクリックします。
- 「開始」をクリックすると通訳セッションが始まります。
- ホストが「通訳」→「終了」をクリックするとセッションが終了します。
- モバイルアプリでは通訳の開始や管理はできませんので、デスクトップクライアントでご利用ください。
通訳者の操作
- ホストから招待メールが届いたメールアドレスのアカウントでZoomデスクトップクライアントにサインインして、ミーティングに参加します。
- ホストが「開始」をクリックすると、言語に割り当てられたことを示すメッセージが届きます。
- メッセージの内容を確認して、「OK」をクリックすると通訳開始です。オリジナルの音声を聞いて通訳します。
- ホストが通訳セッションを終了させると通訳終了です。
出席者の操作
- Zoomデスクトップクライアントにサインインします。
- ホストが通訳セッションを開始したら、「通訳」をクリックし、言語チャネルを選択すると通訳音声を聞くことができます。
料金・費用
Zoom言語通訳機能は通訳者を介したサービスのため、システム利用料と通訳者の手配にかかる費用を別々に考える必要があります。
Zoomの有料ライセンス契約
※料金はプランのカスタマイズなどによって変動するため、詳しくは下部に設置されている問い合わせフォームよりご相談ください。
通訳サービス利用料金
同時通訳者が必要な場合は、通訳サービス会社に手配を依頼します。会議の内容・時間・言語などで料金が異なる場合がありますので、見積を取って確認しましょう。
Zoomで同時通訳機能を使用する場合の注意点
Web会議では対面の会議とは勝手が異なるのと同様、Zoomでの同時通訳もオンラインならではの制約を受ける面があります。
時間差が生まれる
Zoom会議をしていると、相手の反応が一瞬遅れていると感じることがあります。Zoomの同時通訳機能でも音声の遅延が発生するため、実際の進行とずれてくる場合があることは事前に認識しておかなければなりません。
また、言語が目まぐるしく変わる会議では、チャネルの切替が追い付かないことなども起こります。通訳機能を利用する場合はこうしたケースに配慮して会議の進行ペースをコントロールする必要も出てくるでしょう。
多言語のリレー通訳ができない
複数の言語への通訳が行われる国際会議の場合に「リレー通訳」という方法が行われます。これは、他の通訳者の訳をもとに別の言語へ通訳する方法です。
英・日・仏の3か国語で会議を行う場合、英語の発言を英→日と訳し、日本語訳から日→仏と訳すことで、通訳者は「英日」と「日仏」の2名で対応できます。
ところがZoomでは、通訳者はオリジナル音声と自分の担当言語のチャネルにしかアクセスできません。他の通訳者の音声を聞くことができないため、リレー通訳ができないというわけです。この場合は、もう一人「英仏」の通訳者をアサインしなければならなくなります。
まとめ
- Zoomでは、通訳者を介した同時通訳機能が利用できる
- Zoomで同時通訳機能を使うには有料アカウントが必要
- 通信遅延やパソコンの操作に配慮した進行を求められる
Zoomの通訳機能は、オンラインでの制約はあるものの、基本は実際の会議の同時通訳環境を想定した実用的な機能であることに違いはありません。同時通訳機能をうまく使って、ビジネスの機会を広げましょう。