自治体DXの実現に向けた大きなアプローチの1つに「市区町村の基幹系システムの標準化」があります。
この記事では、自治体DX推進計画の中で標準化の対象として定められた17業務の概要と、自治体が抱える課題、そして自治体DXの必要性などを解説します。
17業務の標準化で期待できるメリットや効果もまとめているので、自治体DXの取り組みによってシステムの在り方がどう変化していくのかを簡単に理解しておきましょう。
自治体DX推進計画におけるシステム標準化・共通化の概要
まずは、自治体DX推進計画においてシステム標準化の対象となっている17業務の概要と、地方自治体の情報システムを標準化させることの必要性・注意点について解説していきます。
システム標準化で対象となる基幹系17業務
政府は2025年度末までに自治体の情報システムを標準化することを目標に掲げており、具体的な手順を示す資料として「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】」が公表されました。
今回のシステム標準化の対象となるのは以下の17業務です。
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 児童手当
- 生活保護
- 健康管理
- 就学
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
今回選定された17業務は主に市区町村が担当しているもので、住民基本台帳などは特に優先度が高く設定されています。
まず国が標準化の仕様書を作成し、仕様書に準拠して開発されたベンダーサービスを標準準拠システムとして「Gov-Cloud」(ガバメントクラウド:政府共通のクラウドサービスの利用環境)に構築。
自治体はガバメントクラウドに構築された標準準拠システムを利用して、これら17業務を処理するという流れです。
地方自治体の課題とシステム標準化の必要性
現在の自治体システムは人的・財政的・システム的にすでに限界を迎えており、このことが今回の自治体DX推進計画の発布およびシステム標準化の背景にあると言えます。
人的限界
法令改正・所轄官庁からの通達などが積み重なり、熟練者でないと運用・管理が難しい業務も少なくありません。
結果、現場のシステム依存と人手不足が深刻化し、窓口の省力化に取り組まざるをえなくなっています。
財政的限界
毎年のように行われる制度改正に合わせ、自治体経費の多くが情報システムの改修に費やされています。
またデジタル化によって自治体サービスの水準は今後も高まることが予想されるため、更なる経費増大は避けられないと言えるでしょう。
システム的限界
度重なる制度改正で複雑化したシステムの扱いは、多くの現場職員やSEを悩ませています。
システムの運用は人の手によって行われるため複雑化にも限界があり、クラウド化に伴う17業務のシステム標準化・共通化は不可欠です。
情報システムの標準化における注意点とは
17業務のシステム標準化を行ううえで注意しなければならない点として、以下が挙げられます。
- 自治体DX推進計画の目標時期(2025年度末)に合わせたシステム移行
- 仕様書に基づいた全庁的な業務改革(BPR)への取組
自治体でシステム改修を行う際は、自治体が自ら計画を立てて進めるのが基本ですが、今回は標準化による効果を大きくするために足並みを揃えたシステム移行が必要となります。
また17業務の標準化に合わせた業務フローの見直しなども生じるため、単なるシステム移行と考えず、大規模な業務改革(BPR)として自治体DXを考えていく必要があるでしょう。
17業務の標準化によって得られる効果
自治体DXとして17業務のシステム標準化が進んでいくと、以下のような効果を期待できるようになります。
行政サービスの連携による業務効率化
標準化の仕様書に準拠したシステムを利用することで、各サービスのシステム連携を行えるようになり、自治体ごとの調整などが不要になるというメリットがあります。
また政府共通のクラウドサービス(ガバメントクラウド)の活用により、制度の改正やアップデートの対応が自動化され、都度改修を行うといった手間も解消されるでしょう。
システム開発・運用コストの削減
標準準拠システムが構築されることで、システム開発や運用コストを削減できる点もメリットの1つです。
各自治体がゼロベースでDXを考えていくとなると、自治体全体で足並みを揃えることが難しくなり、転出・転入の際などに利用者へ不利益を与える可能性が出てきます。
しかし17業務のシステム標準化が行われれば、個別にシステム開発を考える必要がなくなるため、導入にかかるコストを大幅に削減することができるでしょう。
17業務の標準化対応と自治体DXの効果まとめ
17業務のシステム標準化は、自治体DX推進計画における重点取組事項に指定されており、自治体DXの中でも優先度の高い取り組みです。
全庁的な業務改革が必要となる場合もあるため、移行時期になって混乱することがないよう、早い段階からスマート自治体の実現に向けた準備を進めていく必要があると言えるでしょう。