2025年度末を目途に、全国の自治体で標準化仕様に沿ったシステムへの移行を目指す“自治体情報システムの標準化・共通化”を進めることが政府から発表されました。
しかし、情報システム標準化の前提とされるデジタル化が進んでいない自治体も多く、2025年度末までの移行については、いまだ多くの課題が残されていると言えるでしょう。
そこでこの記事では、現在の自治体業務・システムが抱える課題と、課題解決に向けた業務改善のポイントを解説していきます。
現在の自治体業務・システムが抱える課題とは
まずは、現在の自治体業務やシステムが抱えている課題について詳しく見ていきましょう。
自治体間のシステムの違いで処理が煩雑化
現在は自治体間で運用システムが異なっている場合も多く、例えば転居手続きのように複数の自治体を跨ぐ手続きについては、自治体職員にとって負担の大きい作業となっています。
また度重なるシステム改修によって、システムそのものが複雑化しており、操作に慣れている職員でないと作業できないといった点も課題の1つと言えるでしょう。
システム開発・運用にかかるコスト
現在は各自治体がそれぞれベンダーと契約し、独自に情報システムの開発・運用を行っています。
そのため、開発・運用にかかるコストはもちろん、制度改正に伴うシステム改修を依頼する度に膨大な費用がかかっているのが現状です。
特に規模の小さい自治体においては、システム運用にかかるコストが大きいために、業務のデジタル化を進める予算が工面できないといった状況に陥っています。
人口減少による労働力不足
少子高齢化に伴う人口減少により、自治体でも慢性的な労働力不足の状態が続いています。
一方で、コロナ禍の影響などもあって業務量は減るどころか増加の一途をたどっており、1人1人の業務負担も増えているのが現状です。
このままの業務スタイルを継続すれば、最終的に職員の対応が間に合わなくなり、現在と同水準のサービスを提供することができないという状況になってしまうでしょう。
これらの課題を解消するためにもいち早くデジタル化を進め、少ない職員でも問題なく業務をこなせるように業務改革を行っていく必要があります。
自治体のシステム標準化による業務改善・効率化のポイント
続いて、自治体のシステム標準化による業務改善や効率化のポイントについて詳しく見ていきましょう。
ガバメントクラウドの活用
ガバメントクラウドとは、国の行政機関と自治体が共同で利用することのできるクラウドサービスです。
ガバメントクラウドを活用するメリットとしては、以下のようなポイントが挙げられます。
- 標準準拠システムを自由に導入できるため、これまで独自に行っていたシステム開発・運用が不要になる
- 運用システムが統一されることで、自治体間の手続きの簡略化やシステム運用のコスト削減などを実現できる
- 個人情報を一度提出してしまえば、今後何らかの手続きを行う際に自動で情報が入力されるようになる(ワンスオンリー原則)
- 全国の自治体で同水準の高いセキュリティ対策を実施できるため、小規模な自治体でも十分な安全性を確保できる など
このような理由から、自治体システムの標準化による業務改善や効率化を進めるうえで、ガバメントクラウドの活用は必要不可欠と言えるでしょう。
基幹業務システムの標準化要件に沿った運用
標準化の対象となる基幹業務システムについては、その標準化要件がすでに政府から公表されています。
実際にシステムを移行する段階まで何もしないのではなく、早い段階から標準化仕様に沿った運用を取り入れていくことで、業務改善や効率化にも繋がっていくでしょう。
システム化に合わせた適切な業務改革(BPR)が成功のポイント
業務改善を成功させるには、導入システムに合わせた適切な業務改革(BPR)が重要です。
BPRはBusiness Process Re-engineeringの略で、業務本来の目的に向かって組織や制度を抜本的に見直すことをいいます。
せっかくシステムを導入しても、システムに合わせた業務フローになっていなければ、業務改善の効果を正しく得ることはできません。
現在の業務プロセスをどう改善したいのか、そのためにはどのようなシステムが必要なのかをしっかりと検討し、導入後はシステムが正しく運用されるよう新しい業務フローを構築していくことが大切です。
まとめ
現在の自治体は、自治体間のシステムの違いによる処理の煩雑化や、システム開発委託にかかるコストなど、様々な問題を抱えています。
2025年度末までの情報システム標準化を達成するためにも、ガバメントクラウドの活用や標準化要件に沿った運用を意識し、早い段階から業務改善に向けた取り組みを実施していくことが大切です。